炎の魔獣召喚士

平岡春太

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第七章 剣聖

 第五話 剣聖の力

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 目の前に広がる荒野の一角の地面が大きな亀裂を生み、開いた漆黒の闇の中から大きな巨体が顔を覗かせた。

「何よ、あれ!?」
「ビュルガトだ」
「ビュルガト? そんな名前の魔獣、聞いた事ないわよ」
「オイラもでヤンス」
「俺達が勝手にそう呼んでいるだけだからな」
「物凄い魔力よ」
「その上凶暴で、何とか野生化しないように防いで来たからな」
「それで、属性は?」
「色々と混ざってるって言った方がいいか」
「って、魔獣の特異質ってこと? 確かにケーレには親と子で属性が違う魔獣が居たけど、ここでは何でもありってこと?」
「かもな。来るぞ!」

 ビュルガトはフラム達の姿を認めるなり、猛然と掛け迫って来た。
 フラムとフリードは二手に分かれてこれを躱した。

「物凄い迫力ね」

 驚きつつも一本の剣を抜いて身構える。
 その間にもフリードは返す刀でビュルガトに素早く迫り、斬り掛かるが、それを上廻る速さでビュルガトが回避する。

「速さも異常ね!」

 今度はフラムが迫って斬り掛かるが、その口から突風が吹き出され、フラムは踏ん張るのがやっとだ。
 一早くフラムの肩から飛び立ったパルが、上空から炎を吹き付けるが、今度は口から冷気を吐いてそれに応戦する。
 明らかに冷気の方が炎より強く、パルの炎は一瞬にして凍り、パルは寸前の所で回避してその身まで凍らされるのを免れる。

「危ないでヤンス……」

 それに代わって今度はフリードが斬り掛かる。

「もらった!!」

 フリードの剣がビュルガトの首を斬り落とした  かに見えたが、鈍い音と共にフリードの剣は弾き返されてしまった。
 よく見るとビュルガトの首の周りには、先程までなかった首輪の様な氷の塊があった。

「こいつ、相変わらず攻守に長けた魔獣だな」

 フリードはフラムの元まで下がる。

「あれはシュレッケ峠に居た特異種のレガラントが見せた防御法だわ。こいつに弱点なんてあんの?」
「どうだろうな」
「どうだろうなって、あんたこいつに勝ったことあるの?」
「ない」
「ないって、じゃあ今までどうしてたのよ?」
「その場に居た先生が討伐してたからな。居ない時は、先生が来るまで逃げないようにしていたって感じだったし」
「じゃあ倒し方は分からないってこと?」

 フラムの口から溜息が洩れたその時、

「戻りが遅いと来てみれば、そんな魔獣に手間取っておるのか」

 二人の後ろにウォルンタースが姿を見せた。

「先生!」

 ほっとした顔をするフリードに対して、フラムは複雑な表情を見せる。

「ちいと待っとれ」

 二人の横を通り過ぎたウォルンタースは、ビュルガトと対峙たいじして足を止めると、少し腰を落とした。
 ウォルンタースに睨まれて、ビュルガトは少し怯んだ様に見えたが、それを振り払うかのように首を大きく何度か振り、身を低くして構え直すなり、ウォルンタースに向かって猛然と駆け出した。

「ちょっと、剣聖は丸腰じゃないの。まさかあの杖で戦うつもり?」
「見てれば分かるって」

 目を閉じ、ゆっくりと息を吐き出したウォルンタースが、カッと目を開けた瞬間、その姿が一瞬消えたように見えた。
 突然動きを止めたビュルガトの少し後方に、消えたウォルンタースの姿があった。その手には、杖に仕込まれた細身の刀身の剣が握られている。

「全く見えなかった」
「オイラもでヤンス」
「あんたより早いんじゃない?」
「それはそうだろう。俺の先生だからな」

 動きを止めたビュルガトが横倒しになった刹那、その体は真っ二つになっていた。

「あの化け物をあんな一瞬で……」
「物凄いジイさんでヤンス……」

 その時、激しい地響きと共に、あちらこちらに亀裂が走る。

「また!?」

 空いた亀裂から一匹、また一匹と、ビュルガトとは異なる姿ながらも大柄な魔獣が次々と姿を現した。

「まったく、年寄りを労わらん連中だわい」
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