32 / 35
終章 天の運命
傾斜復旧見込みなし
しおりを挟む
ウィスコンシンへの奇跡的な一撃を放った大和だったが
その代償は大きかった。機関部への致命的な被弾により
その速力は急速に失われていた。夜明けの光が
満身創痍の巨艦を容赦なく照らし出す中、今度は米駆逐隊が
その止めを刺さんとばかりに迫りくる。大和の最期は、刻一刻と近づいていた。
機関部の約四分の一を失い、速度が著しく低下した大和は
もはやその巨体を機敏に動かすことができなかった。
26ノットの速力を発揮していたのも束の間、見る見るうちにその勢いは衰え
巨大な鉄の塊が海に漂うかのようだった。
その姿は、米艦隊にとって、格好の標的だったのだ。
「敵駆逐隊、接近! 」
見張り員の叫びが、疲労困憊の艦橋に響き渡る。
大和の周囲を囲むように、10隻の米駆逐艦が
その細長い艦体を波間に躍らせながら、高速で接近してくるのが見えた。
彼らは、大和を仕留めるという明確な意図をもって、その牙を剥き出しにしていた。
「魚雷戦用意 一番二番魚雷発射管装填」
「水雷指揮所照準よし」
米駆逐艦は、躊躇なく大和へと肉薄する。
彼らの目的は、魚雷による致命的な一撃を放つこと。
日本の水雷戦隊の脅威を散々味わってきた彼らは
もはや魚雷が艦隊決戦における最も恐ろしい武器であることを
骨身に染みて理解していたのだ。
大和の艦橋では、電気系統の損傷による混乱が続いていた。
先の爆撃で中央部に被弾した際、主要な電気系統が死んでしまい
一部の対空火器は機能を停止していたのだ。
しかし、日本海軍の将兵たちは、決して諦めてはいなかった。
「高角砲、手動旋回! 照準、敵駆逐艦!」
高角砲座では、砲手たちが血走った目で必死に作業を続けていた。
電気系統が死んだため、自動照準や電動旋回は不可能だった。
彼らは、手動ハンドルを死に物狂いで回し
その重い砲身を、迫りくる駆逐艦へと向けた。
「装填、急げ!」「撃て!」
轟音と共に、12.7cm高角砲が、反撃の火を噴いた。
砲弾が夜明けの空を切り裂いていくが、その命中精度は
電動による自動照準に比べて格段に劣っていた。
駆逐艦の高速機動に翻弄され、砲弾は次々とその脇をすり抜けていく。
「命中弾、与えられず!」
観測員の報告は、無情にもその事実を突きつけた。
精魂込めて放たれた砲弾は、敵駆逐艦に命中することなく
虚しく海面に水柱を上げるばかりだった。
米駆逐艦は、大和の反撃をものともせず、さらにその距離を詰めてくる。
「敵駆逐艦、魚雷発射! 21インチ五連装魚雷、多数!」
米駆逐艦から、無数の魚雷が放たれた。
夜明けの海を白い航跡を描きながら、それはまるで死神の群れのように
大和へと向かって殺到してくる。5連装の魚雷発射管から放たれる魚雷は
その一斉射だけでも、膨大な数を誇っていた。
「取舵一杯! 全速力で回避!」
有賀艦長は、必死に回避命令を下した。
機関部は損傷しているものの、残された動力で、大和はその巨体を回し
懸命に魚雷を回避しようと試みた。大和の巨大な艦体が
ゆっくりと、しかし確実に左舷へと旋回していく。
しかし、その動きは、高速で迫りくる魚雷群の前では、あまりにも鈍すぎた。
ドォォォォォォォォォン!! ドォォォォォォォォォン!! ドォォォォォォォォォン!!
