炎の魔獣召喚士

平岡春太

文字の大きさ
188 / 208
最終章 戦いの果てに

 第一話 雷帝の召喚

しおりを挟む
 上空に渦を巻いて暗雲が垂れ込め、そこに巨大な魔獣召喚陣が輝きを見せる。

「またでっかい召喚陣ね」
「さっきのジェモグリエのと同じぐらいでヤンス」
「さっきみたいな魔獣を召喚するんでしょうか?」

 立ち止まって上空を見上げるフラムとパル、そしてシャルロアの元に、

「上を見ている場合ではありませんよ!」
「ここを離れるぞ!」

 ビエントとアインベルク、そしてフリードが向かって来る。

「え、何で? 今ならケイハルトを斬れるでしょう」
「何か知らないけど、危ないんだとよ」

 訳が分からずも、フラム達も踵を返してアインベルク達と共に走り出した。
 魔獣召喚陣を作り、魔獣を召喚するまで魔獣召喚士自身は無防備になる。
 その隙を突かれて命を落とした魔獣召喚士も多々いる。
 その為、他の魔獣召喚士や剣士とコンビやパーティーを組む者も少なくない。
 フラムにとってはパルがそれに当たる。
 そんな事もあり、フラムと同じ考えを持つケイハルトの近くに居る者達が、その隙を狙おうとケイハルトに駆け寄って行く。

「無知なる馬鹿どもが」

 不敵なる笑みを見せるケイハルトが剣を地に突き立てると、その体全体がスパークを始める。
 一瞬の出来事であった。
 それぞれに武具を構えて襲い掛かって来た数人に、ケイハルトの体から雷撃が飛び出して直撃する。
 体を激しく震わせてその場に白煙を上げて倒れた全ての者が、二度と立ち上がる事はなかった。
 誰かが召喚した魔獣達も次々と襲い掛かって行くが、皆同じ様に雷撃を受けて返り討ちに会い、一撃の下に撃沈する。
 更に上空で渦を巻く雲に浮かぶ魔獣召喚陣から幾筋もの落雷が発生し、それをまともに喰らった者達が、焦げた屍と化して倒れて行く。
 ようやく自分が居る場所が危険だと感じ、他の者達も慌てて逃げ出すが、落雷はそれを許さない。

「逃げろ、逃げろ。生き延びたとしても結果は同じであろうがな」

 ケイハルトの所から離れる様に駆けていたビエントの足が ある程度離れた所でようやく止まった。

「よし、これだけ離れれば問題なかろう」
「おっかなかったでヤンス」
「あれがケイハルトの力?」

 フラムの問いにアインベルクは首を振る。

「あれは今ケイハルトが召喚しようとしている魔獣の力です」
「そうだ。その召喚術を発動すれば、術者に危害を加えようとする者に鉄槌を下す」
「じゃあ、一度発動すれば、その魔獣が召喚されるまで止める術がないってこと? そんな魔獣って……」
「雷帝です」
「雷帝……ライディシュラーク…………」

 見上げた渦を巻く暗雲は、戦いの行方を暗示するものか、それとも━━。

「何年振りだろうか。お前をこのダルメキアに召喚するのは。さあ、思う存分暴れさせてやろうぞ」

 ケイハルトは胸元で印を組む。

「魔界に君臨せし竜魔獣、その中において雷の頂に君臨する雷帝よ。開かれし門を潜り出でし、今ここにその雄姿を現して我が命に従え」

 組んでいる印が形を変える。

「出でよ、雷帝ライディシュラーク!」

 空に浮かぶ魔獣召喚陣が輝きを増し、雷鳴が召喚を喜ぶようにリズムを奏でる。

「何、この寒気を感じるような魔力は?」
「フラム、怖いでヤンス」

 口にしたパルだけではなく、シャルロアも少し体を震わせている。

「俺は何も感じないぞ」

 フラムとパルの冷ややかな目がフリードに向けられる。

「こういう時はあんたの鈍さが羨ましいわね」
「でヤンス」
「それ、絶対腐してるよな」

 そんな遣り取りをしている間に、渦を巻く雲の下に輝く魔獣召喚陣から、巨大な何かがゆっくりと姿を現した。
 鋭い爪が生えた三本の指が見える足先から、その黄金色の肌が徐々に降りて来る。

「何だ、あれ……!?」

 完全に姿を現したライディシュラークに、フリードも驚かずにいられなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

処理中です...