異聞第二次世界大戦     大東亜の華と散れ

みにみ

文字の大きさ
14 / 15
枢軸の限界

太平洋の反攻

しおりを挟む
1947年後半、ヨーロッパ戦線でイタリアが脱落し
ドイツが消耗戦に陥る中、太平洋ではアメリカ軍が反攻の狼煙を上げていた。
真珠湾の屈辱から立ち直ったアメリカは
その圧倒的な生産能力と物量をもって、日本が「絶対国防圏」と称する
広大な防衛ラインを突破すべく、猛攻を開始した。
これは、未来の戦争の様相を決定づける、過酷な消耗戦の始まりだった。


アメリカ軍の戦略は明確だった。
日本の絶対国防圏の中核をなすマリアナ諸島とフィリピンを攻略し
日本本土への航空基地を確保すること。その第一歩は
1947年秋に開始されたマリアナ諸島侵攻だった。
グアム、サイパン、テニアンといった島々が、アメリカ軍の圧倒的な
上陸部隊と艦砲射撃、そして航空機による絨毯爆撃に晒された。

この戦いにおいて、アメリカ空軍は
初の国産ジェット戦闘機F-80シューティングスターを大規模に実戦投入した。
ヨーロッパでのジェット機同士の戦闘の教訓を受け
アメリカはF-80の生産を急ピッチで進めていたのだ。
マリアナ上空では、F-80が、日本のジェット戦闘機
キ-201「火龍」や、ロケット迎撃機「秋水」といった新鋭機と
初の本格的なジェット戦闘を繰り広げた。

空は、金属音が響き渡り、火花が散るジェット機同士の激しい空中戦の舞台となった。
「敵機、ジェット機だ!F-80、迎撃!」
日本の「火龍」のパイロットが叫びながら、アメリカのF-80に肉薄する。
彼らは、ヨーロッパ戦線から得られた情報をもとに
ジェット機特有の高速戦闘戦術を駆使した
一撃離脱、あるいは高速旋回で、敵の背後を取ろうと試みる。

しかし、アメリカのF-80もまた、日本のジェット機に
引けを取らない性能を持っていた。その速度と上昇力は「火龍」に匹敵し
旋回性能ではむしろ優位に立つ場面もあった。
「くそっ、しぶといぞ!」
F-80のパイロットが、日本の「火龍」を追い詰める。
彼らは、これまでレシプロ機で培った経験と、ジェット機の新しい操縦感覚を融合させ
果敢に日本のジェット機に挑んだ。

しかし、日本は、アメリカの圧倒的な航空機生産能力と物量の前に
徐々に劣勢となっていった。いくら高性能な「火龍」や「秋水」を投入しても
アメリカはそれを上回る数のF-80や、F8Fベアキャット
F4Uコルセアといったレシプロ戦闘機を投入してきた。
さらに、日本は、ドイツと同様に航空燃料の枯渇という深刻な問題に直面していた。
南方の占領地からの資源輸送は、アメリカの潜水艦と航空機の攻撃により寸断され
石油の供給が滞り始めていたのだ。

「燃料がなければ、機体があっても飛ばせない…」
日本の航空基地では、多くのジェット機が、燃料不足のために
地上に係留されたままだった。これにより、日本の制空権は徐々に失われ
アメリカ軍機は、上陸部隊への支援や、日本軍陣地への爆撃を
より容易に行えるようになっていった。


マリアナの攻略後、アメリカ軍は次なる目標としてフィリピンに上陸した。
ここでの地上戦は、太平洋戦争における最も激しい戦いの一つとなった。
日本軍は、ドイツからの技術供与によって足回りなどが強化された四式中戦車改や
105mm高初速戦車砲を搭載した五式砲戦車ホリ
そして76mm戦車砲を搭載した五式中戦車チリを島嶼部に展開しており
これらの最新鋭戦車でアメリカ軍の侵攻を迎え撃った。

フィリピンの密林と起伏の多い地形は、日本戦車にとって有利な戦場となった。
彼らは、巧みに地形を利用して待ち伏せ攻撃を仕掛け
上陸してきたアメリカ軍のM4シャーマン中戦車を容易く撃破していった。
「三の台の右 戦車!」

「弾種徹甲焼夷!」

「2班集中 撃て」

初速900m/sで放たれた105mm砲弾は進撃してくるM4の正面を捉え
容易く 車体正面50mmの装甲板を貫通して弾薬庫誘爆

「命中 撃破確認 次目標三の台中央 続けて撃て」

またもう一台撃破される
統制射撃をとる日本戦車に上陸したばかりのアメリカ戦車はなすすべもない

「やられた!シャーマンが、一撃で!」
アメリカ兵が、炎上するシャーマンの残骸を見て叫んだ。
彼らは、日本の戦車の威力を過小評価していたのだ。

特に、五式砲戦車ホリは、その105mm高初速砲の絶大な威力で
アメリカ軍を震撼させた。その砲弾は、アメリカ軍の主力戦車である
M4シャーマンの正面装甲はおろか
新型戦車であるM26パーシング重戦車の正面装甲も容易く叩き割り
貫通していった。
「パーシングが…貫通されただと?!」
アメリカ軍の戦車兵が、信じられないという表情で無線に報告した。
ホリの登場は、アメリカ軍の戦車ドクトリンに大きな衝撃を与え
彼らは新たな対戦車兵器の開発を急ぐことを余儀なくされた。

日本戦車は、その圧倒的な火力で、アメリカ軍の侵攻を大いに遅らせた。
しかし、アメリカ軍は、その圧倒的な物量で優位に立っていた。
多少の損害をもろともせずに、次から次へと戦車と歩兵を投入してきた。
「いくら撃破しても、奴らは減らない…!」
日本の戦車兵が、絶望的な声で叫んだ。