魚雷が、次々と大和の船体に突き刺さった。
轟音と衝撃が、艦全体を揺るがす。黒煙と硝煙混じりの水柱が
大和の左舷から巨大に立ち上る。
「左舷に魚雷6本が船体に命中しました!」
複数本の魚雷が、立て続けに大和の舷側に命中したのだ。
その衝撃は、艦の構造を内部から破壊し、致命的な浸水を引き起こした。
「艦の傾斜、左舷に20度!」
報告された数字に、艦橋の将兵たちは言葉を失った。
これまでの被弾と、今回の魚雷の直撃によって
大和は、もはや戦闘継続が不可能なほどに大きく傾斜していたのだ。
「艦首部、浸水多量で沈み込んでいます!」
さらに絶望的な報告が続く。艦首部からの大量の浸水により
大和の巨大な艦首は、まるで水の中に吸い込まれるかのように、ゆっくりと沈み込み始めていた。
艦内には、緊急回線を通じて、応急指揮所からの
「傾斜復旧見込みなし」の報が流れた。
それは、もはや浸水を食い止めることができず、
艦の傾斜を復旧させる見込みがないことを意味していた。
将兵たちの顔からは、希望の光が完全に消え去った。
大和の艦内では、轟音と軋みが響き渡り
海水が滝のように流れ込んでくる音が聞こえる。
浸水は止まらず、艦の傾斜はますます深刻化していく。
乗組員たちは、必死に損傷箇所の封鎖を試みるが
もはや人力ではどうすることもできなかった。
夜明けの沖縄の海は、大和の最期を告げるかのように
静かに、そして残酷にその姿を現していた。傾斜した巨体は
すでに戦闘艦としての姿を失い、ただ水面に浮かぶ巨大な残骸と化していた。
大和の最期は、刻一刻と近づきつつあった。 勝利への希望は潰え
残されたのは、この巨艦と共に運命を共にするという悲壮な決意だけだった。
太陽は高く昇り、その光が、今にも沈もうとする大和の姿を、容赦なく照らし出していた。
その代償は大きかった。機関部への致命的な被弾により
その速力は急速に失われていた。夜明けの光が
満身創痍の巨艦を容赦なく照らし出す中、今度は米駆逐隊が
その止めを刺さんとばかりに迫りくる。大和の最期は、刻一刻と近づいていた。
機関部の約四分の一を失い、速度が著しく低下した大和は
もはやその巨体を機敏に動かすことができなかった。
26ノットの速力を発揮していたのも束の間、見る見るうちにその勢いは衰え
巨大な鉄の塊が海に漂うかのようだった。
その姿は、米艦隊にとって、格好の標的だったのだ。
「敵駆逐隊、接近! 」
見張り員の叫びが、疲労困憊の艦橋に響き渡る。
大和の周囲を囲むように、10隻の米駆逐艦が
その細長い艦体を波間に躍らせながら、高速で接近してくるのが見えた。
彼らは、大和を仕留めるという明確な意図をもって、その牙を剥き出しにしていた。
「魚雷戦用意 一番二番魚雷発射管装填」
「水雷指揮所照準よし」
米駆逐艦は、躊躇なく大和へと肉薄する。
彼らの目的は、魚雷による致命的な一撃を放つこと。
日本の水雷戦隊の脅威を散々味わってきた彼らは
もはや魚雷が艦隊決戦における最も恐ろしい武器であることを
骨身に染みて理解していたのだ。
大和の艦橋では、電気系統の損傷による混乱が続いていた。
先の爆撃で中央部に被弾した際、主要な電気系統が死んでしまい
一部の対空火器は機能を停止していたのだ。
しかし、日本海軍の将兵たちは、決して諦めてはいなかった。
「高角砲、手動旋回! 照準、敵駆逐艦!」
高角砲座では、砲手たちが血走った目で必死に作業を続けていた。
電気系統が死んだため、自動照準や電動旋回は不可能だった。
彼らは、手動ハンドルを死に物狂いで回し
その重い砲身を、迫りくる駆逐艦へと向けた。
「装填、急げ!」「撃て!」
轟音と共に、12.7cm高角砲が、反撃の火を噴いた。
砲弾が夜明けの空を切り裂いていくが、その命中精度は
電動による自動照準に比べて格段に劣っていた。
駆逐艦の高速機動に翻弄され、砲弾は次々とその脇をすり抜けていく。
「命中弾、与えられず!」
観測員の報告は、無情にもその事実を突きつけた。
精魂込めて放たれた砲弾は、敵駆逐艦に命中することなく
虚しく海面に水柱を上げるばかりだった。
米駆逐艦は、大和の反撃をものともせず、さらにその距離を詰めてくる。
「敵駆逐艦、魚雷発射! 21インチ五連装魚雷、多数!」
米駆逐艦から、無数の魚雷が放たれた。
夜明けの海を白い航跡を描きながら、それはまるで死神の群れのように
大和へと向かって殺到してくる。5連装の魚雷発射管から放たれる魚雷は
その一斉射だけでも、膨大な数を誇っていた。
「取舵一杯! 全速力で回避!」
有賀艦長は、必死に回避命令を下した。
機関部は損傷しているものの、残された動力で、大和はその巨体を回し
懸命に魚雷を回避しようと試みた。大和の巨大な艦体が
ゆっくりと、しかし確実に左舷へと旋回していく。
しかし、その動きは、高速で迫りくる魚雷群の前では、あまりにも鈍すぎた。
ドォォォォォォォォォン!! ドォォォォォォォォォン!! ドォォォォォォォォォン!!
