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第二章 里帰り
第一話 師匠
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魔獣召喚士のフラムは、小さな竜魔獣パルを肩に乗せ、薄暗い洞窟を歩いていた。フラムの手には数本の花が握られている。
「ここに来るのも久しぶりね」
「あの時はフラムも泣いてばかりいたでヤンス」
「当然でしょう。師匠は私の親も同然なんだから」
洞窟の奥が徐々に明るさを帯び始め、少しして洞窟を抜けた。
沢山のお墓が並んでいた。右を見ても左を見ても、何処までも墓が点在している。
「おお、フラムじゃないか。帰ってたのか?」
一人の男が手を振りながらフラムに向かって来る。
「あ、ダリルさん、元気?」
「もちろんさ。お前さんも元気そうで何よりだ。パルも元気か?」
「元気でヤンス」
「おお、そりゃあ良かった。ここに来たって事は、師匠に挨拶して行くんだろう? ちゃんとキレイにしてあるぞ」
ダリルはこの広大な墓場の墓守をしていた。
「師匠に会いに、他に誰か来ませんでした?」
「そりゃあ、お前、ヴァルカン様は五賢人の一人だからな。お参りに来る人は絶えんさ。墓に行ってみれば分かるぞ」
「墓に?」
ダリルと別れ、少し奥に進むと、少し小高くなっている辺りの頂に、ひっそりと一つだけ墓があった。
「これは……!」
墓の周りはダリルが言っていた通り雑草一つなく、綺麗にしてあるのだが、墓石の前には数え切れない程の献花が置かれている。
「さすがは師匠でヤンスね」
「そうね」
墓石には『ヴァルカン・ブロージオ ここに永眠す』と彫られている。その下に彫られている日付は二年程前だ。
フラムは数多く置かれている献花の中に花を手向け、片膝を地に落として手を合わせ、黙禱する。
パルもフラムの肩で手を合わせ、黙禱する。
「お久しぶりです、師匠。まだいい報告は出来ませんが、必ず……」
それは二年程前……。
「師匠! 師匠!」
フラムは倒れている男性の上半身を起こしていた。肩にはパルもとまっている。
男の名はヴァルカン、フラムの師匠であった。
ヴァルカンの腹部には大きな傷があり、多量の出血が見られる。その口からも血が流れていた。
「師匠!」
「泣くでない、フラムよ。お前に教える事は殆んど終えている。これからは一人でも十分やって行けるだろう」
「嫌です、師匠。まだまだ教わる事が一杯あるんですから」
「相も変わらずわがままな子だ。もうそろそろ私も休ませてくれまいか」
「嫌です! 絶対に!」
胸元に顔を埋めるフラムの頭を、ヴァルカンはそっと撫でる。
「本当に困った子だ。ちゃんとパルも居るではないか」
「こんな魔獣かどうか分からない奴、居ても居なくても一緒よ」
「無茶苦茶言うでヤンスよ」
文句を言うパルの目からも、涙が流れている。
「フラム、手を貸しなさい」
「手?」
「早くしなさい!」
語気を強めたヴァルカンに、フラムは驚きつつ体を起こして手を差し出した。
ヴァルカンはその手を握る。
「バンディオ」
フラムの手を握るヴァルカンの手が光を放つ。しかしそれは、直ぐに消えてしまった。
「今のは?」
「これでパルは正式に、お前の魔獣になった」
「どう言う事ですか? どうしてわざわざそんな」
「パルを大事にするんだぞ。パルもフラムを頼む」
「ご主人……」
「フラムよ、もう一度顔を……」
ヴァルカンは目の前に居るはずのフラムとはあらぬ方に手を伸ばす。
「師匠、私はここです」
フラムはヴァルカンの手を取り、顔に手を当てる。
「私の剣も、お前に託す。お前は剣だけはまだ……まだ……だ…………」
ヴァルカンは笑みを浮かべ、それ以上喋る事も、動く事もなかった。
「師匠……師匠! 師匠!! 師匠!!」
声が枯れるまで叫び、涙が流れなくなるまで泣き、悲しみは深く、癒える事のない絶望がフラムの心を締め付けた。
墓の前で目を開けて立ち上がったフラムの顔は険しかった。
「ここに来るのも久しぶりね」
「あの時はフラムも泣いてばかりいたでヤンス」
「当然でしょう。師匠は私の親も同然なんだから」
洞窟の奥が徐々に明るさを帯び始め、少しして洞窟を抜けた。
沢山のお墓が並んでいた。右を見ても左を見ても、何処までも墓が点在している。
「おお、フラムじゃないか。帰ってたのか?」
一人の男が手を振りながらフラムに向かって来る。
「あ、ダリルさん、元気?」
「もちろんさ。お前さんも元気そうで何よりだ。パルも元気か?」
「元気でヤンス」
「おお、そりゃあ良かった。ここに来たって事は、師匠に挨拶して行くんだろう? ちゃんとキレイにしてあるぞ」
ダリルはこの広大な墓場の墓守をしていた。
「師匠に会いに、他に誰か来ませんでした?」
「そりゃあ、お前、ヴァルカン様は五賢人の一人だからな。お参りに来る人は絶えんさ。墓に行ってみれば分かるぞ」
「墓に?」
ダリルと別れ、少し奥に進むと、少し小高くなっている辺りの頂に、ひっそりと一つだけ墓があった。
「これは……!」
墓の周りはダリルが言っていた通り雑草一つなく、綺麗にしてあるのだが、墓石の前には数え切れない程の献花が置かれている。
「さすがは師匠でヤンスね」
「そうね」
墓石には『ヴァルカン・ブロージオ ここに永眠す』と彫られている。その下に彫られている日付は二年程前だ。
フラムは数多く置かれている献花の中に花を手向け、片膝を地に落として手を合わせ、黙禱する。
パルもフラムの肩で手を合わせ、黙禱する。
「お久しぶりです、師匠。まだいい報告は出来ませんが、必ず……」
それは二年程前……。
「師匠! 師匠!」
フラムは倒れている男性の上半身を起こしていた。肩にはパルもとまっている。
男の名はヴァルカン、フラムの師匠であった。
ヴァルカンの腹部には大きな傷があり、多量の出血が見られる。その口からも血が流れていた。
「師匠!」
「泣くでない、フラムよ。お前に教える事は殆んど終えている。これからは一人でも十分やって行けるだろう」
「嫌です、師匠。まだまだ教わる事が一杯あるんですから」
「相も変わらずわがままな子だ。もうそろそろ私も休ませてくれまいか」
「嫌です! 絶対に!」
胸元に顔を埋めるフラムの頭を、ヴァルカンはそっと撫でる。
「本当に困った子だ。ちゃんとパルも居るではないか」
「こんな魔獣かどうか分からない奴、居ても居なくても一緒よ」
「無茶苦茶言うでヤンスよ」
文句を言うパルの目からも、涙が流れている。
「フラム、手を貸しなさい」
「手?」
「早くしなさい!」
語気を強めたヴァルカンに、フラムは驚きつつ体を起こして手を差し出した。
ヴァルカンはその手を握る。
「バンディオ」
フラムの手を握るヴァルカンの手が光を放つ。しかしそれは、直ぐに消えてしまった。
「今のは?」
「これでパルは正式に、お前の魔獣になった」
「どう言う事ですか? どうしてわざわざそんな」
「パルを大事にするんだぞ。パルもフラムを頼む」
「ご主人……」
「フラムよ、もう一度顔を……」
ヴァルカンは目の前に居るはずのフラムとはあらぬ方に手を伸ばす。
「師匠、私はここです」
フラムはヴァルカンの手を取り、顔に手を当てる。
「私の剣も、お前に託す。お前は剣だけはまだ……まだ……だ…………」
ヴァルカンは笑みを浮かべ、それ以上喋る事も、動く事もなかった。
「師匠……師匠! 師匠!! 師匠!!」
声が枯れるまで叫び、涙が流れなくなるまで泣き、悲しみは深く、癒える事のない絶望がフラムの心を締め付けた。
墓の前で目を開けて立ち上がったフラムの顔は険しかった。
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