炎の魔獣召喚士

平岡春太

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第八章 開戦

 第十四話 修行の成果

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 ようやく状況を把握した白装束の集団が、フラムを認めて武具を構えようとするが、いち早く再びフラムが廻転しながら一閃した剣が、今度は一陣の突風を巻き起こし、周りを囲む白装束の集団全てを吹き飛ばした。

「さて、あいつを何とかしないと」

 飛ばされていたベーベンブルングが身を起こす。
 まともに間近でフラムの炎を受けたもののまるで利いた様子はなく、敵意剥き出しの六つの目をフラムの方に向ける。

「フラムさん、あの魔獣は相当強いですよ」
「見れば分かるわよ。でも、こっちもレベルアップしてますからね」

 フラムは背中にあるもう一本の剣を抜いた。

「二本の剣?」

 思わずシャルロアが訝しげに呟く。
 棒術を使うシャルロアには剣術は専門外だが、対する相手の事を学ぶのに他の武具の戦い方を少なからず学ぶのも至極当然で、二刀流は利点はあるものの扱いが難しく選択するものは極端に少ないと知っている。
 まして重い剣を二本も、女のフラムが扱うのは難しいのも知っている。
 ただ、当のフラムもそれは承知の上だ。

「これは二本じゃなく一本なのよ」
「二本じゃなく一本?」

 フラムが持つ二本の剣の互いの柄尻を合わせると、その部分が繋がり、二本の刃の部分が少し短くなると共に合わせて繋がった柄の部分が長くなる。
 姿を変えたフラムの剣ヴァイトは、両方に短めの刃を持つ一本の剣と化した。

「さあ、いつでもいいわよ」

 ベーベンブルングの姿が忽然と消え、フラムの目の前に突然現れて中央の頭が牙を剝ける。

「早いわね!」

 フラムは片方の剣の刃で牙を受け止める。
 シャルロアの時のように、三つの頭の開いた口の奥には、炎、冷気、そして突風が見える。

「そう言う事ね」

 牙を止めている刃から冷気を送り込み、中央の頭を凍らせると、剣を廻転させ、炎を纏った刃で左の頭を炎で包み込む。
 右の頭が吐いた突風は寸前で飛び上がって躱してみせた。

「今度はこっちの番よ!」

 少し離れて着地したフラムの剣の両刃が風を纏う。
 休むことなく駆け出したフラムがベーベンブルングの横を駆け抜けると、ベーベンブルングの体がズタズタに引き裂かれる。
 氷が砕けた中央の頭を含むベーベンブルングの三つの頭が悲痛な声を上げる。

「さすがにディアナさんみたいに輪切りって訳にはいかないわね」

 憤慨したベーベンブルングの三つの頭が、今度は炎と冷気、突風を一斉に吐き出した。
 それを見たフラムが刃の一方を地面に突き刺すと、地面が大きく盛り上がって壁となり、炎と冷気、そして突風を防ぐ。
 それでも構わずベーベンブルングが吐き続けた三つの属性の力が、フラムが生み出した土の壁を破壊するが、その先にフラムの姿はなかった。

「これで最後よ!」

 上空から降下して来たフラムの突き出した剣の片刃が、ベーベンブルングの背中に深々と突き刺さった刹那、ベーベンブルングの体全体を炎が包み、フラムの姿をも飲み込んだ。

「フラムさん!」
「大丈夫でヤンスよ」

 悲痛な表情に満ちたシャルロアとは対照的に、飛んでいるパルは腕を組み、余裕を見せる。
 急速に勢いを失って消えた炎の後にはベーベンブルングのあの大柄な姿は跡形もなく消滅しており、得意げな笑みを見せるフラムの姿だけが現れた。
 フラムの体全体からは水蒸気が上がっている。

「馬鹿な。あのベーベンブルングが何も出来ずにやられた!?」
「ちゃんと修行は終えて来たようですね」

 焦燥するアローラの姿を認めたフラムは、ゆっくりと歩み寄って来た。

「どうやらシャルロアを泣かせる原因を作ったのはあんたのようね」

 フラムはヴェントの片刃の切っ鋒をアローラに向ける。

「その礼はきっちりと返させて貰うわよ」
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