炎の魔獣召喚士

平岡春太

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最終章 戦いの果てに

 第七話 炎帝の召喚

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 地帝が口から吐き出した岩の塊を、雷帝の頭上に乗るケイハルトも目撃していた。

「まさかルシェールが来るとはな。戦いには無頓着な奴だと思っていたが、まあいい。先程は不意を突かれたので喰らってしまったが、来ると分かっていれば、雷帝には止まって見えるわ」

 とは言え、雷帝の巨躯を吹っ飛ばすほどの大岩が尋常ならざる速さで飛んで来る。
 それを雷帝を巡らせて簡単に躱そうとした時、背後に廻っていた風帝が吐いた突風が襲い掛かる。

「甘いわ!」

 更にそれを上廻る速さで雷帝は地帝と風帝の攻撃から軽々と逃れる。
 大岩と突風が衝突し、大岩が砕け散る。

「挟撃か。考えたものだ。だが、雷帝を甘く見過ぎだ。ん?」

 風帝の頭上に居るビエントは、次の動作に移っていた。
 頭上で激しく廻転させた三叉戟が突風を巻き起こし、雷帝の周りを取り囲む。更に先程砕けた大岩の破片を巻き込み、雷帝とその頭上に居るケイハルトに襲い掛かる。

「もとからこれが狙いか。ライディシュラーク!」

 先程アインベルクの雹の様に、雷帝が放電して渦を巻く突風に巻き込まれた大岩の破片を砕こうとするが、放電は破片に吸い込まれてしまう。

「残念だな。雷と地の力は相性が悪い」
「小細工を。こんなもので私は倒せぬぞ」

 ケイハルトは襲い来る大岩の破片を剣で軽々と弾いてみせる。

「倒せないのは先刻承知よ。これで少しは時間が稼げよう。後は頼むぞ、アインベルクよ」

 氷帝は既に戦列を離れていた。

「氷帝がこっちに来るでヤンス」
「何かあったのかしら?」

 直ぐにやって来た氷帝が巻き起こす風圧に、フラム達は必死に堪える。

「凄い風だな」
「それはこの大きさだから」

 舞い降りた氷帝の頭上から、体を上手く伝ってアインベルクが降りて来た。

「お母様、ルシェール様が来て下さったのですね」
「分かっています。それより今は急を要します」
「何かおありに?」
「ルシェール様が来てくれても、勝てる見込みがないとでも?」

 フラムの問いは的を射ていたのか、アインベルクの表情に影を落とす。

「風帝、氷帝、地帝、この三匹は守りの魔獣。それはケイハルトも知るところです。攻撃を主とする雷帝の動きを止める事は出来ても倒すまでは正直難しいでしょう。倒せるとすれば同じ攻撃を主とする炎帝しか居ません」


 今度はフラムの表情が曇る。

「それは分かりますけど、師匠はケイハルトに殺されて炎帝を召喚するのは不可能ですよ」
「いえ、ヴァルカンは既に炎帝をあなたに譲渡しているのですよ」
「私に?」

 全ての視線がフラムに集まる。

「いやいや、譲って貰ってませんよ」
「バンディオ━━この言葉に聞き覚えはありませんか?」
「バンディオ? そう言えばさっきケイハルトがライオに  あれ、前にも聞いた事があるような…………そうだ。確か師匠が死ぬ間際に私に同じ呪法を。でもあれは、パルを私に譲る呪法だって」
「細かい説明は後廻しです。とにかく召喚に入りなさい。一刻を争うのですよ」

 当然ながら躊躇ちゅうちょするも、シャルロアのすがるような眼と、パルとフリードは…………戦況を考えると答えは出た。

「分かりました」
「おいおい、さっきのは何だよ」
「何か気に障るでヤンスよ」
「とりあえず開けた場所に移動しないと」
「無視か……」
「でヤンス……」

 パルとフリードは揃って肩を落とす。

「移動する必要はありませんよ」
「でも、ここで召喚するとみんなが」
「先程も説明しましたが術士を害するものが召喚陣に入れば排除の対象になるだけです。そうでなければ問題ありません」
「でも、ビエント様とアインベルク様は移動したじゃないですか」
「あれは、風帝と氷帝の召喚陣が重なれば不測の事態が起こる事を避ける為に離れただけです」
「なるほど」

 確かに、風帝と氷帝を召喚した時、少なからず召喚陣の範囲内に人は居たはずだが、危害を加えられた形跡はない。

「さあ、召喚を。呪言は分かりますか?」
「師匠が炎帝を含めて召喚出来る魔獣の呪言は教わってます。まさか私が炎帝を召喚するとは思ってもみませんでしたけど」
「さすがはヴァルカンです。大事の事を考えていたようですね。では、頼みますよ」

 ヴァイトを二本に分けて鞘に戻したフラムは、未だに半信半疑ながらも右手を天に掲げた。

「アルシオンボルトーア!」

 フラムの上空を中心に分厚い雲が渦を巻き、巨大な魔獣召喚陣が現れた。
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