84 / 208
第五章 交差する過去
第四話 魔力による属性魔法の暴走
しおりを挟む
「……それがここで起こった悲劇の全てです。何故そんな事をしたのか、ケイハルトの真意までは測りかねますが、恐らくは抱き続けて来た野心がそうさせたのかもしれません」
「野心?」
「元々ケイハルトがルディア様の跡を継ぎたがっていたのは私を含む五賢人、いえ、ルディア様も薄々感じてはいました。それを考慮してか、ルディア様は若くしてケイハルトをまだ決めかねていた雷の魔獣召喚士を冠する事にしたのです。ケイハルトは雷魔獣の召喚に長けていましたからね。ただ、その事が逆に作用してしまったようですね」
「逆に?」
「あなたも知っての通り、ルディア様はあなたと同じ特異質です。そして、あなたの父エルベルトもまた特異質だったのですよ」
「父さんも……」
「自分が雷の魔獣召喚士に選ばれた事で、ルディア様の後継には、同じ特異質のエルベルトを選んだと勘繰ったのかもしれません。当のエルベルトは逆にまるで野心のない人間だったのですがね。ケイハルトの雷の魔獣召喚士にとの話を凄く喜んでいましたし、自分は家族でひっそり暮せれば良いとこの近くの小さな家で暮らしていた程でしたから。なのにケイハルトの野心は、エルベルトさえ殺してしまえばルディア様の後継者になれるとでも思ったのか、最悪の事態を招いてしまった」
「野心? そんなものの為に父さんと母さんが……」
話を聞く内に涙が流れ出していたフラムの顔には、ケイハルトへの怒りと憎しみが見て取れた。
溜息と共に首を軽く横に振るアインベルクがフラムの頭上に向かって錫杖を一振りすると、空気中の水分が凍って、小さな無数の氷の粒がフラムとパルの頭上に降り注ぐ。
「いてて……」
「痛いでヤンスよ……」
「頭を冷やしなさい。気持ちは分かりますが、その怒りと憎しみは抑えるのです」
「どうしてです? 両親と師匠を殺されて、怒るなと言う方が無理ですよ」
「それでも抑えなさい。あなたも魔法大学校に行っていたなら教えられているはずですよ。魔力による属性魔法の暴走を」
「オイラはとばっちりでヤンスよ」
頭を押さえているパルがぼやく。
「魔獣召喚士となった者は怒りと憎しみを増幅させてはならない。その禁を破れば、その怒りと憎しみが魔力に作用し、己の持つ属性の力が暴発し、自らを滅ぼすであろう━━でしたよね」
「そうです。秘めた魔力、そしてその怒りと憎しみが大きければ大きい程に暴発は大きくなります。あの時、ルディア様がケイハルトを殺し、暴発していれば、このダルメキアそのものが消滅していたかもしれません」
「ダルメキアが……」
「おっかないでヤンス」
「確かに、怒りや憎しみを収めるのは簡単な事ではありません。あのルディア様でさえ、ケイハルトを斬る寸前まで行ったそうですから」
「どうやって抑えたんです?」
「直前に体に変調を来した事もありますが、頭に過ったそうですよ、ケイハルトの家族が」
「ケイハルトに家族が?」
「何処で出会ったのか、あんな男にもアニエと言う妻と、ライオと言う息子がね」
フラムはハッとしてアインベルクを見た。
「ライオ? 今、ライオとおっしゃいました?」
「あなたはライオを知っているのですか?」
「何度か会ってるでヤンス」
「ええ、王位継承戦にも参加していましたし」
「そうですか。血の繋がりでしょうか。とても偶然とは思えませんね」
「あれ? でも確か、ライオの名前はアスカールじゃなくて……そう、ビルニークだったと思うけど」
「恐らくそれは、母親の旧姓でしょう。色々と不都合があるのでそう名乗っているのかもしれません。あなたもアスカールと名乗れるでしょうが、同じ様に不都合もあるでしょうから、そのままの方がいいでしょうね」
「変えろと言っても変えませんよ。師匠の事は親とも思ってますし、名前も気に入ってますから」
「本当でヤンスか?」
「何よ」
フラムとパルは睨み合う。
その姿に、余り表情すら変えないアインベルクが微笑む。
「本当に仲の良いこと。ルディア様があなたを育てるのにパルちゃんを付けて正解だったようですね」
「あれ? パルを召喚したのは師匠ですよね」
「ええ、召喚したのはヴァルカンですが、そう進めたのはルディア様ですよ」
「そうだったんだ……」
「オイラも初めて聞いたでヤンス」
「あら、パルちゃんにはちゃんと話をしたと思いますけど。覚えていないのかしら、この頭は?」
真顔に戻ったアインベルクが、錫杖の飾りでパルの頭を叩き始める。
