炎の魔獣召喚士

平岡春太

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第八章 開戦

 第一話 裏切り

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 上空をゆっくりと移動する分厚い雲の中から、何かが唸るような音が聞こえて来る。
 その雲の中には、浮遊しながらゆっくりと移動するケイハルトの居城ブリュンデル城の姿があった。

「ようやく出来たぞ!」

 城の一角にある研究室と思しき一室で嬉々とした声を上げるのは、オルタニア国の第一王子であるデリオンの意識を乗っ取ったアルドだ。
 その手にはかなり大きな腕輪の様な豪奢な装飾具が握られている。

「ほう、どうやら完成したようですね」

 部屋の出入り口から、ラファールが姿を見せた。

「何の用だ?」
「おや、白々しい。その魔導具はケイハルト様の為にお作りになったのでは? それを受け取りに来たのですがね」

 アルドは失笑で答える。

「作りはしたが、これを渡す約束はした覚えがないがな」
「では、その魔導具を渡す気はないと?」
「だとしたらどうする?」

 悪辣な笑みを見せるアルドが掲げた右腕の手首に光る腕輪から無数の触手が勢い良く飛び出し、ラファールに襲い掛かる。
 一瞬にしてラファールに迫った触手は、その全てがラファールに触れることなく細かく寸断されてしまった。
 ラファールの手には、いつ取り出したのか、先程までなかった三叉戟が握られている。

「やはり、一筋縄ではいかないようだな」
「素直に渡してくれませんかね? でなければ、力尽くで貰い受ける事になりますが」
「出来るかな?」

 アルドが近くの壁の一部を押し込むと、ラファールの両側面にある壁に空いた穴から槍が物凄い速さで飛び出して来た。
 ラファールは寸前の所で三叉戟を使って跳ね返した。しかし、間髪入れずに天井から大きな物体が落ちて来て、ラファールに逃げる間も与えずに呑み込んでしまった。
 落ちて来たのはマグマの塊のような姿をした炎魔獣のフラーヴァだった。

「そのまま焼け死んでしまえ」

 アルドが見せる満面の笑みは、直ぐに驚きへと変わる事となった。
 余り動きを見せないフラーヴァが、突然激しく動き出し、その体がずたずたに引き裂かれて飛び散ってしまった。

「いろいろと仕込んでいるようですね」

 再び姿を見せたラファールはまるで無傷、少しの焼け跡すらない。
 飛び散ったフラーヴァの破片のそれぞれが蠢き出し、再びラファールに飛び掛かって行くが、ラファールが縦横無尽に振るう三叉戟によって、その全てが完全に消滅してしまった。

「そう長居も出来ないので、そろそろ終わらせましょうか」

 アルドの視界からラファールが消えた直後、その視線を落とすと、胸元からラファールの三叉戟の切っ鋒が突き出ていた。
 顔だけを少し後ろに向けると、ラファールが立っている。

「私を殺していいのか? まだその魔導具は完成してないのだぞ」
「あなたが死んでも、魔導具が未完成でも、その方が私には好都合なのですがね」
「どういう事だ?」
「さあ、それはあなたが知らなくてもいい事ですよ」

 ラファールは、アルドの体を貫いている三叉戟を一気に引き抜いた。
 振り返りつつ仰向けに倒れたアルドは、その手をラファールに伸ばす。

「き、貴様は一体…………」

 その言葉を最後に絶命した。

「さて」

 ラファールはアルドが握っている魔導具に歩み寄り、三叉戟の切っ鋒を向ける。

「後はこれを壊すだけですね」

 力強い一突きが、魔導具に向けて突き出された。しかし、寸前で魔導具は一瞬にして分厚い氷に包まれ、ラファールの一撃を阻む。

「これは!」

 部屋の出入り口から、新たな人物がゆっくりと入って来た。

「これはどう言う事ですか、ラファール?」
「アローラ、どうしてここに……」
「どうして? それはこちらのセリフです。アルドを殺し、今は大事な魔導具を壊そうとした。どう言うつもりですか?」
「見られてしまいましたか。見なかった事に━━とは行きませんかね? あなたも心からケイハルトに仕えている訳でもないでしょう」
「確かに色々と都合がよいので今はここに居るのですが。それ故に今裏切る訳にはいかないでしょうね」
「そうですか。では仕方ありませんね」

 ラファールが三叉戟を構えるのを見て、アローラも剣を構える。
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