炎の魔獣召喚士

平岡春太

文字の大きさ
36 / 208
第二章 里帰り

 第十六話 アリューシャの森

しおりを挟む
「すかしてんじゃねえぞ!!」

 集まった男達も次々と剣を抜き、ライオに向かって駆け出した。
 ライオは全く動かず、一人が振るって来た剣を剣で受け止めた。すると、男の方は雷魔獣の電撃を受けたかのように体を震わせて倒れ、体から白煙を上げて、それ以上立ち上がる事はなかった。
 構わずに一人、また一人とライオに斬り掛かるが、剣を合わせた途端に同じ様に倒れ、動かなくなってしまった。
 殆どの者が倒れ伏すのに、そう時間は掛からなかった。
 残った数人も、苦虫を嚙み潰した様な顔でライオを睨み付けていたが、

「覚えてろよ!」

 と在り来たりな台詞を吐き捨てて、その場から駆け去って行った。
 ライオも剣を鞘に納め、歩み出す。

「ちょ━━」

 フラムは呼び止めようとするのを飲み込んだ。

「今の技、ご主人が使っていた技に似てたでヤンス」
「炎と雷の違いはあれ、きっと同じ技よ。魔獣の属性の力を剣に込めて使うなんて技、他にないでしょうからね」
「一体何者なのかしらね?」
「本当に━━わ!? いつの間に……」

 遠目で見ていたはずのイグニアが、いつの間にか直ぐ後ろに立っていた。

「一緒に食事していたみたいだけど、知り合いなの?」
「違うわよ。単なる相席相手よ」

 丁度その時、イグニアのお腹が鳴る。

「忘れてたわ。私もお腹が空いてたんだっけ」

 イグニアはまた店の中に駆け込んで行った。
 フラムは呆れたように首を振りながら、ライオが去って行った方に目を向けた。

「本当に何者なんだろう……」

 この日は日が暮れて来た事もあって、近くの宿屋に泊まる事にした。

 翌朝、宿屋の主人から、アリューシャの森が近くにあると聞き、パルを肩に乗せて歩いて向かっているのだが、その足取りは重く。

「何であんたが付いて来てんのよ」
「目的が一緒なんだからそうなるでしょう」

 隣にイグニアが歩いているせいで。

「本当に暇なのね」
「でヤンスね」

 フラムとパルの溜息が揃う。

「誰が暇ですって。勝手に決めないでよね。私はあんたに一泡吹かすのが第一目標なの。ようやく見つけたんだから、絶対に逃がさないわよ」
「まあ、それはいいとして、今度は帰った方がいいわよ。普通のライジャットでもかなり手強い魔獣なのに、今までの事を考えたら並みのライジャットとも思えないし、炎魔獣しか召喚する事が出来ないあんたじゃあ、身の危険もありうるわよ」
「余計なお世話よ。ライジャットだろうが、ランボルトだろうが、蹴散らしてやるわよ。第一、あんたに心配されたくないわね」
「何を言っても無駄みたいね」

 フラムとパルは呆れ顔を見合わせる。
 やがて教えて貰ったアリューシャの森らしき深い森の中に入った。

「さあ、ここからは勝負よ」

 イグニアはそそくさと森の奥の方に駆け去って行った。

「どうなっても知らないわよ」

 フラムはイグニアとは違う方向へ歩み出す。

「結構広そうだけど、何処にいるのかしら」
「フラム、あっちから声が聞こえるでヤンス」
「ライジャット?」
「一つでないでヤンス。人の声もするし、魔獣らしき声もするでヤンス」
「あのライオとか言う男かしら。先を越されたら大変だわ。とにかく急ぎましょう」

 パルの指示に従って、フラムは声が聞こえると言う方に向かって急いだ。
 急ぐその先から、閃く光が見えると共に、フラムの耳にも聞こえる人の悲鳴が聞こえて来た。ただ、閃く光も人の悲鳴も一つではなく、次々と聞こえて来る。

「これって……!」

 人が倒れている。それも一人だけではなく、木々の間から覗いて見えるだけでも複数人。
 その数人の顔にフラムは見覚えがあった。昨日ライオに絡んでいた男達だ。

「性懲りもなく、仕返しに来たのね。だとしたらあの男が……違う。この傷は剣の傷じゃ━━」
「フラム、後ろでヤンス!」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

処理中です...