魚雷が、次々と大和の船体に突き刺さった。
轟音と衝撃が、艦全体を揺るがす。黒煙と硝煙混じりの水柱が
大和の左舷から巨大に立ち上る。
「左舷に魚雷6本が船体に命中しました!」
複数本の魚雷が、立て続けに大和の舷側に命中したのだ。
その衝撃は、艦の構造を内部から破壊し、致命的な浸水を引き起こした。
「艦の傾斜、左舷に20度!」
報告された数字に、艦橋の将兵たちは言葉を失った。
これまでの被弾と、今回の魚雷の直撃によって
大和は、もはや戦闘継続が不可能なほどに大きく傾斜していたのだ。
「艦首部、浸水多量で沈み込んでいます!」
さらに絶望的な報告が続く。艦首部からの大量の浸水により
大和の巨大な艦首は、まるで水の中に吸い込まれるかのように、ゆっくりと沈み込み始めていた。
艦内には、緊急回線を通じて、応急指揮所からの
「傾斜復旧見込みなし」の報が流れた。
それは、もはや浸水を食い止めることができず、
艦の傾斜を復旧させる見込みがないことを意味していた。
将兵たちの顔からは、希望の光が完全に消え去った。
大和の艦内では、轟音と軋みが響き渡り
海水が滝のように流れ込んでくる音が聞こえる。
浸水は止まらず、艦の傾斜はますます深刻化していく。
乗組員たちは、必死に損傷箇所の封鎖を試みるが
もはや人力ではどうすることもできなかった。
夜明けの沖縄の海は、大和の最期を告げるかのように
静かに、そして残酷にその姿を現していた。傾斜した巨体は
すでに戦闘艦としての姿を失い、ただ水面に浮かぶ巨大な残骸と化していた。
大和の最期は、刻一刻と近づきつつあった。 勝利への希望は潰え
残されたのは、この巨艦と共に運命を共にするという悲壮な決意だけだった。
太陽は高く昇り、その光が、今にも沈もうとする大和の姿を、容赦なく照らし出していた。
1
あなたにおすすめの小説
世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記
颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。
ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。
また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。
その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。
この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。
またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。
この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず…
大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。
【重要】
不定期更新。超絶不定期更新です。
土方歳三ら、西南戦争に参戦す
山家
歴史・時代
榎本艦隊北上せず。
それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。
生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。
また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。
そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。
土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。
そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。
(「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です)
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
暁のミッドウェー
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。
真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。
一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。
そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。
ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。
日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。
その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。
(※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)
九九式双発艦上攻撃機
ypaaaaaaa
歴史・時代
欧米列強に比べて生産量に劣る日本にとって、爆撃機と雷撃機の統合は至上命題であった。だが、これを実現するためにはエンジンの馬力が足らない。そこで海軍航空技術廠は”双発の”艦上攻撃機の開発を開始。これをものにしして、日本海軍は太平洋に荒波を疾走していく。
対米戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
大本営から特命を受けてサイパン島に視察に訪れた柏原総一郎大尉は、絶体絶命の危機に過去に移動する。
そして21世紀からタイムリーㇷ゚して過去の世界にやって来た、柳生義正と結城薫出会う。
3人は協力して悲惨な負け方をした太平洋戦争に勝つために様々な施策を試みる。
小説家になろうで、先行配信中!
戦国終わらず ~家康、夏の陣で討死~
川野遥
歴史・時代
長きに渡る戦国時代も大坂・夏の陣をもって終わりを告げる
…はずだった。
まさかの大逆転、豊臣勢が真田の活躍もありまさかの逆襲で徳川家康と秀忠を討ち果たし、大坂の陣の勝者に。果たして彼らは新たな秩序を作ることができるのか?
敗北した徳川勢も何とか巻き返しを図ろうとするが、徳川に臣従したはずの大名達が新たな野心を抱き始める。
文治系藩主は頼りなし?
暴れん坊藩主がまさかの活躍?
参考情報一切なし、全てゼロから切り開く戦国ifストーリーが始まる。
更新は週5~6予定です。
※ノベルアップ+とカクヨムにも掲載しています。
幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。
克全
歴史・時代
西欧列強に不平等条約を強要され、内乱を誘発させられ、多くの富を収奪されたのが悔しい。
幕末の仮想戦記も考えましたが、徳川家基が健在で、田沼親子が権力を維持していれば、もっと余裕を持って、開国準備ができたと思う。
北海道・樺太・千島も日本の領地のままだっただろうし、多くの金銀が国外に流出することもなかったと思う。
清国と手を組むことも出来たかもしれないし、清国がロシアに強奪された、シベリアと沿海州を日本が手に入れる事が出来たかもしれない。
色々真剣に検討して、仮想の日本史を書いてみたい。
一橋治済の陰謀で毒を盛られた徳川家基であったが、奇跡的に一命をとりとめた。だが家基も父親の十代将軍:徳川家治も誰が毒を盛ったのかは分からなかった。家基は田沼意次を疑い、家治は疑心暗鬼に陥り田沼意次以外の家臣が信じられなくなった。そして歴史は大きく動くことになる。
印旛沼開拓は成功するのか?
蝦夷開拓は成功するのか?
オロシャとは戦争になるのか?
蝦夷・千島・樺太の領有は徳川家になるのか?
それともオロシャになるのか?
西洋帆船は導入されるのか?
幕府は開国に踏み切れるのか?
アイヌとの関係はどうなるのか?
幕府を裏切り異国と手を結ぶ藩は現れるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる