If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ

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ニューギニア防衛戦

空母二隻撃破

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日没が迫るビスマルク海。日本の第二次攻撃隊は
米艦隊の空母群へと猛烈な突入を開始した。
彼らの前には、米軍の空母部隊が立ちはだかる。
日本の命運をかけた、まさに決死の黄昏の猛攻が始まろうとしていた。


米海軍航空母艦「エセックス」の艦橋は、午後4時の時点で
まだ比較的静かだった。日中の戦闘で迎撃機を発艦させた後
艦載機は帰投し、再び格納庫に収められ、第二次攻撃に備えていた。
艦長ウィリアム・F・ハルゼー・ジュニア大佐は
日本の航空隊が黄昏時に再度攻撃を仕掛けてくる可能性を考慮し
警戒態勢を維持させていた。しかし、その時、予想を上回る規模の敵襲が、突然艦隊を襲った。

「敵機100機以上、突っ込んできます!」

見張り員の切迫した叫びが、艦橋に響き渡った。
その声は、これまで保たれてきたわずかな静けさを一瞬にして打ち破った。
ハルゼー大佐は、顔色を変えた。

「対空レーダーはどうしていた!なぜこれほどの編隊を探知できなかったのだ!」

ハルゼー大佐の怒声が艦橋に響く。
エセックスは最新鋭のレーダーを搭載しており、広範囲の敵を探知できるはずだった。

「申し訳ありません、艦長!熱帯の湿気による故障で
 一部方位が索敵できていませんでした!奴ら、その隙間を縫ってやってきました!」

レーダー担当士官の報告は、絶望的なものだった。
ビスマルク海の高温多湿な気候は、精密な電子機器に予期せぬ障害をもたらすことがあった。
日本軍は、そのわずかなレーダーの「死角」を
見抜いたわけでもなくたまたまそこを突いてきたのだ。
しかし米側からすれば日本の指揮官が、気象条件までも
緻密に計算して攻撃してきたのだとすれば
その恐るべき洞察力と戦術眼に戦慄せざるを得なかった。

「対空戦闘!全砲門、撃て!撃て!奴らを一機たりとも通すな!」

ハルゼー大佐の命令が下ると
エセックスの5インチ砲や多数の機関砲が、一斉に火を吹いた。
夜闇に溶け込み始めた夕方の空に、曳光弾の弾幕が幾重にも散らばる。
轟音と閃光が艦全体を包み込み、砲員たちは必死の形相で砲弾を装填し
機銃の引き金を握りしめた。

「落ちろ!落ちろ!地獄へ落ちろ!」

対空砲員たちは、鬼気迫る形相で叫びながら
次々と弾倉を叩き込み、機銃を乱射する。
彼らの目の前には、決死の覚悟で突っ込んでくる日本軍機が
弾幕を縫うように、あるいは真っ向から突っ切るかのように接近してくる。
命中弾はほとんどなく、日本の攻撃隊は、掠りすらしないかのように猛進してきた。

「畜生!!!」

ハルゼー大佐は、歯を食いしばり、悔しげに叫んだ。
彼は、日本のパイロットたちの並々ならぬ気迫と
この攻撃がまさに捨て身であることを痛感していた。
これまでの戦闘で、日本軍がこれほど大規模かつ
精密な黄昏時の攻撃を仕掛けてきたことはなかった。
彼らは、間違いなくこのビスマルク海での一戦に、すべてを賭けてきている。


日本の第二次攻撃隊は
敵の猛烈な対空砲火をものともせず、各空母へと接近していた。
九九式艦上爆撃機隊が上空から急降下態勢に入る一方
九七式艦上攻撃機からなる雷撃隊は、超低空で海面を這うように突進した。

「第一小隊目標敵一番艦!第二小隊目標二番艦!続け!」

翔鶴飛行隊長・村田重治少佐の声が、編隊全体に響き渡る。
雷撃隊は編隊を二つに分け、まるで巨大な群れが獲物を狙うかのように
海面近くまで降りていく。スルスルと海面を滑るかのように
彼らは敵空母へと近づいていく。波しぶきが機体に当たるほどの超低空飛行は
敵の対空砲火の照準を狂わせ、レーダーの探知を困難にするための、熟練した技術だった。

「射点まで1.2キロ……1キロ……」

偵察員が、冷静な声で距離を告げる。魚雷投下の最終段階に入り
パイロットたちの集中力は極限に達していた。
この張り詰めた緊張感の中、村田機の横に、一機の九七式艦上攻撃機が並び
あっという間に村田機を追い抜いていった。

開いたコックピットからはみ出る紅色のマフラー。
その機体は、先ほどまで敵艦隊を触接し
この第二次攻撃隊を誘導してきた笹井中尉機だった。
魚雷を抱える村田機とは違い、燃料も少なく
軽くなった笹井機は、みるみるうちに遠ざかっていった。

その飛行軌道は、村田率いる第一小隊が進むべき
最も安全かつ効果的な魚雷投射地点へとまっすぐ向かっていた。
笹井中尉は、自らの命を顧みず
最後の最後まで攻撃隊を正しいコースへ導こうとしていたのだ。

