炎の魔獣召喚士

平岡春太

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第六章 邂逅(かいこう)

 第二話 それぞれの旅立ち

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「自分からやる気になったのはあなたと居たからでしょう。礼を申しますよ」
「礼と言うなら私にも修行をつけて下さいよ。私も力量不足だと痛感しましたから。これじゃあ誰も守れないって」
「あなたは私の元で修行しても無駄でしょう」
「どうしてです?」
「あなたは特異質でしょう。氷の属性の力を伸ばした所で、して変わらないでしょう」
「それじゃあどうしたら?」
「そうですね。貴女に足りないものを伸ばす事が先決です。ヴァルカンに何か言われていなかったですか?」
「師匠に? ああ、そう言えば、亡くなる時に私は剣の腕がまだまだだって言ってました」

 アインベルクは溜息を洩らす。

「なるほど、実に伝え方が下手な男ですね。貴女の剣の技量については、今のままでもかなりの剣士と対しても問題ないでしょう。ただ、足りないのは属性の力を剣に応用する力ですよ」
「それは確かに、長い間炎をまとわせる事が出来ませんけど……」
「全くヴァルカンと来たら。どうせ、馬鹿正直に炎の力だけを伸ばそうとしたのでしょう。貴女は特異質なんですよ。一つの属性を極めようとした所で、他の者よりは力が劣り、極め難いと言う欠点があります。ただ━━」
「そうか、特異質は他の属性の力も使えるから」
「ええ、全てを使いこなせれば、この上ない利点となりましょう。ルディア様や貴女の父上がそうであったようにね。但し、ルディア様に於いては、それぞれの属性の力が五賢人並みでしたが」

 その場に居るアインベルク以外の者の顔が驚きに満たされる。

「噂では聞いていたけど、絵空事じゃなかったんだ……でも、だとしたら誰に師事したらいいんでしょうか?」
「打って付けの方が居ます」
「誰ですか?」
「剣聖ウォルンタース」
「剣聖ウォルンタース、あの剣の達人と言われる? でも、剣の達人に属性の力の使い方が分かるんですか?」
「その点は大丈夫です。会えば分かりますよ。ただ、あの方は一ヵ所に留まらない方なので何処に居らっしゃるやら。エドアールが居ると良いのですが。あの子の師でもありますから、分かるかもしれないのですが、今は城に居ませんから」
「まさか、あれから城に戻ってないのかしら」
「そうでヤンスね」

 フラムとパルがひそひそと話す。

「先生の居場所なら見当は付くぜ」

 紅茶を飲み干したフリードが言う。

「何であんたが知ってんのよ?」
「何でって。俺の先生でもあるからな」
「あんたの!?」
「そうですか。剣聖の元で修行していたエドアールが、全然敵わない腕の友が居ると申していましたが、貴方の事でしたか。それは丁度よい。フラムの案内を頼めますか?」
「別に構いませんよ。用事がある訳でもないし。それに、久々に先生にも会ってみたいしさ」
「だったら僕も行きたいな……」
「何を言っておる。遊びじゃないんだぞ」

 ウィルが口を尖らせるが、さすがに今回は連れて行く訳にもいかず、その後は静かにティータイムが終わった。
 それぞれが部屋に戻り、身支度を終えてから別荘の前に全員が集まった。

「アルシオンボルトーア!」

 アインベルクが地面に突き立てた錫杖の前で印を組み、その前に大きな魔獣召喚陣が現れる。

「魔界に住みし氷の魔獣よ。開かれし門を潜り出でて我が命に従え」

 アインベルクの印が形を変える。

「出でよ、氷魔獣サウロン!」

 輝きを増した魔獣召喚陣からサウロンが次々と飛び出して来た。その数は十を超えている。
 アインベルクの従者や護衛が次々と二人組になってサウロンの背に乗って行く。
 ウィルと村長も途中の港町まで行き先が同じと言う事でそこまで送る事となり、サウロンの背に乗る。
 最後にシャルロアが残った。

「フラムさん、今度会う時は負けないくらい強くなってますからね」
「へえ~、本当に言うようになったじゃないの。でも、私だって修行するんだから、シャルロアに負けはしないわよ」
「シャルロア、行きますよ」

 シャルロアは満面の笑みでいつものように深々と頭を下げ、アインベルクが先に乗っているサウロンの背に飛び乗った。
 サウロンの一団は風を巻き上げつつ跳び上がり、フラムとその肩に乗るパル、そしてフリードに見送られて飛び去って行った。

「さてと、私達も行きますか」

 フラムがその場にしゃがみ、地に右手を下す。が、

「ちょっと待った。俺は飛んでは行けないぜ」

 理由を聞くまでもなく、ハッと思い出したフラムは、深い溜息を吐く。

「そうか、あんたは高所恐怖症だったわね」
「情けないでヤンス」
「仕方ないだろう」
「いい加減に直しなさいよ。それで、目的地は近いの?」
「いや、少し遠いかな」
「じゃあどうすんのよ。少しでも早く修行をつけて貰いたいのに、歩いてたら遅くなるじゃないのよ」
「そうだな……ケンシルトって港町を知ってるか?」
「ええ、大きな町だから知ってるわ」
「最寄りの港だから先に行って待っててくれ。直ぐに追いつくから」
「あんたまさか、走って行く気? 大丈夫なの?」
「大丈夫、任せとけって。そこらの魔獣よりはずっと早いから」

 フリードの足の速さは知っているものの、フラムとパルの猜疑心に満ちた目が突き刺さる。
 一抹の不安が残るものの、フィールを召喚したフラムは、フリードをその場に残してパルと共に飛び去って行った。
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