If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ

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ニューギニア防衛戦

突入

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1943年7月31日。南太平洋に灼熱の太陽が照りつける中
高倉義人中将率いる日本海軍機動艦隊は、パラオの深遠な入江に
その巨体を滑り込ませた。ニューギニア戦線の趨勢を決定づけるため
そして日本の未来を切り開くため、高倉はここで
最終的な布陣を敷くことを決断していた。艦隊は
わずかな停泊時間を利用して補給を受け
来るべき決戦に備えるべく、急ピッチで再編成を進めた。


高倉の胸中には、日本が直面する厳しい現実があった。
緒戦の勝利は過去のものとなり、米軍の圧倒的な物量と学習能力は
日本の国力では抗しがたいほどの脅威となっていた。
しかし、ここで引くことは日本の破滅を意味する。彼は
限られた戦力を最大限に活かすため
従来の艦隊決戦ドクトリンに囚われない、柔軟な発想で艦隊を再編した。

艦隊に随伴していた多数の駆逐艦は、一部が別任務に転じ
残った精鋭は以下の通りに絞られた。
これらは、機動艦隊の護衛と対潜警戒の要となる。

駆逐艦: 初月、涼月、若月、秋月、宵月、冬月、風雲、長波、巻波、玉波、清波、藤波
これらの駆逐艦は、どれも最新鋭の秋月型駆逐艦を筆頭とする精鋭ぞろいだ。
特に秋月型は、強力な対空兵装を持ち、航空機による攻撃から
主力艦を守る盾となることが期待された。高倉は、来るべき航空決戦を予期し
艦隊全体の防空能力の向上を最優先課題としていた。

そして、艦隊の中核となる航空戦力は、大幅に増強された。
既に翔鶴と瑞鶴という二隻の精鋭正規空母を擁していたが
これに加えて、新たに軽空母「隼鷹」「飛鷹」「龍鳳」が艦隊に加わった。

「航空機の消耗は激しい。だが、敵に決定打を与えるには、数と質の両方が必要だ」

高倉は、参謀たちにそう語った。正規空母に劣らない搭載能力を持つ
隼鷹と飛鷹、そして最新鋭の龍鳳の加増は、艦隊の航空攻撃力を飛躍的に向上させる。
これらの空母群は、数百機に及ぶ艦載機を搭載し
ビスマルク海での航空優勢の確保と
敵艦隊への決定的な打撃を狙う高倉の強い意志を示していた。

補給を終え、新たな布陣を整えた機動艦隊は
間髪入れずにパラオを出港した。彼らの目的地は、日本の命運を握る要衝
ビスマルク海方面だ。静かに、しかし確かな決意を秘めて
日本の虎の子の艦隊は、広大な太平洋の闇へと吸い込まれていった。


既に、ウェワクの陸軍航空隊、百式司令偵察機による
決死の偵察飛行によって、ビスマルク海には連合軍の
巨大な艦隊が存在することが判明していた。偵察機からの報告は
クェゼリンやエニウェトクを陥落させた、あの圧倒的な艦隊が
今まさに日本の勢力圏に迫っていることを示唆していた。
その艦隊の正確な規模は不明ながら、日本の南方資源地帯への脅威は明白だ。
高倉の艦隊は、まさにその敵艦隊を捕捉
撃滅するために、危険な海域へと突入していったのである。

高倉にとって、このビスマルク海での決戦は
避けられない運命であり、同時に日本の未来を切り開く唯一の機会でもあった。
彼は、かつて山本五十六が夢見た、敵艦隊の壊滅による戦局の打開を
この手で成し遂げようとしていた。

旗艦「大和」の艦橋では、緊迫した空気が張り詰めていた。
艦内放送が響き渡り、全乗員に第一次戦闘配備が発令された。
それは、いつ敵と遭遇してもおかしくないという、最高度の警戒態勢だ。

甲板上では、艦載機の最終点検が急ピッチで行われていた。
零戦のプロペラがゆっくりと回り、彗星や天山といった新型機の翼には
日本の命運を乗せた爆弾や魚雷が吊るされている。航空隊員たちは
機体を丹念にチェックし、わずかな不具合も見逃すまいと
真剣な表情で作業にあたっていた。彼らの多くは
先のウェワク航空隊の強襲における犠牲を耳にしており
自らがそれに続くかもしれないという覚悟を胸に秘めていた。

対空砲の砲員たちは、それぞれの持ち場につき、砲身を磨き上げていた。
彼らの目は、空を睨み、いつ襲い来るかもしれない敵機影を警戒する。
高倉は、航空戦力の重要性を誰よりも理解しており
艦隊の防空能力の強化に余念がなかった。

司令塔では、レーダー員が刻々と変化する海面を凝視し
ソナー員は静かに潜水艦の音を探っていた。敵潜水艦による奇襲攻撃は
過去の戦訓から最も警戒すべき脅威の一つだ。士官たちは、海図を広げ
敵艦隊の予想進路と自艦隊の航路を慎重に検討していた。
彼らの脳裏には、数で劣る日本が、いかにして勝利を掴むかの戦略が練られていた。


高倉は、このビスマルク海での決戦を
単なる正面衝突として捉えてはいなかった。
彼の戦略は、限られた日本の資源と兵力を最大限に活かし
敵の弱点を突くことにあった。彼は、米軍が強固な補給網と
圧倒的な航空戦力を背景にしていることを理解していた。

「敵は必ず、航空母艦を中核とした機動部隊を投入してくるだろう。
制空権の奪取が、この戦いの鍵となる」

高倉は、航空隊司令官との打ち合わせでそう強調した。
日本の正規空母と軽空母を合わせた航空戦力は
米軍のそれを数的にも質的にも上回ることは難しいだろう。
しかし、彼は奇襲と集中、そして熟練したパイロットの技量でこれを補うことを考えていた。

彼はまた、夜戦の可能性も視野に入れていた。日本の夜間射撃能力は
長年の訓練によって培われたものであり、米軍を凌駕する部分がある。
もし、航空攻撃で敵艦隊に損害を与え、夜間に突入することができれば
戦艦「大和」を筆頭とする重砲艦が、その絶大な火力を存分に発揮できるだろう。

高倉の表情は静かだったが、その瞳の奥には
燃えるような闘志が宿っていた。彼は、日本の未来が
このビスマルクの海での戦いにかかっていることを誰よりも理解していた。
彼の革新的な戦略思想と、日本の置かれた窮状を鑑み
今、この局面でニューギニアを死守することこそが
日本の継戦能力を維持する上で最も重要であると確信していた。


「高倉長官、間もなく、戦闘海域に突入します!」

当直士官の声が、艦橋に響いた。夜の闇は、まだ完全に明けていなかった。
水平線の向こうには、敵艦隊の影が
まるで嵐の前の不吉な予兆のように横たわっているだろう。

高倉は、静かに頷くと、遥か東の空を見つめた。
そこから昇る太陽は、彼らにとって勝利の光となるのか
あるいは絶望の終わりを告げるのか。

日本の将兵たちは、それぞれの持ち場で
己の命と誇りを賭けて戦う覚悟を決めていた。
大和を旗艦とする機動艦隊は、夜の闇を切り裂いてビスマルクの海へと深く進んでいく。
水平線の向こうには、敵艦隊との激しい死闘が待ち受けているだろう。
高倉義人、その革新的な戦略家が、今、戦場の最前線で、日本の未来を切り拓こうとしていた。

このビスマルクの海が、日米双方にとっての運命の分かれ目となる。
そして、その激しい戦いは、誰にも予測できない結末へと向かおうとしていた。
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