炎の魔獣召喚士

平岡春太

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第九章 サバイバル

 第七話 意外なる結末

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 少し不釣り合いな長めの剣を持った小柄な少年が立っていた。
 その隣には、これもまだ子供と思われる小柄な雷魔獣ライディオスが居たが、血塗れの魔獣の肉を貪り食っている最中だ。

「そのライディオスは手前の魔獣か?」

 思わず口を吐いた言葉だった。
 年端も行かない少年が一人で大人が持つような剣を持っている異様さ。
 子供のライディオスとは言え、目の前の少年が召喚したか野生のものに操縛の印を掛けたであろうこと。
 そして何より、ライディオスが喰らっているのが自分が求めていた特異種のランドルであるに違いないと言う事が口を動かせた。
 ヴェルクに向けられたその目は、とても少年のものとは思えない冷たく擦れていた。
 何も言わず、その場を去ろうとするが、

「だから待てって言ってるだろうが!」

 怒るよりも先に走り出していた。
 鞘から剣を抜き、駆け寄った少年に剣を振り下ろした。しかし、とても少年の動きとは思えぬ速さで振り返った少年の剣の閃きに、剣を振り下ろす前にその動きはぴたりと止まってしまった。
 胸元に一筋の傷が浮かび上がって激しく血が吹き出し、ヴェルクはその場に倒れてしまった。

「て、手前、な、何もんだ?」
「ライオだ」
「何だ。口は聞けるんじゃねえか…………」

 それを最後に意識は薄れて行った。




「幸か不幸か、たまたま通りかかった近くの人間に助けられて俺は何とか命は取り留めたが、戻った時にはシエイナは……あの時に死ねていたらと何度思ったことか」

 アックスの圧力でそれを剣で受けるライオの足元の地面に亀裂が走る。
 次の瞬間、ライオの剣が激しくスパークし、ヴェルクの体全体を包み込む。しかし、ヴェルクは苦しむどころか涼しい顔で一笑に付す。

「無駄だ。あの時の俺なら気を失ってひっくり返っていただろうが、俺は元々地の魔力を有しているんだぜ。今の俺は雷撃を地面に流す術を知ってるんだ。属性の相性は俺の方が上だ」

 横薙ぎに払ったアックスの一撃は、ライオが飛び退って躱した。

「言っておくが、これは怒りや恨みじゃねえ。あの時感じたのは、それ以上にあんなガキに手も足も出ずに一撃でやられた自分への情けなさだった。御蔭で属性の暴走も起こさずに済んだぐらいにな。全く怒りや恨みがなかったかと言やあ嘘になる。シエイナには悪いが、あんなガキにやられたまま死ねるかって、絶対に見返してやるって、その一心でここまで来たんだ。その為なら何でもやってやるってな」

 アックスをライオに向ける。

「十傑の話を聞いて、自分に一番合いそうな凄い武器を手に入れる為にこいつも掻っ払って来た。少し名を馳せた頃、五賢人のケイハルトが更に強くしてくれるからと、シュレーゲンの誘いに乗って部下にもなった。そしたらどうだ? 手前が現れた。それも、ただの部下じゃなく息子ときたもんだ。こんな偶然があるもんか。ええ?」

 再び駆け寄ったヴェルクのアックスが休む間も与えずにライオを襲うが、そのことごとくは空を切る。
 更に上空から降りて来たジェモグリエの足が二人の間を割る。

「邪魔すんじゃねえよ!」

 ヴェルクの大きく振り込んだアックスから一陣の風が吹き出し、刃となってジェモグリエの体に傷をつける。
 ジェモグリエの双頭が悲痛な声を上げ、足を踏み鳴らして暴れて地響きを起こす。

「全く、これだけでかいと邪魔でしかねえな。さあ、再開しようじゃねえか」

 再び対峙したライオは、剣を地面に突き刺した。

「何のつもりだ?」
「殺したいなら殺せばいい。俺はもう、抵抗はしない」
「手前こそふざけてんじゃねえか。何を聞いていやがった。俺は実力で手前を超える為にこれまで色々やって来たんだぞ。無抵抗な手前を殺して何になる?」
「お前と会った時の俺は、ただ単に生きる為だけに魔獣を狩り続けていた。その内に俺は何の為に生まれたのかと疑念が芽生え、俺にも生まれて来た理由があるのではないかと、今まで生きて来た。だが、誰が味方で誰が敵か、肝心な生まれて来た理由も未だに分からず仕舞いだ。この先も変わらないだろう。だったらここで全てを終わらすのも同じ事だ」

 ヴェルクの大きな笑い声が響き渡る。

「何にも考えてねえのかと思っていたら、色々と考えてんじゃねえか。ただ、興覚めだな。そこらの弱い人間と何ら変わらねえ。生きるのに理由なんていらねえんだよ。必死に生き、自分が満足できりゃあそれでいいだろうが! まあ、手前の事だ。一度言った事は曲げねえだろうな。だったら望み通り、楽に殺してやるよ!」

 駆け出そうとしたヴェルクの動きが止まった。
 驚愕に染まった顔を少し下げると、自らの胸元から剣の刃が突き出している。

「そうされては私が困るのだよ」

 第三者の声に顔を後ろに向けると、ケイハルトが立っていた。
 ケイハルトの残された右手が握る剣が、ヴェルクの体を貫いていた。
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