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第五章 交差する過去
第一話 始まりの地
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いつものように肩にパルを乗せているフラムの姿は、故郷にあるカチャッカ山の麓にある洞窟の中にあった。
肩を並べて歩くのはアインベルクだったが、いつも連れている従者や護衛の兵の姿はない。
シャルロアの姿もない。
「あの~、聞いていいでしょうか?」
「何ですか?」
「どうしてここに?」
ここに来るように言い出したのはアインベルクだ。
洞窟までは従者や護衛兵と一緒だったが、入り口で待つようにと言い渡した。勿論、従者達は付いて行くと申し出たが、アインベルクが強い口調でこれを制した。
「あなたが知りたがっていたあの氷の中の人物に会わせる為ですよ」
「氷の中の? でも、ケイハルトの仇討ちを辞めない限りは教えないとおっしゃてたんじゃあ。私は辞めませんよ」
「憎しみを持ってやる事に関しては今でも反対ですが、ケイハルト本人が動いている以上、何れは戦う事になるでしょう。ならば、心積もりもあるでしょうし、過去に何があったか、先にあなたには伝えておかなければならないでしょう」
「過去に……」
そうこうしている内に、問題の永久氷壁がある場所にやって来た。
氷を見たフラムとパルは愕然となる。
炎魔獣のフレイバルドを召喚して、その炎をもってしてフラムとパルは死ぬ思いまでして、ようやく表面が解け、中が見通せるようになったと言うのに、今はまた表面が白く濁り、奥までは見通せなくなっていた。
「そんな……」
「これは炎の力では絶対に溶かせませんよ。少し下がってなさい」
フラムが少し下がると、アインベルクは手にしている錫杖を横に向け、その先で氷の壁を軽く叩いた。すると、叩いた辺りから無数の亀裂が壁全体に広がり、氷の壁は轟音と共に脆くも崩れ落ちた。
「凄い……」
「でヤンス……」
「ルディア様亡き今、これが出来るのは私かもう一人のシャルロアぐらいでしょうね」
「でも、だったら何で師匠は依頼書まで残して私にこれを溶かせって言ったんでしょうか?」
「どうでしょうね。生前はあなたの修行の為にやらせていたのでしょうが、依頼書は、ん……本気で炎で溶かせると考えたのか、私の元に来させる為に仕組んだのか、ヴァルカンが亡くなってしまっては、その真意を知る術はありませんね」
アインベルクが目の前に山積みになっている氷の塊の山を、また錫杖の先で軽く叩くと、それぞれの氷の塊は粉々に砕け散り、舞い上がった。それが濃い霧となり、目の前の視界を奪う。
霧は次第に晴れ渡り、山積みになっていた氷はその場から全く消え去っていた。
後には、フラムが氷越しに見た男女二人が倒れている姿があった。
「さあ、あちらに」
アインベルクに導かれ、フラムは倒れている二人の元に歩みを進めた。
「この二人は一体誰なんですか?」
「あなたはもう、気付いているのではないですか?」
フラムはハッとした顔をアインベルクに向ける。
「それじゃあ、この二人が私の……」
「そうです。あなたのご両親です。父親の名はエルベルト・アスカール。母親はリーズ・アスカールという名です」
名前を聞いた刹那、フラムの体を電流が走ったような衝撃を受ける。
「アスカール!? 待って下さい。その名前って!」
「そう、あなたの父親エルベルトは、大賢人ルディア様の息子にして、ケイハルトの弟になります。つまり、あなたはルディア様の孫と言う事になりますね」
「フ、フラムがルディア様の孫でヤンスか!?」
「まさか、そんな……」
フラムはゆっくりと膝から崩れ落ちるようにして地に膝を突き、目の前に横たわる父と母に徐ろに手を差し伸べて体に触れた。
「冷たっ!」
先に触れた父も、後に触れた母も、亡くなっている上に氷の中にいたせいで、その体はこの上なく冷たかった。
「父さん、母さん……」
フラムの目から流れ出した二筋の涙が頬を伝う。
「フラム……」
パルも掛ける言葉がない。
「誰が一体こんな……」
「二人を殺したのはケイハルトです」
「両親もケイハルトが! 兄弟なのに?」
アインベルクは少し目線を上げ、虚空を見上げる。
「何から話せばよいのか……そうですね。全てはここから始まったと言ってもいいかもしれません。そう、ここから……」
肩を並べて歩くのはアインベルクだったが、いつも連れている従者や護衛の兵の姿はない。
シャルロアの姿もない。
「あの~、聞いていいでしょうか?」
「何ですか?」
「どうしてここに?」
ここに来るように言い出したのはアインベルクだ。
洞窟までは従者や護衛兵と一緒だったが、入り口で待つようにと言い渡した。勿論、従者達は付いて行くと申し出たが、アインベルクが強い口調でこれを制した。
「あなたが知りたがっていたあの氷の中の人物に会わせる為ですよ」
「氷の中の? でも、ケイハルトの仇討ちを辞めない限りは教えないとおっしゃてたんじゃあ。私は辞めませんよ」
「憎しみを持ってやる事に関しては今でも反対ですが、ケイハルト本人が動いている以上、何れは戦う事になるでしょう。ならば、心積もりもあるでしょうし、過去に何があったか、先にあなたには伝えておかなければならないでしょう」
「過去に……」
そうこうしている内に、問題の永久氷壁がある場所にやって来た。
氷を見たフラムとパルは愕然となる。
炎魔獣のフレイバルドを召喚して、その炎をもってしてフラムとパルは死ぬ思いまでして、ようやく表面が解け、中が見通せるようになったと言うのに、今はまた表面が白く濁り、奥までは見通せなくなっていた。
「そんな……」
「これは炎の力では絶対に溶かせませんよ。少し下がってなさい」
フラムが少し下がると、アインベルクは手にしている錫杖を横に向け、その先で氷の壁を軽く叩いた。すると、叩いた辺りから無数の亀裂が壁全体に広がり、氷の壁は轟音と共に脆くも崩れ落ちた。
「凄い……」
「でヤンス……」
「ルディア様亡き今、これが出来るのは私かもう一人のシャルロアぐらいでしょうね」
「でも、だったら何で師匠は依頼書まで残して私にこれを溶かせって言ったんでしょうか?」
「どうでしょうね。生前はあなたの修行の為にやらせていたのでしょうが、依頼書は、ん……本気で炎で溶かせると考えたのか、私の元に来させる為に仕組んだのか、ヴァルカンが亡くなってしまっては、その真意を知る術はありませんね」
アインベルクが目の前に山積みになっている氷の塊の山を、また錫杖の先で軽く叩くと、それぞれの氷の塊は粉々に砕け散り、舞い上がった。それが濃い霧となり、目の前の視界を奪う。
霧は次第に晴れ渡り、山積みになっていた氷はその場から全く消え去っていた。
後には、フラムが氷越しに見た男女二人が倒れている姿があった。
「さあ、あちらに」
アインベルクに導かれ、フラムは倒れている二人の元に歩みを進めた。
「この二人は一体誰なんですか?」
「あなたはもう、気付いているのではないですか?」
フラムはハッとした顔をアインベルクに向ける。
「それじゃあ、この二人が私の……」
「そうです。あなたのご両親です。父親の名はエルベルト・アスカール。母親はリーズ・アスカールという名です」
名前を聞いた刹那、フラムの体を電流が走ったような衝撃を受ける。
「アスカール!? 待って下さい。その名前って!」
「そう、あなたの父親エルベルトは、大賢人ルディア様の息子にして、ケイハルトの弟になります。つまり、あなたはルディア様の孫と言う事になりますね」
「フ、フラムがルディア様の孫でヤンスか!?」
「まさか、そんな……」
フラムはゆっくりと膝から崩れ落ちるようにして地に膝を突き、目の前に横たわる父と母に徐ろに手を差し伸べて体に触れた。
「冷たっ!」
先に触れた父も、後に触れた母も、亡くなっている上に氷の中にいたせいで、その体はこの上なく冷たかった。
「父さん、母さん……」
フラムの目から流れ出した二筋の涙が頬を伝う。
「フラム……」
パルも掛ける言葉がない。
「誰が一体こんな……」
「二人を殺したのはケイハルトです」
「両親もケイハルトが! 兄弟なのに?」
アインベルクは少し目線を上げ、虚空を見上げる。
「何から話せばよいのか……そうですね。全てはここから始まったと言ってもいいかもしれません。そう、ここから……」
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