If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ

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ニューギニア防衛戦

夜叉比叡

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戦艦「金剛」の轟音と炎上は
ビスマルク海の夜闇に強烈なインパクトを残した。
その光景は、日本艦隊の将兵の胸に深い悲しみと同時に
激しい怒りを刻み込んだ。
しかし、悲しみに暮れる暇はない。金剛の犠牲を無駄にしないため
残された第三戦隊の戦艦「比叡」「榛名」「霧島」は、敵戦艦部隊へとさらなる接近を試みた。

「金剛の仇だ!突っ込め!」

艦橋に響く、各艦長の咆哮。艦齢30年を超える金剛型戦艦は
その高速性を示すかのように、約30ノットの速度を維持し
米艦隊へと肉薄する。彼らの目標は、わずか4キロメートル先。
この距離は、戦艦同士の砲撃戦においては「至近距離」と呼べるものだ。

米艦隊の主砲が、再び火を噴いた。巨大な砲弾が次々と
第三戦隊の艦列へと降り注ぐ。金剛型戦艦は、その都度
入念な回避運動を行い、敵弾を紙一重でかわしていく。
艦体が大きく傾き、波飛沫が艦橋まで吹き上がる。しかし
彼らの主砲は、その苛烈な運動中にも、確実に敵を捉え続けていた。

各艦の主砲旋回用水圧式ポンプが、唸るような音を立てて圧力を上げる。
巨大な砲塔が、油圧の力でゆっくりと、しかし確実に旋回していく。
狙いを定めた主砲が、閃光を放ち、轟音と共に火を噴いた。
日本の35.6cm砲弾が、夜闇を切り裂き、米戦艦へと向かっていく。


その3隻の中で、一際異彩を放っていたのは
戦艦「比叡」だった。比叡は大和型戦艦のテストベッドとして
用いられた艦であり、他の金剛型戦艦とは各所が異なる改修が施されていた。
そのうちの一つが、主砲旋回用ターボポンプの導入だった。

当時の戦艦の主砲旋回用ポンプは、通常、水圧式が用いられていた。
一般的な金剛型戦艦では、一基の水圧式ポンプで主砲塔二基を動かすのがやっとで
高速での回避運動を行いながらの精密な主砲旋回は困難を極めた。
しかし、比叡に搭載されたターボポンプは
従来のポンプを凌駕する大出力を誇り
一基で三基の主砲塔を動かせるほどの性能を持っていた。

このターボポンプの恩恵は絶大だった。激しい回避運動を行いながらでも
比叡の主砲はまるで吸い付くように敵艦を捉え、その旋回能力は群を抜いていた。
艦体が左右に揺れ、大きく傾く中でも
比叡の艦橋からは冷静な射撃命令が下され、主砲は連続して火を噴き続けた。

そして、その比叡が放った砲弾が、ついに米艦隊に致命的な一撃を与えた。
夜闇を切り裂いた35.6cm砲弾の数発が
狙い澄まされたかのように、戦艦「ワシントン」を襲ったのだ。


ドォォォォン!ドォォォォン!

轟音と共に、閃光が走った。比叡の放った砲弾は、ワシントンの艦体を揺るがす。

「被弾!艦橋部に命中!レーダー破壊!測距不能!」

ワシントン艦橋に、絶叫が響き渡った。
旗艦である戦艦ワシントンは
米艦隊の夜間射撃管制の要であり、その精密なレーダーシステムは
この夜戦における米軍の最大の切り札だった。しかし、比叡の砲弾は
その要たる艦橋部に直撃し、レーダーアンテナを破壊したのだ。
これにより、ワシントンのレーダーによる測距は不可能となった。
米軍の夜間砲戦の優位性は、この一瞬にして大きく損なわれた。

さらに、もう一発の砲弾が、ワシントンの三番主砲基部に命中した。

「三番砲塔、被弾!バーベッド損傷!射撃不能!」

砲塔の基部を保護するバーベッドが歪んだことで
砲塔の旋回機構が損傷し、三番砲塔は完全に射撃不能に陥った。
ワシントンは、その強大な火力を一部失い、さらに精密な射撃能力をも奪われたのだ。

比叡の一撃は、夜戦の均衡を一気に崩した。レーダーを破壊され
主砲の一部を失ったワシントンは、戦列の先頭からその牙を鈍らせることになった。
米艦隊は、この予期せぬ反撃に動揺を隠せないでいた。

夜闇の中で、日本の金剛型戦艦は、金剛の犠牲を乗り越え
その猛攻を続けていた。比叡の放った渾身の一撃は、このビスマルク海での
夜戦の行方を大きく左右するだろう。日本艦隊は、航空戦に続くこの夜戦で
ついに米艦隊の主力に致命的な打撃を与え始めた。

しかし、米艦隊もまた、数の優位と、練度の高い駆逐艦部隊を擁している。
彼らは、このまま日本の猛攻を許すはずがない。
この夜の戦いは、まだ始まったばかりだ。次なる展開は
米艦隊の反撃、あるいは日本艦隊のさらなる肉薄となるのか。
ビスマルク海の夜空は、砲声と爆炎に包まれたまま、静かに次の展開を待っていた。
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