炎の魔獣召喚士

平岡春太

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第四章 動き出す歯車

 第十一話 思わぬ助け

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 一息ついてフラムがふっと横に目をやると、シャルロアも数人に襲われてはいるものの、オロドーアが体を張って守っている。

「あっちも大変そうね」

 手を貸そうかとそちらに向かおうとしたが、近付いて来た拍手が引き留める。

「いやはや、感服しますね」

 五十一番のゼッケンを付けた長髪の男が、風魔獣のグラーディを連れてフラムに歩み寄って来た。

「相手の実力はともかく、実に鮮やかな手際です」
「誰か知らないけど、お褒めいただいていてありがとう。だからって負けてあげないけど」
「そんな甘い考えは持ち合わせていませんよ。ヴァルカン様のお弟子とお見受けして、お手合わせ願えないかと思いましてね」
「あら、良く分かったわね」
「確か、喋る小竜を連れていると聞いておりましたので。そんな珍しい魔獣を連れているのは他に居ないかと」

 それを聞いていた近くに居る観客達が、にわかに騒ぎ始める。

「おいおい、どうやらあの娘、ヴァルカン様の弟子らしいぞ」
「通りで強いはずだ」

 褒め言葉にフラムは顔をほころばせるが、

「でもあれだろう、お金に目がないって話だろう」
「そうそう、金の話があれば、どんなに遠い所でも飛んで来るって、あの金の亡者の」
「ちょっと、ちょっと、好き勝手言っちゃって。お金に目がなくて何が悪いのよ!」
「客と言い争ってどうするでヤンスよ。それに、全部当たってるでヤンス」
「どう言う意味よ」

 睨み合うフラムとパルの姿に、長髪の男はクスクスと笑う。

「実に面白い方々ですね。ますますお手合わせ願いたくなりましたよ」

 男が服の胸元から取り出した短い棒状の物を一振りすると、一気に伸びて槍と化し、更にそれを一突きすると、穂先の刃が三つに分かれ、三叉戟さんさげきに変化した。

「そちらの魔獣はグラーディとは張り合えそうになさそうなので、持ち主同士だけでどうです?」
「あら、随分と優しいのね」
「オイラも負けないでヤンスよ!」
「張り合うのはいいけど、本当に勝てる?」
「ん~」

 凄んで来るグラーディに返す言葉もない。

「へこむこと無いわよ。あんたも十分強いんだから。で、腕には自信があるようだけど、名前は?」
「これは失礼。ラファールと申します」
「ラファールか。聞き覚えはないけど、まあいいわ。私はフラムよ」

 自己紹介も終わり、フラムは剣を、ラファールは三叉戟を構える。
 二人共に向かい合ったまま全く動かず、近くで見ている観客達には短い時間が長く感じる程に息詰まる時が流れる。
 膠着状態を破ったのは、その隙を突いて襲って来た二匹の魔獣であった。
 炎魔獣のフラントがラファールに、地魔獣のボロンゴがフラムに飛び掛かって来たが、それぞれが三叉戟と剣であっさりと一撃の下に吹っ飛ばし、
その先に居た持ち主と思われる魔獣召喚士に激突させ、魔獣ともども気絶させた。
 間髪入れずにラファールが無数の突きをフラムに繰り出して来たが、フラムも剣で弾き、身を翻して躱してみせる。ただ、三叉戟の長いリーチに踏み込む事が出来ず、防戦一方だ。
 そこにまた、一つの影が飛び込んで来て、剣を振るって来た。

「何チンタラやってんのよ!」

 互いに飛び退って分かれて距離を取ったフラムとラファールの間には、イグニアが炎魔獣のフラントを連れて立っていた。

「あんた、何しに来たのよ?」
「えらい言われようね。ここに来るまでも大変だったんだから」

 イグニアがやって来た方には、一本の道が出来ているかのように数人の参加者が倒れて気を失っている。

「これはこれは、お友達でしょうか」
「違うわよ」

 フラムとイグニアの声が揃う。
 と、その時、閉じていた入場口が開き、数人のオルタニア兵が駆け込んで来て、周りを見渡す。

「居たぞ、五十一番はあそこだ!」

 何事かと、観客だけでなく参加者も戦う手を止める事なく注視する中、ラファールを指さした後、険しい顔で駆け寄って来る。

「おやおや、どうやらここまでのようですね」
 
 ラファールは三叉戟を一振りし、元の短い棒に戻して胸元に仕舞うと、指笛を鳴らした。すると、場外から一匹のグリーゼが飛んで来て、ラファールの下に舞い降りて来た。

「ほんのひと時でしたが、有意義な時間でしたよ」

 ラファールはフラムに笑みを残し、グラーディと共にグリーゼの背に飛び乗り、そのまま飛び去ってしまった。
 兵士達も引き返して入場口から去り、扉がまた閉じられた。

「大変失礼しました。今は言った情報によりますと、ただいま去って行った五十一番の人物は、本来の出場者と入れ替わっていたそうで失格とさせて貰います」

  ディユロの説明にも、スタンドのざわつきは収まらない。

「何なのよ、今の奴は?」
「さあ、本来の参加者と入れ替わったって言ってたけど、あの強さ、どうも気になるわ……」

 フラムは一抹の不安を感じずにはいられなかった。
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