異聞第二次世界大戦     大東亜の華と散れ

みにみ

文字の大きさ
11 / 15
戦火の拡大と新世代の戦争

電子戦と情報戦

しおりを挟む
1947年前半、世界中で展開される「新時代の戦争」は
単なる兵器の物理的な破壊力だけでなく、目に見えない領域、
すなわち電子戦と情報戦の重要性を浮き彫りにしていた。
枢軸国、特にドイツと日本がその高度な電子技術を駆使して
電撃的な奇襲を成功させたことで、連合国は
この新たな戦場の支配がいかに重要であるかを痛感させられた。


真珠湾とフランスでの壊滅的な奇襲を受けて
連合国、特にアメリカとイギリスは、枢軸国の高度な電子技術に対抗するため
血眼になってより小型で高性能な電子妨害装置
(ECM:Electronic Countermeasures)の開発を急いだ。
これまでの戦争におけるジャミング技術は、
特定の周波数帯を広範囲に妨害するプリミティブなものが多かったが、
枢軸国が用いたのは、周波数ホッピングや指向性ジャミングといった、
より洗練された技術だった。

イギリスのポーツマスにある秘密研究所では
若いエンジニアたちが昼夜を問わず、
ドイツ軍のジェット機や誘導兵器が発する電波を解析し、
その弱点を突き止めるべく奮闘していた。彼らは、
ドイツのレーダー波や通信波を分析し、
それに合わせて最適な妨害電波を発する装置の開発を進めていた。

「我々は、敵のレーダーに幻影を映し出し、通信を麻痺させなければならない。
 小型化は絶対条件だ。戦闘機に搭載できるレベルでなければ意味がない。」
プロジェクトリーダーの老練な物理学者が、若手研究員に檄を飛ばした。

開発された新型ECMは、従来の大型なものと異なり
航空機、特に戦闘機に搭載可能なサイズにまで小型化されていた。
これらのECMは、敵のレーダーが使用する周波数帯を瞬時に特定し
その周波数に合わせたノイズ信号や、偽の目標信号を発生させることで
敵のレーダー画面を混乱させた。これにより
ドイツ軍のレーダー連動型対空砲や、ジェット機の射撃管制システムは
目標を正確に捕捉することが困難になった。

1947年2月、イギリス空軍は、この新型ECMを搭載した
改良型ミーティアF.4をドイツ軍の占領地であるフランス上空に派遣し
組織的な妨害作戦を開始した。

「デルタ隊、ECM作動開始。敵レーダーに混乱を与えろ!」
ミーティアF.4の編隊長が指示を出すと、各機のECMが稼働し始めた。
ドイツ軍の地上レーダー基地では、それまで鮮明だったレーダー画面が
突如として砂嵐のようなノイズにまみれ、無数の偽の反応が点滅し始めた。
「レーダーが…ジャミングされている!敵機の実像が掴めん!」
ドイツ軍のレーダー手たちが、ヘッドセットを外し、困惑の表情で叫んだ。

これにより、ドイツ空軍の「ブリッツ」爆撃機がイギリス本土へ向かう際
地上からの誘導が困難になり、迎撃するイギリス空軍機は
ドイツ機を捕捉するチャンスをわずかながら増やすことができた。
また、ドイツ軍の地上部隊間の無線通信も、一時的にではあるが麻痺し
連携に遅れが生じる場面も見られた。


しかし、ドイツ軍もまた、電子戦の重要性を熟知しており
連合国のECMに対抗するための新たな技術を模索していた。
彼らは、連合国のレーダー波を逆探知し、その発信源を攻撃する、
初期の対レーダーミサイルの概念に繋がる技術の開発に着手していた。
これは、レーダーが発する電波を追跡し
その電波源に直接突入して破壊するという画期的な兵器であり
後の「ワイルド・ウィーゼル」作戦の先駆けとなるものだった。

「連合国は、我々のレーダーを妨害することで、
 優位を得ようとしている。ならば、そのレーダーそのものを破壊すればよい。」
ドイツ空軍の技術開発責任者、ヘルムート・シュミット博士は
自信に満ちた表情で語った。彼の研究チームは、既存の誘導弾に
敵のレーダー波を追跡するシーカーを搭載する実験を進めていた。

同時に、ドイツ軍は、
フォッケウルフFw 190D-9「シュールヴント」(ハリケーンの意)のような
偵察・電子戦機を開発していた。この機体は
従来の戦闘機Fw 190D-9をベースに、高性能な電子偵察装置と
より強力な妨害装置を搭載していた。その任務は
連合国のレーダー網や通信網を精密に偵察し、その弱点を特定すること
そして自国の攻撃隊の進路を確保するために、敵の電子システムを妨害することだった。

「シュールヴント」は、連合国の防空網の隙間を縫って飛行し
その電子の目を光らせた。彼らは、イギリスの改良型
チェーンホーム・レーダー網の周波数や、アメリカから送られてくる護衛艦の
レーダー波を記録し、その情報をドイツの技術者へと送り返した。
これにより、ドイツ軍は、連合国の電子戦能力の向上に対応し
自らの電子戦技術をさらに磨き上げていくことができた。


戦火が拡大する中で、各国は、敵の技術や計画に関する情報を得るため
水面下での情報戦を活発化させていた。

イギリスのブレッチリー・パークでは、連合国の情報機関が
ドイツ軍の「エニグマ」暗号の解読に、これまで以上に力を入れていた。
ドイツ軍が新たな暗号システムを導入したことで、
解読は一時的に困難を極めたが、アラン・チューリングらの天才的な数学者たちは、
改良型コンピュータを駆使し、複雑な暗号パターンを解析していった。
彼らの努力により、ドイツ軍の作戦計画や、新型兵器に関する情報が、
断片的ながらも連合国にもたらされ始めた。

「ドイツ軍の新型Uボートに関する情報が入った!
 ワルター機関…水中高速航行が可能だと?!」
暗号解読チームのリーダーが、驚愕の声を上げた。
この情報は、大西洋での対潜戦の戦略を大きく見直すきっかけとなった。

一方、ドイツの諜報機関、アプヴェーアも
連合国に対するスパイ活動を活発化させていた。
彼らは、連合国の工業地帯や兵器開発施設にスパイを送り込み
新型兵器の設計図や、生産能力に関する情報を入手しようと試みた。
ある夜、イギリスの航空機工場に潜入したドイツのスパイが
改良型ミーティアF.4の生産計画に関する重要書類を入手しようとしたが
イギリスの防諜部隊によって寸前で逮捕された。

また、日本とドイツの間でも、技術情報の交換が活発に行われていた。
日本の「橘花改」や「晴嵐」の技術情報はドイツに
ドイツのジェットエンジン技術や射撃管制コンピュータの技術は日本に
それぞれ潜水艦や長距離輸送機によって秘密裏に運ばれた。
これにより、枢軸国は互いの技術力を補完し合い
連合国を上回るペースで新兵器の開発を進めることができた。

情報戦は、まさに「見えない戦争」だった。
暗号解読、スパイ活動、そして電子妨害の応酬は
戦場の物理的な衝突と同様に、あるいはそれ以上に
戦局の行方を左右する重要な要素となっていた。
各国は、自国の情報機関に惜しみなく資源を投入し
敵の秘密を暴き、自国の秘密を守るために、熾烈な頭脳戦を繰り広げていたのである。

この激化する電子戦と情報戦は、新時代の戦争が
単なる兵器の性能競争にとどまらず、技術と知性の
限りない探求によってその様相を変えていくことを示していた
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-

半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。 ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。 また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。 その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。 この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。 またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。 この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず… 大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。 【重要】 不定期更新。超絶不定期更新です。

土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家
歴史・時代
 榎本艦隊北上せず。  それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。  生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。  また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。  そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。  土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。  そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。 (「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です) 

幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。

克全
歴史・時代
 西欧列強に不平等条約を強要され、内乱を誘発させられ、多くの富を収奪されたのが悔しい。  幕末の仮想戦記も考えましたが、徳川家基が健在で、田沼親子が権力を維持していれば、もっと余裕を持って、開国準備ができたと思う。  北海道・樺太・千島も日本の領地のままだっただろうし、多くの金銀が国外に流出することもなかったと思う。  清国と手を組むことも出来たかもしれないし、清国がロシアに強奪された、シベリアと沿海州を日本が手に入れる事が出来たかもしれない。  色々真剣に検討して、仮想の日本史を書いてみたい。 一橋治済の陰謀で毒を盛られた徳川家基であったが、奇跡的に一命をとりとめた。だが家基も父親の十代将軍:徳川家治も誰が毒を盛ったのかは分からなかった。家基は田沼意次を疑い、家治は疑心暗鬼に陥り田沼意次以外の家臣が信じられなくなった。そして歴史は大きく動くことになる。 印旛沼開拓は成功するのか? 蝦夷開拓は成功するのか? オロシャとは戦争になるのか? 蝦夷・千島・樺太の領有は徳川家になるのか? それともオロシャになるのか? 西洋帆船は導入されるのか? 幕府は開国に踏み切れるのか? アイヌとの関係はどうなるのか? 幕府を裏切り異国と手を結ぶ藩は現れるのか?

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

改大和型戦艦一番艦「若狭」抜錨す

みにみ
歴史・時代
史実の第二次世界大戦が起きず、各国は技術力を誇示するための 「第二次海軍休日」崩壊後の無制限建艦競争に突入した 航空機技術も発達したが、それ以上に電子射撃装置が劇的に進化。 航空攻撃を無力化する防御陣形が確立されたことで、海戦の決定打は再び「巨大な砲」へと回帰した。 そんな中⑤計画で建造された改大和型戦艦「若狭」 彼女が歩む太平洋の航跡は

【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記

糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。 それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。 かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。 ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。 ※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。

転生 上杉謙信の弟 兄に殺されたくないので全力を尽くします!

克全
ファンタジー
上杉謙信の弟に転生したウェブ仮想戦記作家は、四兄の上杉謙信や長兄の長尾晴景に殺されないように動く。特に黒滝城主の黒田秀忠の叛乱によって次兄や三兄と一緒に殺されないように知恵を絞る。一切の自重をせすに前世の知識を使って農業改革に産業改革、軍事改革を行って日本を統一にまい進する。

処理中です...