炎の魔獣召喚士

平岡春太

文字の大きさ
156 / 208
第八章 開戦

 第七話 激突

しおりを挟む
「戦場の場をアルブトラに選ぶとは、全くもって不愉快ですね」
「ケイハルトのことだ。ただ単にここを戦場に選んだだけではあるまい。何を仕掛けておるやら」
「確かに、それは言えますね。だからと言って、先手を譲る訳でもありませんわね?」
「当然だ」

 ビエントが台車に目を遣るのを見て、アインベルクもそれに続いた。

「なるほど、ブリュンデル城を落としたのはそれですか。相変わらず雑な男ですね」
「ちゃんと城は落ちたであろう。それに、苦労して持って来てくれたのだ。最後まで使ってやらんとな」

 ビエントは台車の荷台に残る二本の内の一本の大木を、再び軽々と持ち上げた。
 一度それを見ている兵士達とアインベルク以外のシャルロアを含む他の者達は、驚歎の声を洩らす。
 更にその狙いをブリュンデル城の方に定め、振り被って放り投げるのを見て、更なる驚歎の声を生んだ。
 投擲された大木は物凄い速さでブリュンデル城の前まで到達し、密集している兵士や魔獣の群れの中に落下した。
 いち早く気付いた者達は逃げようとしたが、爆音と共にその周りに居た多くが吹っ飛ばされた。

「さて、最後の一本」

 歓喜の声が上がる中、最後の一本を持ち上げ、間髪入れずに放り投げた。
 二撃目の投擲も、図られたようにブリュンデル城の前で密集する兵と魔獣に向けて飛んで行く。
 一撃目の事もあり、慌てて逃げ出そうとするも、密集していて身動きが取れない。
 騒然とするその密集する中から、大柄な人影が飛び出した。

「そう何度もさせるかよ!」

 向かってくる大木に向かって飛び出した人影は、ヴェルクであった。
 廻転するように振るったアックスが見事に飛んで来た大木に命中し、跳ね返った大木はほぼ飛んで来た速さを保ち、ビエント達に向きを変えた。
 思いもしない反撃に、飛んで来た先に居る精鋭達も焦燥を見せる。

「これぐらいで動揺しては困りますよ」

 アインベルクが錫杖の先を地面に突き刺すとその先から伸びた氷の筋が宙を走り、飛んで来た大木に触れた刹那に全てを氷に包んでその動きを止めてしまった。
 更に引き抜いた錫杖の先で伸びている氷を軽くつつくと、氷は大木ごと粉々に砕け散ってしまった。

「二本目は返されてしまいましたわね。これでは先手を取ったとも言えませんよ」
「何を言う。一本目で向こうは被害を出しているのだぞ。十分先手は取れたであろう」
「負けず嫌いなのは変わりませんね」
「それはお互い様であろう」

 少し前にいがみ合うのは子供だと言っておきながら、二人共十分に子供だと周りは思いつつも、それを口にする者はいない。

「お母様も、ビエント様もいい加減になさって下さい。相手はもう、動き出しそうですよ」

 この場を諫めるただ一人、シャルロアの方が大人だと周りは呆れるばかりだ。
 そんな中、ブリュンデル城の方のあちらこちらから魔獣の角を加工した角笛の音が響き渡り始め、ケイハルト側の軍勢が前進を始める。

「いがみ合っておる場合ではないな」
「分かっています」
「こちらも角笛を」

 近くに居る兵が腰に携えている角笛を手にし、高らかに吹き鳴らす。
 それを合図に周りに角笛を持っている者達が次々と吹き鳴らし、こちらの軍勢も我先にと駆け出した。
 魔獣召喚士達はその場で魔獣を召喚し、あるいは乗って来た翼魔獣に乗ってその後を追う。
 二つの軍勢が一直線に並んだままで荒野を走り、互いの距離を縮めて行く。
 その二つが重なった時、遂に本格的な戦いの火蓋が切って落とされた。
 周りを囲まれるのを避ける為に互いに、一直線になったまま戦いが繰り広げられる。
 そんな中でも五賢人の二人、対するはライオとアローラとヴェルク五人は圧倒的な力を見せていた。

「ビエントだ……」
 
 ビエントの槍の一振りで、周りにいる五人程が軽々と吹っ飛ばされる。

「おいおい、おっさん一人に何を遊んでやがる」

 こちらもアックスを振るって周りの敵を蹴散らしながらヴェルクが姿を見せた。

「さっきはずいぶんと派手な挨拶だったよな」
「そちらもな」
「さて、この間の決着を付けさせて貰おうか」
「手も足も出なかった者が、何を言うか」
「試してみるか?」

 ヴェルクが大きく振りかぶったアックスが、ビエントの頭頂を襲う。
 ビエントも慌てることなく構えた槍を振り上げる。
 初めてまみえた時のように、力強く振り下ろされたアックスの刃を、ビエントの槍先の一点で受け止めた。
 ただ今度は、ヴェルクが笑みを見せた刹那、ビエントの槍は真っ二つに裂けてしまった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

処理中です...