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第五章 交差する過去
第五話 小さな相棒
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事件が起こった翌日、ルディアは五賢人のケイハルトを除く四人、アインベルク、ヴァルカン、ルシェール、そしてビエントをカチャッカ山の洞窟に招集した。
四人を待っていたルディアの足元では、フラムが笑顔で遊んでいる。
更にルディアの後ろには、分厚い氷の壁があった。ただ、凍らせて間もないのか、氷の中の奥の方に、フラムの両親が倒れている姿が肉眼でも見えている。
異様な状況に、ルディアは早速こうなった状況を自分の知る限りで集まった四人に伝えた。
「あのバカ息子は更に奥に入った所で凍っておる。この事は他言無用だ。頼むぞ」
「何と言う事だ……」
「ケイハルトが野心を抱いている事はここに居る皆が薄々感じていた事だったが、まさかこんな事態を引き起こすとは……」
歎きの言葉を洩らすビエントとヴァルカンだけでなく、アインベルクとルシェールの表情も暗い。
「私が雷の魔獣召喚士にしたばかりに、あ奴の野心に火をつけてしもうたとは。エルベルトとリーズには謝りようがない。特にフラムにはな」
何も知らずに無邪気に動き廻るフラムの姿は、その場に居る者の全ての心に悲しみを与える。
最初はルディアの足元にいたフラムは、ハイハイしながら何故かルシェールの元に近寄って行く。
「何だ? 儂の方に来るな。儂は人嫌いなんだぞ」
「それにしても、エルベルトとリーズまでどうして氷の中に?」
訊いたのはアインベルクだ。
「まだ物心がついておらぬフラムが不憫での。死してしまった事はもう取り返しがつかぬが、大きくなった時に、せめて墓ではなく生きていた時の姿を見せてやりたいと思うてな」
「ですが、それではどうしてこうなったか、事の顛末を話さねばなりませんよ」
次いで訊いたのはヴァルカンだ。
「だから、お前達を呼んだのだ。フラムが大きくなった時、全てを話してもよいかどうかを判断して欲しい」
「私達がですか? ルディア様が判断されればよい事でしょう」
これはビエントだ。
「うむ、そうしたいのは山々だが、私は病に侵されていてな。色々な医者に見せたが、手の打ちようもなく、そう長くもない命だと言う事だ」
五賢人達の表情が驚愕に染まり、その場の空気が一瞬止まったように感じた。
「息子達には既に話してある事だ。そこで、私が死した後はこの氷を壊せるのはアインベルク、お前だけであろう。ただ、その判断をお前一人に押し付けるのも酷と言うもの。だから四人で判断してくれ」
転じて、四人の顔が一様に困ったものになる。
「時間はまだある、ゆっくりと考えてくれ。今はそれよりも、フラムをどうするかだ。私が育てられれば一番良いのだが、妻には既に先立たれ、今話した通り私もいつ倒れてもおかしくない身だ。とは言え、普通の者に私の孫をと言う訳にも行かず、事の顛末を話さねばならぬ事にもなり兼ねないのでな。出来ればお前達の誰かが育てて貰えればとは思うが、こればかりは強制も出来ぬ……」
ルディアは困り顔を伏せる。
「困りましたわね。私はまだエドアールが小さい上に、間もなくもう一人増えるもので」
アインベルクが撫でている自らのお腹は少し膨れ上がっていた。
「おお、アインベルクは身重であったか。そう言って貰えたら、こちらから出向いたものを」
「説明の観点からするとこちらの方がよかったでしょうし、それは良いのです。それより、フラムの事です。お付きの者に任せても良いのですが、王族である以上フラムの素性を明かさねば変な勘繰りであらぬ噂を立てられても困りますし、そうなれば国中にフラムの素性もバレてしまうでしょうから」
「確かに━━いてて……」
足元に纏わりついて鬱陶しいとルシェールが抱き上げたフラムが、ルシェールの顔を引っ張っていた。
「随分とフラムが懐いているようですし、ルシェール、貴方が育てては?」
「馬鹿を言え。お前等も知っての通り、儂は大の人嫌いなんじゃぞ。妻も居らぬのに、どうやって育てろと言うのだ? ビエント、お前はどうじゃ?」
「そうしてやりたいが、今は妻共々もう直ぐ開設される魔法大学校の教師集めで大変でな。とても子育てには手が廻らん。開校を遅らせる訳にもいかんしな」
となると、必然的にその場の視線が残るヴァルカンに集まる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺もルシェールと同じ独り身なんだぞ。育児なんてとてもじゃない」
「ルシェールよりかは良いと思うのだが……おお、そうだ。護衛と遊び相手を兼ねて、フラムに魔獣を付けてはどうだ? 少しは育児も楽になろう」
「魔獣を?」
ルディアの提案に他の四人は首を傾げる。
「丁度打って付けの魔獣がおる。ヴァルカン、ちょっと来い」
「いえ、まだ私は引き受けては━━ルディア様」
否応なくルディアがヴァルカンを伴ってその場を去って少しして、外の方から派手な音が聞こえたかと思うと、更に少ししてルディアとヴァルカンが戻って来たのだが、ヴァルカンの肩には先程まで居なかった小さな魔獣がとまっていた。
「なんじゃい、その小さな竜魔獣もどきは。儂でさえ見たこともないぞ」
「失礼な。オイラも本物の竜魔獣でヤンスよ」
「これはこれは、喋る魔獣とは珍妙な。儂が欲しいぞ」
「なら、あなたがフラムを育てますか?」
アインベルクの痛烈な返しに、ルシェールは慌てて首を降る。
「勘弁してくれ。それだけは御免じゃ」
ヴァルカンが今は地面に座り込んでいるフラムに歩み寄り、その目の前に小竜を下すと、フラムは嬉しそうに小竜の顔を引っ張る。
「どうやら気に入ったみたいだな」
「い、痛いでヤンス」
「パ、パル、パ、パ、パル……」
「丁度いい。お前の名前はパルだ」
四人を待っていたルディアの足元では、フラムが笑顔で遊んでいる。
更にルディアの後ろには、分厚い氷の壁があった。ただ、凍らせて間もないのか、氷の中の奥の方に、フラムの両親が倒れている姿が肉眼でも見えている。
異様な状況に、ルディアは早速こうなった状況を自分の知る限りで集まった四人に伝えた。
「あのバカ息子は更に奥に入った所で凍っておる。この事は他言無用だ。頼むぞ」
「何と言う事だ……」
「ケイハルトが野心を抱いている事はここに居る皆が薄々感じていた事だったが、まさかこんな事態を引き起こすとは……」
歎きの言葉を洩らすビエントとヴァルカンだけでなく、アインベルクとルシェールの表情も暗い。
「私が雷の魔獣召喚士にしたばかりに、あ奴の野心に火をつけてしもうたとは。エルベルトとリーズには謝りようがない。特にフラムにはな」
何も知らずに無邪気に動き廻るフラムの姿は、その場に居る者の全ての心に悲しみを与える。
最初はルディアの足元にいたフラムは、ハイハイしながら何故かルシェールの元に近寄って行く。
「何だ? 儂の方に来るな。儂は人嫌いなんだぞ」
「それにしても、エルベルトとリーズまでどうして氷の中に?」
訊いたのはアインベルクだ。
「まだ物心がついておらぬフラムが不憫での。死してしまった事はもう取り返しがつかぬが、大きくなった時に、せめて墓ではなく生きていた時の姿を見せてやりたいと思うてな」
「ですが、それではどうしてこうなったか、事の顛末を話さねばなりませんよ」
次いで訊いたのはヴァルカンだ。
「だから、お前達を呼んだのだ。フラムが大きくなった時、全てを話してもよいかどうかを判断して欲しい」
「私達がですか? ルディア様が判断されればよい事でしょう」
これはビエントだ。
「うむ、そうしたいのは山々だが、私は病に侵されていてな。色々な医者に見せたが、手の打ちようもなく、そう長くもない命だと言う事だ」
五賢人達の表情が驚愕に染まり、その場の空気が一瞬止まったように感じた。
「息子達には既に話してある事だ。そこで、私が死した後はこの氷を壊せるのはアインベルク、お前だけであろう。ただ、その判断をお前一人に押し付けるのも酷と言うもの。だから四人で判断してくれ」
転じて、四人の顔が一様に困ったものになる。
「時間はまだある、ゆっくりと考えてくれ。今はそれよりも、フラムをどうするかだ。私が育てられれば一番良いのだが、妻には既に先立たれ、今話した通り私もいつ倒れてもおかしくない身だ。とは言え、普通の者に私の孫をと言う訳にも行かず、事の顛末を話さねばならぬ事にもなり兼ねないのでな。出来ればお前達の誰かが育てて貰えればとは思うが、こればかりは強制も出来ぬ……」
ルディアは困り顔を伏せる。
「困りましたわね。私はまだエドアールが小さい上に、間もなくもう一人増えるもので」
アインベルクが撫でている自らのお腹は少し膨れ上がっていた。
「おお、アインベルクは身重であったか。そう言って貰えたら、こちらから出向いたものを」
「説明の観点からするとこちらの方がよかったでしょうし、それは良いのです。それより、フラムの事です。お付きの者に任せても良いのですが、王族である以上フラムの素性を明かさねば変な勘繰りであらぬ噂を立てられても困りますし、そうなれば国中にフラムの素性もバレてしまうでしょうから」
「確かに━━いてて……」
足元に纏わりついて鬱陶しいとルシェールが抱き上げたフラムが、ルシェールの顔を引っ張っていた。
「随分とフラムが懐いているようですし、ルシェール、貴方が育てては?」
「馬鹿を言え。お前等も知っての通り、儂は大の人嫌いなんじゃぞ。妻も居らぬのに、どうやって育てろと言うのだ? ビエント、お前はどうじゃ?」
「そうしてやりたいが、今は妻共々もう直ぐ開設される魔法大学校の教師集めで大変でな。とても子育てには手が廻らん。開校を遅らせる訳にもいかんしな」
となると、必然的にその場の視線が残るヴァルカンに集まる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺もルシェールと同じ独り身なんだぞ。育児なんてとてもじゃない」
「ルシェールよりかは良いと思うのだが……おお、そうだ。護衛と遊び相手を兼ねて、フラムに魔獣を付けてはどうだ? 少しは育児も楽になろう」
「魔獣を?」
ルディアの提案に他の四人は首を傾げる。
「丁度打って付けの魔獣がおる。ヴァルカン、ちょっと来い」
「いえ、まだ私は引き受けては━━ルディア様」
否応なくルディアがヴァルカンを伴ってその場を去って少しして、外の方から派手な音が聞こえたかと思うと、更に少ししてルディアとヴァルカンが戻って来たのだが、ヴァルカンの肩には先程まで居なかった小さな魔獣がとまっていた。
「なんじゃい、その小さな竜魔獣もどきは。儂でさえ見たこともないぞ」
「失礼な。オイラも本物の竜魔獣でヤンスよ」
「これはこれは、喋る魔獣とは珍妙な。儂が欲しいぞ」
「なら、あなたがフラムを育てますか?」
アインベルクの痛烈な返しに、ルシェールは慌てて首を降る。
「勘弁してくれ。それだけは御免じゃ」
ヴァルカンが今は地面に座り込んでいるフラムに歩み寄り、その目の前に小竜を下すと、フラムは嬉しそうに小竜の顔を引っ張る。
「どうやら気に入ったみたいだな」
「い、痛いでヤンス」
「パ、パル、パ、パ、パル……」
「丁度いい。お前の名前はパルだ」
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