数で勝るアメリカ軍は、個々の日本戦車の性能の優位を、数の力で覆そうとした。
彼らは、日本の戦車を包囲し、側面や背後から攻撃を集中させた。
正面装甲こそ強固だった日本の戦車も、側面や後方からの多数の命中弾には耐えられなかった。

そして、悲劇的な現象が日本の戦車兵を襲った。
貫通しないはずの砲弾が、連続して命中することで
戦車の内側の装甲が剥離する「ホプキンソン効果」である。
これは、砲弾の衝撃波が装甲を透過し、内部で破片を発生させる現象で
たとえ装甲を貫通しなくても、内部の乗員や機器に致命的な損傷を与えた。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!
M4シャーマンの75mm砲弾が、五式中戦車の側面装甲に連続して命中した。
外側からは貫通していないように見えても、内部では装甲が剥離し
破片が飛び散り、乗員は次々と倒れていった。
「ぐあぁぁぁ!」
日本の戦車兵の悲鳴が、車内に響き渡る。
次々と、日本の戦車が沈黙していった。


マリアナ諸島を攻略したアメリカ軍は、ここを新たな拠点とし
日本本土への戦略爆撃を激化させた。投入されたのは
すでに猛威を振るっていたB-29スーパーフォートレスに加え
そのエンジンを強化し、より高高度・高速での飛行を可能にした
改良型B-50スーパーフォートレスだった。

「B-50、日本本土へ発進!」
マリアナの飛行場から、巨大なB-50爆撃機が轟音を立て
次々と離陸していった。彼らは、日本本土の主要都市を目標に、絨毯爆撃を開始した。

東京、大阪、名古屋といった日本の主要都市は
連日、B-29とB-50による無差別爆撃に晒された。
焼夷弾が雨あられと降り注ぎ、木造家屋の密集地は瞬く間に炎の海と化した。
都市のインフラは破壊され、工場は灰燼に帰し、人々は住む場所を失った。

「空襲警報!避難だ!」
夜空を赤く染める炎の中、市民たちが防空壕へと逃げ惑った。
しかし、爆撃の規模はあまりにも大きく、多くの人々が命を落とした。
日本の都市は壊滅的な打撃を受け、国民の士気は低下の一途をたどった。
食料や物資の配給は滞り、飢えと疲弊が国民を襲った。

日本政府は、徹底抗戦を呼びかけたが
国民の目には、戦争の終わりが見えない絶望感が漂っていた。
真珠湾での電撃的な勝利は、遠い過去の出来事となり
日本は本土を直接攻撃されるという、未曽有の危機に瀕していた。

太平洋の反攻は、アメリカの物量と技術力
そして日本軍の抵抗能力が、極限まで試される戦いとなっていた。
日本の新鋭戦車が局地的な優位を見せることはあっても
それを覆すアメリカの圧倒的な生産力と、航空戦力の優位は揺るぎなかった。
そして、本土への戦略爆撃は、日本の戦争遂行能力を徐々に
しかし確実に削り取っていったのである
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-

半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。 ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。 また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。 その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。 この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。 またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。 この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず… 大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。 【重要】 不定期更新。超絶不定期更新です。

土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家
歴史・時代
 榎本艦隊北上せず。  それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。  生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。  また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。  そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。  土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。  そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。 (「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です) 

幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。

克全
歴史・時代
 西欧列強に不平等条約を強要され、内乱を誘発させられ、多くの富を収奪されたのが悔しい。  幕末の仮想戦記も考えましたが、徳川家基が健在で、田沼親子が権力を維持していれば、もっと余裕を持って、開国準備ができたと思う。  北海道・樺太・千島も日本の領地のままだっただろうし、多くの金銀が国外に流出することもなかったと思う。  清国と手を組むことも出来たかもしれないし、清国がロシアに強奪された、シベリアと沿海州を日本が手に入れる事が出来たかもしれない。  色々真剣に検討して、仮想の日本史を書いてみたい。 一橋治済の陰謀で毒を盛られた徳川家基であったが、奇跡的に一命をとりとめた。だが家基も父親の十代将軍:徳川家治も誰が毒を盛ったのかは分からなかった。家基は田沼意次を疑い、家治は疑心暗鬼に陥り田沼意次以外の家臣が信じられなくなった。そして歴史は大きく動くことになる。 印旛沼開拓は成功するのか? 蝦夷開拓は成功するのか? オロシャとは戦争になるのか? 蝦夷・千島・樺太の領有は徳川家になるのか? それともオロシャになるのか? 西洋帆船は導入されるのか? 幕府は開国に踏み切れるのか? アイヌとの関係はどうなるのか? 幕府を裏切り異国と手を結ぶ藩は現れるのか?

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

改大和型戦艦一番艦「若狭」抜錨す

みにみ
歴史・時代
史実の第二次世界大戦が起きず、各国は技術力を誇示するための 「第二次海軍休日」崩壊後の無制限建艦競争に突入した 航空機技術も発達したが、それ以上に電子射撃装置が劇的に進化。 航空攻撃を無力化する防御陣形が確立されたことで、海戦の決定打は再び「巨大な砲」へと回帰した。 そんな中⑤計画で建造された改大和型戦艦「若狭」 彼女が歩む太平洋の航跡は

【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記

糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。 それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。 かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。 ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。 ※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。

東亜の炎上 1940太平洋戦線

みにみ
歴史・時代
1940年ドイツが快進撃を進める中 日本はドイツと協働し連合国軍に宣戦布告 もしも日本が連合国が最も弱い1940年に参戦していたらのIF架空戦記

処理中です...