「笹井……っ!最期の最期に嚮導かよ……」

村田は、無線機を握りしめ、僅かに涙ぐんだ。
笹井中尉は、自身の命と引き換えに
最も安全で効果的な突入経路を示そうとしていたのだ。
村田少佐と笹井中尉は、元々霞ヶ浦海軍航空隊での教官と教え子の関係だった。
村田は教官として、笹井は練習生として、共に雷撃訓練に打ち込んだ。
練習生時代から、笹井の雷撃の命中精度は目を見張るものがあり
当時の彼の同期の中では常にトップだった。
その卓越した操縦技術と、冷静な判断力は、村田も高く評価していた。
笹井は、最期にその卓越した技量と、仲間を思う心を、身をもって示そうとしたのだろうか。

笹井機は、速度390kmという高速で
敵空母「エセックス」の左舷エレベーターに向けて一直線に突っ込んだ。
それは、単なる体当たりではなかった。正確な角度と速度で
艦の最も脆弱な部分を狙った、まさに捨て身の攻撃だった。

ドォォォォォン!

凄まじい轟音と共に、笹井機はエセックスの飛行甲板に激突した。
機体は弾けるように砕け散り、飛行甲板は大きくえぐられ
笹井機の破片が周囲に飛び散る。その直後、機体に積まれていた燃料が引火し
格納庫内で爆発が連鎖的に発生した。エセックスの格納庫には、
整備中の航空機や弾薬が多数積まれており、それらが次々と誘爆を起こしたのだ。
たまらず甲板からはもくもくと黒煙が上がり
エセックスの巨大な飛行甲板に致命的な傷を負わせた。
笹井中尉たちの壮絶な死は
日本攻撃隊に、さらなる闘志を燃え上がらせた。


この笹井中尉の捨て身の攻撃を、村田少佐は見逃さなかった。
彼は、その犠牲を無駄にはしないと心に誓った。

「笹井!お前の分まで戦う!全機、魚雷投下!」

村田は叫ぶと、魚雷を投下する最終指示を出した。
編隊から放たれた魚雷は、白い航跡を残し、エセックスの左舷側へと突き進んだ。
投射した15本のうち、8本が次々と突き刺さり、水柱と轟音を響かせた。
エセックスの巨体は大きく傾き、その航行速度は著しく低下した。
水面には大量の重油が漏れ出し、艦が危機的な状況にあることを示していた。

それとほぼ同時だった。視界の端から、白い機体と黒い点が
まるで雨のように落ちていくのが見えた。九九式艦上爆撃機の急降下爆撃隊だ。
彼らは、エセックスとエンタープライズの甲板へと、250kg爆弾を投下した。

投下された爆弾は、次々と甲板や構造物に突き刺さり、爆炎を上げていく。
エセックスの飛行甲板は、笹井機の突入による損傷と相まって
さらに大きな穴が開き、艦橋の窓ガラスが爆風で砕け散った。
爆弾の命中により、内部でさらなる誘爆が発生し
エセックスは完全に行動不能に陥った。エンタープライズもまた
爆弾9発と魚雷4本を被弾し、その巨体は衝撃に震え
あからさまに低速になったことが確認された。飛行甲板の数カ所から煙が上がり
発着艦作業は不可能になっていた。

「命中弾確認!さっさと帰るぞ!」

攻撃を終えた第二次攻撃隊は、日没が迫る空へと再び舞い上がった。
彼らは、零式艦上戦闘機6機、九九式艦上爆撃機9機
九七式艦上攻撃機7機を失ったものの、その犠牲と引き換えに大きな戦果を上げたのだ。

敵一番艦(エセックス)に対し、爆弾8発、魚雷8本を命中。
    エセックスは航行不能に陥り、沈没は時間の問題と思われた。
敵二番艦(エンタープライズ)に対して、爆弾9発、魚雷4本を命中。
    エンタープライズもあからさまに低速になったことが確認され、戦闘能力は大きく低下した。
日本の第二次攻撃隊は、その被害と引き換えに
米太平洋艦隊の中核を成す二隻の空母に壊滅的な打撃を与えた。
特にエセックスの航行不能は、米軍にとって計り知れない損失となるだろう。
笹井中尉の崇高な自己犠牲と、村田少佐率いる攻撃隊の決死の猛攻は
黄昏のビスマルク海に、日本の勝利への希望の光を灯した。

しかし、夜闇が刻一刻と迫る中、被弾した攻撃隊の帰還は
さらなる困難を伴うだろう。多くの機体が損傷し、燃料も限界に近い。
そして、米軍の戦艦を含む打撃部隊は、確実に日本の艦隊へと接近してくる。
夜戦が、すぐそこまで迫っていた。この壮絶なビスマルク海での戦いは
まだ終わっていなかった。日本のパイロットたちは
満身創痍の機体を操りながら、遠く輝く母艦の灯を目指し、帰途についた。
彼らの胸には、戦果への歓喜と、散っていった仲間への哀悼
そして、次なる戦いへの覚悟が入り混じっていた。
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