異聞坊ノ岬沖海戦      此れは特攻作戦に非ず

みにみ

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混成攻撃隊

未完成

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海軍航空隊の壊滅的な犠牲と引き換えに
米空母イントレピッドを撃破するという戦果を挙げたその直後
沖縄上空には、日本の最後の切り札、陸軍航空隊が突入してきた。
彼らは、海軍の犠牲を無駄にすることなく、この総攻撃を完遂する覚悟だった。

米軍のミッチャー中将は、イントレピッドの被弾に顔色を失っていた。
航空母艦という艦隊の心臓部を直接攻撃され、しかもその攻撃が
「ロケット特攻機」なる未知の兵器によるものだったことに
彼は深い衝撃を受けていた。しかし、彼の驚きは、まだ序の口だった。


陸軍航空隊にとって、この突入は
まさに悪運としか言いようのない好機に恵まれていた。

海軍攻撃隊の猛攻と零戦隊との死闘により
米任務部隊の迎撃に当たっていたF6Fヘルキャット隊のほとんどの機体が
残弾を撃ち尽くしていたのだ。空中で激しい機銃戦を繰り広げた結果
弾薬が底をつき、一部の機体は燃料も尽きかけていた。

「弾切れだ! 帰投して補給せねば!」
「もう撃つものがない! 敵機はまだ来るのか!?」

米軍パイロットの通信には、焦燥と困惑が混じっていた。
彼らは、日本の航空機がこれほど組織的
かつ連続的に来襲するとは予想していなかった。

結果として、陸軍攻撃隊を迎え撃つことができた迎撃機は
たった十数機の、残弾残り少ないF6FとF4Uのみだった。
これは、数で圧倒的に優位に立っていたはずの米空母部隊にとっては
最悪のシナリオ以外の何物でもなかった。


その残り少ない米軍機を迎え撃ったのは
飛行第一戦隊長・黒田少佐率いる四式戦闘機疾風と一式戦隼で構成された
陸軍の護衛戦闘機隊だった。
彼らは、海軍の零戦とは異なる、重武装と高速性能を誇っていた。

「来たぞ! 敵機はわずかだ! 全機撃墜せよ!」

黒田少佐の号令が響く。四式戦疾風隊は、一瞬で米軍機に肉薄した。
圧倒的な性能差と、何よりもパイロットたちの
士気の高さが、この空中戦の趨勢を決定づけた。

ダダダダダッ!

疾風の20mm機関砲が火を噴き、残弾の少ないF6FやF4Uに容赦なく命中する。
炎を上げ、煙を吐きながら、米軍機は次々と空から叩き落とされた。
あっという間に、十数機いたはずの迎撃機は
数を減らし、やがて雲の中に消え去るか、あるいは海へと墜落していった。

「敵機、全機撃墜!」

護衛の疾風隊から報告が上がった。
陸軍部隊にとって、残る脅威は敵艦の対空砲火のみとなった。
海軍部隊が血を流して切り開いた道を、陸軍部隊ははるかに
簡単に艦隊上空に侵入できたのだ。これは、連携攻撃の真価が発揮された瞬間だった。


陸軍航空隊の攻撃隊は、米艦隊上空へと突入していった。
その中で、最初に攻撃を仕掛けたのは
飛行第十四戦隊長・斎藤少佐率いる四式重爆飛龍隊だった。
彼らは、高度4000メートルという比較的高い位置から
日本の切り札、試製イ号一型甲無線誘導弾を投下する準備を進めていた。

「イ号、投下準備! 各機、目標確認!」

斎藤少佐の指示が飛ぶ。彼の機体を含む28機の四式重爆飛龍が
それぞれの翼下に抱えた、異様な形状の無線誘導弾を、米艦隊上空で切り離した。

「イ号、投下!」

カチッ…ヒュゥゥゥ バシュッ

28発のイ号が、次々と機体から離れ、白い噴煙を上げながら
海へと向かっていく。しかし、その全てが完璧に誘導されたわけではなかった。

「報告! イ号、誘導に成功したのは約半数の17発です!」

無線手からの焦燥した声が届く。未だ試作状態の兵器ゆえの
不安定さが露呈したのだ。しかし、それでも17発。その数は
米艦隊にとって、大きな脅威となり得るものだった。

投下されたイ号は、それぞれの目標へと向かって
バラバラに軌道を描き始めた。その中には、制御を失い
海へと落ちていくものもあったが、多くは
それぞれの無線手の操作によって、目標へと針路を定めていく。

「対空砲火、撃ち方始め!」

米艦隊は、レーダーでイ号を探知し、一斉に砲火を浴びせた。
対空砲弾が、イ号の近くで炸裂する音が、飛龍の機内にも聞こえてくる。
しかし、高速で降下するイ号を正確に捉えるのは、至難の業だった。


その間、飛行第一戦隊の一式戦隼隊が、高度を下げて米艦隊へと突入していた。
彼らの一式戦三型は、その両翼下に250kg爆弾を搭載していた。
彼らの任務は、イ号誘導弾の着弾を支援するため
米艦隊の対空火器を叩き潰すことだった。

「目標、アイオワ級戦艦! 対空火器を潰せ!」

黒田少佐は、僚機に指示を飛ばした。アイオワ級戦艦は
米海軍が誇る最強の戦艦であり、その対空網は極めて分厚い。
だが、イ号の命中精度を高めるためには、その対空火力を沈黙させる必要があった。

一式戦隼隊は、米艦隊の対空弾幕の中を、縫うように突っ込んでいく。

ドォォォン! ダダダダダッ!

米艦艇からの猛烈な対空砲火が、隼を襲う。
機体が激しく揺れ、被弾音が響き渡る。

「くそっ! やられた!」

次々と隼が撃墜されていく。攻撃の最中に、半数ほどが撃墜されてしまった。 
しかし、彼らは、その身を挺して米艦の対空火力を引きつけ
爆弾を投下していった。250kg爆弾が
アイオワ級戦艦の対空砲座の近くに着弾し
爆炎と黒煙を上げ対空砲座が沈黙する。

彼らの犠牲は、決して無駄ではなかった。
対空砲の注意を低空に引き寄せられただけで、十分だったのだ。


対空火力が分散し、低空に引き寄せられた隙を突き
空を裂きながら進むイ号は、着実に目標へと向かっていた。

イ号発射母機を指揮する斎藤少佐は、最優先で狙うのは
無論、敵空母であると判断していた。米軍の航空戦力を壊滅させることが
この総攻撃の最大の目的だったからだ。

「1番、4番は敵1番艦。5番、6番は敵3番艦。7番、8番は敵4番艦……」

無線で、攻撃隊指揮官から各空母への割り振りが伝えられる。
各飛龍の無線手たちは、緊張しながらも、双眼鏡を覗き込みながら
イ号の誘導を行う。彼らの指先が、無線操縦器のボタンを繊細に操作し
イ号のわずかな軌道修正を行う。

「いけ! この一撃で、全てを覆すのだ!」

イ号は、それぞれの目標へと向かい、一直線に、しかし静かに
そして確実に、米艦隊へと迫っていった。
それは、日本の最後の希望を乗せた、渾身の一撃だった。
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