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第九章 サバイバル
第三話 エンドラド
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フラムが再びヴァイトを身構える中、叢から何かが飛び出して来て、勢い良くフラムの横を通り過ぎて行った。
訝しげなフラムとパルの視線だけが後を追った。
「今のって……」
「人のようだったでヤンス」
「それも子供だったような」
直ぐにそれを追って、地響きが近付いて来る。
更に木々を薙ぎ倒す音も近付いてくる。
「今度は何?」
戻った視線の先に影が見えたかと思うと、木々を薙ぎ倒しながら迫り来るそれは、見た事もない巨大な魔獣だった。
魔獣は怒り心頭の表情で、猛然と向かって来る。
「さっきの子供はあれに追われていたわけ?」
「フラム、こっちもまずいでヤンスよ」
「こういう時は決まってるでしょう」
「逃げるでヤンス!」
背を向けて一目散に逃げ出した。
入り組んだ木々の間を逃げ廻り、フラム達の姿を見失った魔獣が、辺りを見渡し、臭いを嗅いだりして森の奥へと走り去って行く。
それを確認するようにして、叢の中からフラムとパルが頭を出した。
「あ~、びっくりした」
ほっとした言葉を口にするが、フラムとパル以外にも重なるようにして同じ言葉を口にするものがもう一人いた。
訝しげな顔を横に向けると、同じ様に訝しげな少年の顔が向かい合った。
「あーっ!!」
思わず上げた驚きの声も重なり、慌てて少年が逃げ出そうとするも、フラムがその首根っこを捕まえて止める。
「ちょっと待って。あんたには訊きたい事があんのよ。煮たり喰ったりはしないから、大人しくして」
「外界では人間が人間を食べるのか?」
少年の顔が少し青ざめ、更に暴れる。
「フラムが変な事言うからでヤンス」
「ゴメン、ゴメン、今のは単なる例え話だから。何も危害は加えないから、とにかく大人しくしてって」
「本当に?」
訝しがってはいるものの、とりあえず頷くフラムの顔を見て、暴れるのは止めてくれた。
「やっと止まってくれた。それにしても、こっちではダルメキアの事を外界って言うのね。そもそもこの世界の住人じゃないってよく分かるわね」
「何となく、感じで分かるんだ」
「それより、言葉が通じてるでヤンス」
「ベスティオが喋ってる!?」
「ベスティオ? 魔獣の種類かしら。それとも魔獣そのものの事かしら。どちらにしろ、こっちでも喋る魔獣って珍しいんだ」
吹き出しそうなフラムの顔がパルに向く。
「オイラはどうせ珍獣でヤンスよ」
パルはむくれてそっぽを向く。
「ほら拗ねない、拗ねない。いつもの事でしょうに。でも、本当に話が通じてるみたいね。他の人も話せるの?」
少年は首を横に振る。
「喋れる人もいるし、喋れない人もいる。俺は小さい頃から父ちゃんに外界の言葉を教わったから。父ちゃんはその昔、外界から来た人間に言葉を教わったって聞いた」
「へえ~、そうなんだ。それにしても、先生が言っていた通り、本当に魔界にも人間が居るんだ……」
「この世界の名前はエンドラドだ。魔界ではない」
「エンドラド? 名前もあるんだ。人が居るなら当然か。名前と言えば、自己紹介がまだだったわね。私はフラム。で、こっちが━━」
「パルでヤンス」
まだむくれたままのパルに、フラムは呆れる。
「俺はトゥルムだ」
「そう、トゥルムって言うんだ。じゃあトゥルム、一つ訊くけど、ここから北って分かる?」
「訊きたい事ってそんな事か?」
「時間があればもっと色々な事を訊きたい所だけど、今は先を急ぐから」
「北か。確か方向の事だったな。でも、どこが北かは俺には分からない」
「そうよね。方向の概念がこちらと違うでしょうから。困ったわね……あっ、そうだ! ここから一番近い私達の世界を繋ぐ出入り口って分からない?」
「フラム……」
「それなら分かるぞ」
「そう、それならそこまで案内して欲しいんだけど」
「フラム……」
「さっきから何なのよ」
肩にとまって頬を突っつくパルに、トゥルムと話していたフラムのムッとした顔を向ける。
「こっちは大事な話をしてるのに、いつまでむくれてんのよ」
「そうでないでヤンス。後ろでヤンスよ」
「後ろ?」
後ろを振り返ると、さっきの得体の知れない魔獣が、怒り心頭の表情で今にも襲って来ようとしていた。
横に向き直ると、トゥルムの姿はなく、既に少し前を走っていた。
「ちょっと待って!」
