炎の魔獣召喚士

平岡春太

文字の大きさ
25 / 208
第二章 里帰り

 第五話 ポポ

しおりを挟む
 アンチェンの町は、上空から見ていた通り直ぐ近くにあり、ディコの家も町に入ってさほど遠くない場所に建っていた。

「ポポ?」

 出されたお茶をすすりながら、フラムが首を傾げる。
 テーブルには、家で心配そうに待っていたディコの父親も同席している。

「ええ、あそこに住んでいるフリゴメは、元々はディコのペットだったんです」
「あのバカでかいフリゴメが?」

 それには父親が首を振る。

「いえ、元々はあんなに大きくなかったんです」

 椅子に座っているディコが、寂しそうに片隅に置かれているさほど大きくない空の水槽を見詰めている。

「なるほど、私のフラントと同じ変異種って事か」
「はい、ディコが川で拾って来たんですが、その時はあの水槽より遥かに小さくて。私達もフリゴメは知っていますし、それほど大きくならないだろうと高を括るっていたんですが、直ぐに水槽が追いつかない程に大きくなり、止む無く私が大滝の上から流してしまったんです」
「私に黙って……」

 ディコは涙ぐむ。

「あれ以上大きくなったら家ではとても飼えないんだ。ゴメンよ」
「ディコ、お父さんの気持ちも分かってあげて」
「そのまま海まで流れていけばと思ったんですが……」
「滝壺に居ついてあんなに大きくなったって訳ね」
「はい……」
「なるほどね」

 フラムは腕を組み、目をつむって考え込む。

「いいわ。私が何とかしましょう」
 
 ディコと両親は不思議そうな顔をフラムに向ける。

「どうして関係もないあなたが?」
「それが大ありでヤンス」
「魔獣が喋った!?」

 ディコの両親が声を揃えて驚く。

「またこのくだりね」

 フラムは溜息を洩らす。パルの短い説明をして、直ぐに本題に戻る。

「元々私はそのポポの髭を求めてここに来たんです」
「髭を?」
「ええ、仕事の依頼で必要なようなので」
「そうですか」
「でもそれって、ポポを殺すってこと?」

 ディコが不安そうな声を洩らす。

「ああ大丈夫、心配しないで。欲しいのはポポの髭だけだから。フリゴメの髭は斬ってもしばらくして伸びてくるはずだし、ちゃんと傷付けないように斬るからね」
「本当?」

 頷くフラムの笑みを見て、ディコはようやく安心したようだった。

「ただ、あそこは警備が厳しいですよ」
「皮肉にもあれだけ大きくなったポポが観光資源の一つになってしまっていて、ポポに近付く事も厳しくなってしまって。ディコもポポが大きくなるまでは近くに行って見に行っても余りとがめられる事もなかったんですが、最近特にポポを捕獲しようとする人が多くなって来て、警備が強化されたんです」
「多分、目的は私と同じでしょうね。まあ、警備の方は後で考えるとして、とりあえず観光客は居ない方がいいんだけど」
「それなら、あと一時間程すれば観光できる時間は終わると思うんですけど」
「なら、早く動いた方がよさそうね。あの、川の下流に少し開けた土地がありませんか?」
「土地ですか? それなら少し下流にあると思うんですが」
「私が案内する」

 真っ先に声を上げたのはディコだ。

「おい、ディコお前」
「ポポを何とかしてくれるって言うんだもん。私も少しは役に立ちたい」

 毅然きぜんとした言葉にも、両親は不安気な顔を見合わせる。

「危険な事はさせませんよ。何かありそうだったら、私が責任を持って守りますから」

 不安が拭えた訳ではないが、フラムの後押しもあってディコが案内する事になった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

処理中です...