「痛い、痛い、また始まったでヤンス。痛い……」
「野心?」
「元々ケイハルトがルディア様の跡を継ぎたがっていたのは私を含む五賢人、いえ、ルディア様も薄々感じてはいました。それを考慮してか、ルディア様は若くしてケイハルトをまだ決めかねていた雷の魔獣召喚士を冠する事にしたのです。ケイハルトは雷魔獣の召喚に長けていましたからね。ただ、その事が逆に作用してしまったようですね」
「逆に?」
「あなたも知っての通り、ルディア様はあなたと同じ特異質です。そして、あなたの父エルベルトもまた特異質だったのですよ」
「父さんも……」
「自分が雷の魔獣召喚士に選ばれた事で、ルディア様の後継には、同じ特異質のエルベルトを選んだと勘繰ったのかもしれません。当のエルベルトは逆にまるで野心のない人間だったのですがね。ケイハルトの雷の魔獣召喚士にとの話を凄く喜んでいましたし、自分は家族でひっそり暮せれば良いとこの近くの小さな家で暮らしていた程でしたから。なのにケイハルトの野心は、エルベルトさえ殺してしまえばルディア様の後継者になれるとでも思ったのか、最悪の事態を招いてしまった」
「野心? そんなものの為に父さんと母さんが……」
話を聞く内に涙が流れ出していたフラムの顔には、ケイハルトへの怒りと憎しみが見て取れた。
溜息と共に首を軽く横に振るアインベルクがフラムの頭上に向かって錫杖を一振りすると、空気中の水分が凍って、小さな無数の氷の粒がフラムとパルの頭上に降り注ぐ。
「いてて……」
「痛いでヤンスよ……」
「頭を冷やしなさい。気持ちは分かりますが、その怒りと憎しみは抑えるのです」
「どうしてです? 両親と師匠を殺されて、怒るなと言う方が無理ですよ」
「それでも抑えなさい。あなたも魔法大学校に行っていたなら教えられているはずですよ。魔力による属性魔法の暴走を」
「オイラはとばっちりでヤンスよ」
頭を押さえているパルがぼやく。
「魔獣召喚士となった者は怒りと憎しみを増幅させてはならない。その禁を破れば、その怒りと憎しみが魔力に作用し、己の持つ属性の力が暴発し、自らを滅ぼすであろう━━でしたよね」
「そうです。秘めた魔力、そしてその怒りと憎しみが大きければ大きい程に暴発は大きくなります。あの時、ルディア様がケイハルトを殺し、暴発していれば、このダルメキアそのものが消滅していたかもしれません」
「ダルメキアが……」
「おっかないでヤンス」
「確かに、怒りや憎しみを収めるのは簡単な事ではありません。あのルディア様でさえ、ケイハルトを斬る寸前まで行ったそうですから」
「どうやって抑えたんです?」
「直前に体に変調を来した事もありますが、頭に過ったそうですよ、ケイハルトの家族が」
「ケイハルトに家族が?」
「何処で出会ったのか、あんな男にもアニエと言う妻と、ライオと言う息子がね」
フラムはハッとしてアインベルクを見た。
「ライオ? 今、ライオとおっしゃいました?」
「あなたはライオを知っているのですか?」
「何度か会ってるでヤンス」
「ええ、王位継承戦にも参加していましたし」
「そうですか。血の繋がりでしょうか。とても偶然とは思えませんね」
「あれ? でも確か、ライオの名前はアスカールじゃなくて……そう、ビルニークだったと思うけど」
「恐らくそれは、母親の旧姓でしょう。色々と不都合があるのでそう名乗っているのかもしれません。あなたもアスカールと名乗れるでしょうが、同じ様に不都合もあるでしょうから、そのままの方がいいでしょうね」
「変えろと言っても変えませんよ。師匠の事は親とも思ってますし、名前も気に入ってますから」
「本当でヤンスか?」
「何よ」
フラムとパルは睨み合う。
その姿に、余り表情すら変えないアインベルクが微笑む。
「本当に仲の良いこと。ルディア様があなたを育てるのにパルちゃんを付けて正解だったようですね」
「あれ? パルを召喚したのは師匠ですよね」
「ええ、召喚したのはヴァルカンですが、そう進めたのはルディア様ですよ」
「そうだったんだ……」
「オイラも初めて聞いたでヤンス」
「あら、パルちゃんにはちゃんと話をしたと思いますけど。覚えていないのかしら、この頭は?」
真顔に戻ったアインベルクが、錫杖の飾りでパルの頭を叩き始める。
「痛い、痛い、また始まったでヤンス。痛い……」
0
あなたにおすすめの小説
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる