炎の魔獣召喚士

平岡春太

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第九章 サバイバル

 第五話 それぞれの戦い

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「フィール!」

 空を飛んでいたフィールが、フラムの呼ぶ声に招かれて降下して来る。

「私はあいつを何とかします」
「私も行きたい所ですが、残った者達を避難させないと、被害が甚大になりかねませんからね」
「それなら私がフラムと行こう」
「先生!」

 ビエントを乗せたグリードが、フラム達の元に舞い降りて来た。

「あなたは何処で油を売っていたのですか?」
「これはまた手厳しい。随分としつこい奴に捕まってしまってな。骨が落ちて来てようやく解放された所だ」
「体のいい言い訳ですね」
「ほう、そちらも随分と大変だったようだが?」
「あらあら、いつものが始まりそうね」
「あの二人は昔からでヤンス」

 再び一触即発のビエントとアインベルクの間に、慌ててシャルロアが割って入る。

「お二人とも、こんな時にお止め下さい」
「そうですね。では、シャルロアは私と残る人々の避難に尽力なさい」
「分かりました」
「では、我々も行こうか」

 ビエントを乗せたグリードが上昇する。

「シャルロアが居て助かったわね」
「シャルロアが一番大人でヤンス」

 その瞬間、飛んで来たアインベルクの鋭い視線を感じ、パルは慌ててフラムの頭の後ろに隠れる。
 フラムもとばっちりを受けてはと、フィールに飛び乗って上昇させる。

「この戦いが終われば楽しみですね」
「お母様……」

 苦笑いするシャルロアの足元で、小さなオロドーアも慌てて身を隠す。

「おふざけはこれぐらいにして」
「おふざけなんですか……?」
「こちらも動きますよ。まず、私がジェモグリエの動きを止めます。その間にあなたは避難の指示を」
「分かりました」

 アインベルクが錫杖を地面に突き立てると、そこから氷の道が地面を走り、一気にジェモグリエの元に到達する。
 前足を振り上げ、新たなる犠牲者を生み出そうとしていたジェモグリエの足下から徐々に凍りつき始め、足を振り下ろすのを止める。

「今のうちにここから離れて下さい!」
「何で俺達まで助ける? 俺達は敵だぞ」
「今は敵味方は関係ありません。ケイハルトはあなた達を味方とは思っていない。現状でそれが分かるはず。これ以上の犠牲は敵であろうが味方であろうが出してはいけません」

 ケイハルトの部下達は戸惑いを見せるが、今までの戦い方を見るとシャルロアの言葉が是か非かは直ぐに理解し、戦線を離脱して行く。
 アインベルクの冷気によってジェモグリエの体は下方から徐々に上部へと凍り付いて行く。しかし、ジェモグリエが軽く身悶えするだけで氷は全て砕け散ってしまう。

「さすがに竜魔獣の上位魔獣となると簡単に動きを止められませんか。ではシャルロア、行きますよ!」
「はい、お母様!」

 アインベルクとシャルロアが同時に錫杖を地面に突き立て、二方向から地面を走る氷の道がジェモグリエに襲い掛かる。
 再び足元から凍り始めるが、先程以上に凍るスピードが早い。

「これでもいつまで持つか。早く、お願いしますよ」

 見上げる先にはフィールとグリードが、シュレーゲンが乗るグリードの元に辿り着いた所だった。

「これはこれは、五賢人と五賢人の弟子がここまでわざわざ私に会いに来られるとは、光栄ですね」
「ただ会いに来たわけじゃないわよ」
「こいつが魔界の住人か」
「ほう、分かりましたか。まあ、死魔獣を使っている以上、遅かれ早かれでしょうけど」
「随分と大変な事してくれるじゃないの」
「せっかくフラムが苦労して倒したんでヤンスよ」
「それはそれは、あなたがこのジェモグリエを? ルディア亡き今、誰が倒したのかと思っていましたが、まさかあなたとは。どうやって倒したか知りませんが、竜魔獣の上位魔獣を倒すとは、褒めて差し上げましょう」
「あんたに褒めてなんかいらないわよ。今度こそ逃がさないんだから」
「逃げる? それもいいかもしれませんね。ですが、せっかくのジェモグリエオモチャを置いていけませんしね」

 シュレーゲンが言い終えるのが先か、ビエントがグリードの背上から突き出した三叉戟が突風を巻き起こし、シュレーゲンに襲い掛かる。
 不意の一撃も、シュレーゲンの目の前に漆黒の魔獣召喚陣が現れ、突風はその中へと消えてしまった。
 更にフラムが乗るフィールの少し前に漆黒の魔獣召喚陣が現れ、その中からビエントが繰り出した突風が飛び出し、フラムとパルに襲い掛かる。
 驚きつつもフィールを旋廻させ、何とか躱すも、パルは飛ばされてしまった。

「危な!?」
「なるほど、飛び道具はこちらに返って来ると言う訳か。ならば!」

 ビエントが乗るグリードが猛然とシュレーゲンが乗るグリードに向かって飛翔する。
 楽しげに笑みを見せるシュレーゲンの右側に漆黒の魔獣召喚陣が現れる。
 伸ばした右手が魔獣召喚陣の中に消え、再び引き出されたその手には、剣が握られていた。

「さて、少しの間、遊んで差し上げましょうか」
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