炎の魔獣召喚士

平岡春太

文字の大きさ
48 / 208
第三章 氷の国

 第八話 新しい仲間

しおりを挟む
 フラムは立ち上がり、召喚陣を前に印を組む。

「魔獣ヴァルボラガよ。今より我が下僕しもべとなりて、全ての命に従う事を我が最初の命とする……操縛オルチェイン!!」

 召喚陣から幾つもの稲妻の様なものが飛び出し、ヴァルボラガに電撃を与え始める。
 ヴァルボラガも何とか暴れて抗って見せる。
 冷気を吐いていたオロドーアとサウロンは疲れを見せ、冷気が弱くなって来ていた。

「パル、もしもの時は頼むわよ」
「任せるでヤンス」

 ヴァルボラガがフラムの方に向きを変えるのに合わせて、パルも大きく口を開ける。

「オロドーアさんも、サウロンさんも頑張って下さい!」

 依然としてシャルルの背後に隠れるブリーバは力になりそうになく、せめて応援だけでもとシャルルは声援を送る。
 それに応えてかオロドーアとサウロンは残る力を振り絞って吐く冷気を強める。

「私も頑張んないとね!」

 フラムが気合を入れ直すと、召喚陣から出ている稲妻の様なものが威力を増す。
 ヴァルボラガも必死の抵抗を見せ、フラムに向かって大きな口を開ける。その口から炎が洩れかかるが、突然体を纏う炎が消え、それと共に召喚陣から出ていた稲妻の様なものも消え去った。
 それを見てか、オロドーアとサウロンも冷気を吐き出すのを止めた。と言うか、限界だった様子だ。

「どうやら間に合ったようね。今日からよろしくね。ヴァルボラガ」

 ヴァルボラガは一吠えしてから召喚陣の光の中に消え、召喚陣も消え去った。
 それを見届けたサウロンは、少しヘロヘロになりながらも礼を言うように旋廻しながら一鳴きを残し、何処へとなく飛び去って行った。

「時間は掛かったけど、ヴァルボラガが手に入るなんて儲けものね。それも野生だからか、あの強さは特異種みたいだし」
「本当にタダでは転ばないでヤンスね」
「当然。あの依頼の報酬を考えると、労力が見合わないわよ。さてと、あとはそのブリュームの花を探すだけね」
 
 疲れてへたり込んでいたオロドーアが、突然立ち上がってシャルルに何かを訴え始めた。

「ブリュームの花なら生えている場所を知っているそうです」
「へ~、やるじゃないの」

 フラムが背中を叩くと、オロドーアは恐縮する仕草を見せる。
 またオロドーアの案内で付いて行くと、崖の上の方に数本の青い花が咲いている場所に来た。
 軽い身のこなしでオロドーアが崖を上り、数本のブリュームの花を採って戻って来て、シャルルに手渡した。

「何から何までありがとうございます」

 シャルルがオロドーアに対しても深々と頭を下げると、オロドーアも恐縮するように頭を下げる。
 
「魔獣と魔獣召喚士が頭を下げ合う光景って初めて見るわ」
「変わってるでヤンス」

 全てが終わり、サルセッテに戻る為に道を歩いているのだが、

「でもいいんでしょうか? 私が花を採っていないのに、報酬を貰ってしまって……」
「いいのよ。依頼した方は事の経由を知らないんだから。仕事ってそう言うもんよ」
「そうなんですか?」
「違う気がするでヤンス」

 話の途中、フラムとパルが勢い良く後ろを振り返ると、大きな影が横手にある道端に生える木の陰に隠れるのだが、大柄な体が完全に隠れ切ってない。

「付いて来てるわね」
「来てるでヤンス」

 呆れ顔で見詰める先には、完全にバレているオロドーアが木の陰からこちらを見ていた。
 アレリア山から今までずっとこの調子だ。

「どうして付いて来るんでしょうか?」
「決まってるでしょう。シャルルの召喚魔獣になりたいのよ」
「私の?」
「ちょっと待って!」

 突然フラムの表情が険しくなったかと思うと、周りの木々の裏側から、三人の男が姿を現した。

「性懲りもせずにまた来たの?」

 アレリア山に向かう途中でフラム達に襲い掛かって来た盗賊なのだが、フラムとパルにあっさりと蹴散らされてしまった。
 フラムは剣を抜こうとしたが、下品な笑みを見せて歩み寄って来た三人の盗賊達は急に驚いた顔をして、蟻の子を散らすように一目散に逃げてしまった。
 不思議そうに後ろを振り返ると、オロドーアがおっかない顔をして立っていた。

「ほらほら、どうしてもあんたのボディーガードをしたいみたいよ。ヴァルボラガと違って無抵抗でしょうから、早く操縛の印をかけちゃいなさいよ」
「いいんでしょうか?」

 オロドーアが慌てて何度も頷く姿に心打たれ、シャルルは操縛の印を掛ける事にした。
 フラムが言っていた通り、まるで抵抗もなく、操縛の印は直ぐに掛かった。ただ、そのまま召喚陣の中に戻るのを渋ったのだが、その大きな体が目立つので召喚したまま町に戻る訳にもいかず、シャルルに何とか説得されて、召喚陣の光の中に消えたのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

処理中です...