炎の魔獣召喚士

平岡春太

文字の大きさ
28 / 208
第二章 里帰り

 第八話 髭の採集完了

しおりを挟む
「フラム! 来る! 来る! 来るでヤンス!」
「わかってるわよ」

 フラムはパルを水面の上にぶら下げたまま、川に沿って下流に走り出した。
 ポポがその後を追って川を下り始めた。

「早く! 早く! 早くでヤンス!」
「だからわかってるわよ」

 少しずつ差を縮めて来るポポに対し、直ぐにドゥーブが開けた大穴が見えて来た。開けられた大きな穴は、直径が一〇〇メートルを超えるもので、深さも五メートル以上はある。
 さすがに五匹のドゥーブも疲れたのか、穴の近くでへたり込んでいたが、先に来ていたディコが一匹のドゥーブの体を弾ませて遊んでいた。

「あ、お姉ちゃん! ポポ!」
「ドゥーブ、もうひと仕事だけ頼むわよ! 川と掘った穴を繋げてくれる! 急いで!」

 へたり込んでいた五匹のドゥーブだが、川と穴を繋ぐのは、ほんの一瞬で遣って退け、川の水が穴の中に一気に流れ込んでいく。

「フラム、もうそこまで来てるでヤンス!!」

 ポポがお尻に何度も咬みつこうとするのを、パルは尻尾を引っ込めて躱している。

「これで最後よ!」

 フラムが竿を振り上げると、パルが大きく舞い上げると共にポポが川から飛び上がった。

「食われるでヤンス!!!!」

 大きく口を開けたポポが、パルを丸呑みしようとする寸前、フラムが竿を引っ張り、ギリギリの所でパルは食われるのを逃れた。
 パルを食い損ねたポポは、そのままある程度の水が溜まって来ていたドゥーブが掘った穴の中にダイブした。

「食われると思ったでヤンスよ……」
「少しは信用しなさいよ」
「フラムは釣りをした事があるでヤンスか?」
「もちろん、初めてよ。これを機に始めようかしら」
「二度としないで欲しいでヤンス」

 やがて穴の中に一杯の水が溜まり、川からの流れも止まる。

「ドゥーブ、掘ったばかりで悪いけど、川から流れ込む水が少しになるように埋め直しておいて」

 川を繋ぐ水路を小さくする事で、ポポが川に戻るのを防げる。

「お姉ちゃん」

 パルの体を縛るロープを解いているフラムに、ディコが寄って来た。

「ここに居ればいつでもポポに会えるでしょう」
「うん。ありがとう」
「喜んでるところ悪いんだけど、ポポの髭を貰わなきゃいけないんだけど。どうしたらポポに近寄れるかな?」
「ちょっと待ってて」

 ディコは巨大な池となった水辺に立ち、両手を口に当てる。

「ポポ!」

 まだ濁りのある水の中に大きな影が浮かんだのも束の間、ディコの目の前の水が大きく盛り上がり、ポポが姿を見せてディコに向かって大きな口を開ける。

「ディコ、危ない!」
「心配しないで」

 直ぐに口を閉じたポポは、ディコが差し出した手に頭をスリスリと擦り付ける。

「へえ~、慣れたもんね。ちゃんとディコの事を覚えてるんだ」
「もちろん。それより本当に大丈夫? 傷つけないようにひげを斬るなんて」
「それは任せといて」

 フラムは剣を抜く。

「そのまま懐かせといてね」

 真剣な眼差しで剣を構えるその姿は、とある剣士を思わせる。更にポポの髭に剣を一閃したその速さこそその剣士には劣るものの、その剣技はまるでその剣士そのものであった。
 ポポは自分の髭が地面に落ちても斬られたことさえ分からないのか、ディコの手に頭を擦り付けている。

「後は傷口を塞ぐだけね。パル、頼んだわよ」
「オイラがでヤンスか?」
「あんたの炎じゃないと出来ないでしょう」
「怒らないでヤンスか?」
「私みたいに気づかれないようにやれば何とかなるんじゃないの」
「そんなの無理に決まってるでヤンスよ」

 パルは溜息を洩らしてから、ポポの斬り落とされた髭の切り口に向かって炎を吹き付けた。
 ジリジリと音を立て、焼け焦げた臭いがして来た時、ポポが奇声を上げ、パルに目を向けた。

「やっぱりこうなるでヤンス!」

 水の上を飛び廻るパルを、ポポが追い駆け廻す。

「止めるでヤンス! オイラは血止めにやっただけでヤンスよ!」
「何やってんだか。陸の方に逃げればポポも追って来ないでしょうに」
「でも、大丈夫かな。ポポが居なくなったら、大騒ぎになるんじゃあ……」
「だったら後で召喚したフリゴメを上流に十匹ぐらい放り込んでおくわよ。その中に変異種が居れば、また観光名物になるでしょう。それでここのポポも狙われる事もなくなるでしょうから」

 少しして陸地の方に逃げてポポから逃れたパルが、力なくフラフラとフラムの元に飛んで来た。

「フラム、お腹が減ったでヤンス……」

 この日は町に戻り、フラムは宿屋で一泊する事にした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

処理中です...