炎の魔獣召喚士

平岡春太

文字の大きさ
152 / 208
第八章 開戦

 第三話 突破口

しおりを挟む
 ラファールは通路を駆けていた。
 前方から兵士らしき者達が駆け寄って来て手持ちの武器で襲い掛かって来るが、ケイハルトが危惧していた通り、あっさりと返り討ちにし、シュレーゲンが言っていた足止めにすらならない。

「このまま外まで出られれば良いのですが……」

 そう甘く行くはずもなく、行く先の壁が突然激しく崩れるのを見てラファールの足が止まる。

「全く、余計な仕事を増やしてくれるな。お前も」
「ヴェルク……」

 崩れた壁の奥の部屋からヴェルクが姿を見せた。

「あなたも見逃してはくれない口ですか?」
「俺は少しでも強くなりたいからここに居るんだが、ここでお前を見逃せば、出て行かなくちゃならねえ。俺はまだ強くなりてえからな。まして、お前と本気でやり合って勝てたなら、実力も上がるし株も上がるってもんだろう」
「つまり、ダメだと言う事ですね」

 ラファールは覚悟を決め、三叉戟を構える。
 ヴェルクは肩に担ぐアックスを振り上げるなり、その体躯を感じさせない速さで駆け出し、一気にラファールに駆け寄ると、アックスをラファールに向かって振り下ろした。
 迫力あるアックスの一撃を、ラファールは躱すことなく三叉戟の中央の刃の先端の一点で受け止めた。

「なっ!?」

 一度はヴェルクが一驚するも、それは直ぐに不敵な笑みへと変わる。

「そういやあ、以前にも俺の一撃を槍の先で受け止めやがった奴が居たな。お前が何者か、分かった気がするぜ!」

 ヴェルクが横薙ぎに振るったアックスを、ラファールは飛び退って躱すが、直後にアックスが巻き起こした風圧がラファールを襲う。
 ラファールも三叉戟を廻転させてその風圧を散らすが、その間に間を詰めたヴェルクの一撃がラファールの頭頂に迫る。

「もらった!」

 捉えたかと思われたヴェルクの更なる一撃も、高々と響き渡る金属音と共に再び受け止められた。しかしそれは、ラファールの三叉戟ではなかった。

「忠告したはずだ。気を付けた方がいいと」
「ライオ?」

 アックスを剣で受け止めているのはライオだった。
 ライオの剣がスパークし始めるのに気付いたヴェルクは、慌てて飛び退る。
 その顔は嫌悪に変わり、ライオに鋭い目を向ける。

「手前、どう言うつもりだ? そいつは裏切り者だぞ。まさか、手前も仲間だってのか?」
「仲間? 違うな。単なる気紛れだ」
「気紛れだ? ふざけるな!」
「そうです。私に構うと、あなたにも迷惑が掛かりますよ」
「迷惑と思うなら、俺の気が変わらない内に早く行け」

 ラファールは戸惑いを見せるが、集まって来る声を聴き、これ以上ここに居れば逆にライオに迷惑が掛かると思い、その場を離れた。

「ちょっと待て!」

 後を追おうとするヴェルクの前に、ライオが立ち塞がる。

「何処までも邪魔を」

 苦渋の顔を見せるも、それは直ぐに笑みへと変わる。

「考え方を変えりゃあ、堂々と手前とやれるんだ。こんな好機もねえか。覚悟しな」
「やってみろ」



 
 逃走を続けるラファールは、他の兵士達が立ち塞がって来たが、それを軽々と退け、何とか城の外に出ることに成功する。

「ここまで来れば」
「逃がしはしませんよ」

 城の陰から複数の翼魔獣が次々と姿を見せる。
 先頭のサウロンの背に乗るアローラを始め、翼魔獣の背には一人ないし二人の兵士が乗っている。
 更には城の出入り口から数人の兵士が駆け出して来てラファールを囲む。

「簡単には行きませんか」

 ラファールが再び三叉戟を構えたその時、

「お逃げ下さい、ラファール様!」

 新たに翼魔獣が複数現れ、先に現れたアローラ達の翼魔獣と対峙する。
 更に城の出入り口からも新たに兵士が出て来てラファールを囲む兵士に向かって剣を構える。

「ラファール様、ここは我々に任せてお逃げを」
「お前達は?」
「少なからずラファール様に恩義を感じている者です。さあ、早く」
「それではお前達が」
「この命、ラファール様のお役に立てるなら本望」
「アローラ様、いかがなさいます?」

 アローラ側についている兵士達が動揺を見せる。

「構うな。ラファールにつくのならそ奴らも裏切り者と見做してよい。一緒に斬り捨てろ!」

 その言葉が号令となり、兵士達が入り乱れての戦いが始まってしまった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

処理中です...