慌てて走り出すフラムを、再び魔獣が追い掛ける。
「何で早く言わないのよ!」
「言おうとしたのに聞かなかったでヤンスよ!」
「何でこうなるのよ!」
訝しげなフラムとパルの視線だけが後を追った。
「今のって……」
「人のようだったでヤンス」
「それも子供だったような」
直ぐにそれを追って、地響きが近付いて来る。
更に木々を薙ぎ倒す音も近付いてくる。
「今度は何?」
戻った視線の先に影が見えたかと思うと、木々を薙ぎ倒しながら迫り来るそれは、見た事もない巨大な魔獣だった。
魔獣は怒り心頭の表情で、猛然と向かって来る。
「さっきの子供はあれに追われていたわけ?」
「フラム、こっちもまずいでヤンスよ」
「こういう時は決まってるでしょう」
「逃げるでヤンス!」
背を向けて一目散に逃げ出した。
入り組んだ木々の間を逃げ廻り、フラム達の姿を見失った魔獣が、辺りを見渡し、臭いを嗅いだりして森の奥へと走り去って行く。
それを確認するようにして、叢の中からフラムとパルが頭を出した。
「あ~、びっくりした」
ほっとした言葉を口にするが、フラムとパル以外にも重なるようにして同じ言葉を口にするものがもう一人いた。
訝しげな顔を横に向けると、同じ様に訝しげな少年の顔が向かい合った。
「あーっ!!」
思わず上げた驚きの声も重なり、慌てて少年が逃げ出そうとするも、フラムがその首根っこを捕まえて止める。
「ちょっと待って。あんたには訊きたい事があんのよ。煮たり喰ったりはしないから、大人しくして」
「外界では人間が人間を食べるのか?」
少年の顔が少し青ざめ、更に暴れる。
「フラムが変な事言うからでヤンス」
「ゴメン、ゴメン、今のは単なる例え話だから。何も危害は加えないから、とにかく大人しくしてって」
「本当に?」
訝しがってはいるものの、とりあえず頷くフラムの顔を見て、暴れるのは止めてくれた。
「やっと止まってくれた。それにしても、こっちではダルメキアの事を外界って言うのね。そもそもこの世界の住人じゃないってよく分かるわね」
「何となく、感じで分かるんだ」
「それより、言葉が通じてるでヤンス」
「ベスティオが喋ってる!?」
「ベスティオ? 魔獣の種類かしら。それとも魔獣そのものの事かしら。どちらにしろ、こっちでも喋る魔獣って珍しいんだ」
吹き出しそうなフラムの顔がパルに向く。
「オイラはどうせ珍獣でヤンスよ」
パルはむくれてそっぽを向く。
「ほら拗ねない、拗ねない。いつもの事でしょうに。でも、本当に話が通じてるみたいね。他の人も話せるの?」
少年は首を横に振る。
「喋れる人もいるし、喋れない人もいる。俺は小さい頃から父ちゃんに外界の言葉を教わったから。父ちゃんはその昔、外界から来た人間に言葉を教わったって聞いた」
「へえ~、そうなんだ。それにしても、先生が言っていた通り、本当に魔界にも人間が居るんだ……」
「この世界の名前はエンドラドだ。魔界ではない」
「エンドラド? 名前もあるんだ。人が居るなら当然か。名前と言えば、自己紹介がまだだったわね。私はフラム。で、こっちが━━」
「パルでヤンス」
まだむくれたままのパルに、フラムは呆れる。
「俺はトゥルムだ」
「そう、トゥルムって言うんだ。じゃあトゥルム、一つ訊くけど、ここから北って分かる?」
「訊きたい事ってそんな事か?」
「時間があればもっと色々な事を訊きたい所だけど、今は先を急ぐから」
「北か。確か方向の事だったな。でも、どこが北かは俺には分からない」
「そうよね。方向の概念がこちらと違うでしょうから。困ったわね……あっ、そうだ! ここから一番近い私達の世界を繋ぐ出入り口って分からない?」
「フラム……」
「それなら分かるぞ」
「そう、それならそこまで案内して欲しいんだけど」
「フラム……」
「さっきから何なのよ」
肩にとまって頬を突っつくパルに、トゥルムと話していたフラムのムッとした顔を向ける。
「こっちは大事な話をしてるのに、いつまでむくれてんのよ」
「そうでないでヤンス。後ろでヤンスよ」
「後ろ?」
後ろを振り返ると、さっきの得体の知れない魔獣が、怒り心頭の表情で今にも襲って来ようとしていた。
横に向き直ると、トゥルムの姿はなく、既に少し前を走っていた。
「ちょっと待って!」
慌てて走り出すフラムを、再び魔獣が追い掛ける。
「何で早く言わないのよ!」
「言おうとしたのに聞かなかったでヤンスよ!」
「何でこうなるのよ!」
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