幼馴染の少女に触れたくても触れられない私は代わりに彼女を求めた……キスをしたのもそんな目で私を見上げるあんたのせいなんだよ

tataku

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第1章

第5話

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 登校の待ち合わせ場所に行くと、ちび助と深雪が何かを話している。
 
 まだ、距離があるせいか、こちらには気づいていない。
 
 ちび助は夢中で話しており、深雪はそれに対して相槌で対応しているが、どこかいつもと違う。
 
 その顔色を見て、私は慌てて走り出す。

「深雪!」

 二人が私の方を見る。

 深雪は顔が少し赤く、トロンとした目。

 私は直ぐに彼女のおでこに手を当てた。

 予想通り、熱い。

 最近、落ち着いていたのに。

 困ったように笑う彼女を見て、私は――。

「何で直ぐにそうやって無理をすんのよ! 辛いなら辛いって言えばいい。そうやって、我慢して――前みたいに倒れられるほうがいい迷惑だから!」

 悲しげに――目を伏せる彼女を見て、私は――我に返る。

「ご、ごめん。言い過ぎた」

 深雪は首を横に振った。

「私の方こそ――ごめんね。いつも迷惑をかけて。だから、私は――」

 一言もなく彼女の手を取る。

「歩ける? 無理そうなら肩を貸すけど」
「――大丈夫」

 私は無言で彼女の手を引っ張り、歩き出す。

 深雪は特に抵抗することなく、私の後に続いた。

 私は腹を立てている。しかし、ちゃんと速度を落とし――彼女の顔色を伺うぐらいの冷静さはあるつもりだ。


 * * *

 
 深雪が家の鍵を取り出そうとしたため、私はそれを止め、呼び鈴を鳴らした。

 中から深雪のお母さんが出てくる。

 私は深雪の手を離した。

 私と深雪を見て、彼女は直ぐに察すると――娘のおでこに手を当てた。

「あなた、また――」

 母親は何かを言いかけ、口をつぐんだ。
 
「……ごめんなさい。弘子さん」

 弘子さんは――深雪の母親だ。でも、深雪は名前で呼ぶ。

「いいのよ。気づかなかった私が悪いんだから」
「そんなことは――」

 何かを言いかけた娘の肩に手を置いた。

「いいのよ、気にしないで。取り敢えず今は――体を休めることだけを考えて」

 その言葉に、深雪は大人しく頷いた。

「いつも本当に有難うね、奈々ちゃん」

 弘子さんは私を見て、感謝の言葉を吐いた。
 
「いえ、別に――大したことじゃないので」
「ごめんね」

 深雪は申し訳なさそうに、謝罪した。

 そんな彼女を見て、私はいら立ちが募る。
 
 謝って欲しくなんてないし、そんな顔――見たくもない。
 
 私は、もっと――寄りかかって、頼ってほしいのだから。

「深雪、お願いだから。無理はしないでよ」

 その言葉に、彼女は頷いてくれた。


 * * *

  
 家を出て、扉を閉める。

 敷地に入らず、道路で不安そうにしているちび助の姿を見て、すっかり存在を忘れていた。

「深雪先輩――大丈夫ですか?」
「さあ、私は神様じゃないから」

 私は投げやりに言うと、彼女の横を通り過ぎて学校への道を歩く。
 言葉通り、私はただの人間なのだから、分かるはずもない。
 深雪はそれほど体が強くない。
 そのため、学校を休むことは特に珍しいことでもない。だから――気にする必要なんてない。

「深雪がいないんだし、自転車で向かったら? 坂道ぐらい、あんたなら余裕なんじゃないの? なんせ、元運動部なんだから」

 無言で私の後を歩くちび助の存在がうざいため、私はそんなことを言った。

「奈々先輩って、元々いじわるですけど、本当――深雪先輩がいなくなると私に対する冷たさが半端ないんですけど?」
「別に、そんなの――あんただけじゃないから」

 深雪がいる前では、私は基本的に愛想笑いをするし、多少は丁寧に対応するよう心掛けている。

 しかし、彼女がいないときには無表情だし、態度が冷たくなり、言葉が悪くなるらしい。
 だから、ちび助も私と初めて二人っきりになったときには驚かれた。
 正直、そこまで変化しているつもりはない。

「私は――深雪先輩と話すことに夢中で、深雪先輩の体調に全く気づきませんでした。私は先輩に笑って欲しくて、喜んで欲しかった――けれどそれは、先輩のためなんかじゃなくて、自分のためでした。こんなんじゃ、恋に恋するだけの――ただの間抜けな馬鹿です」

 分かってた。分かってたことだけど、本人の口から"恋"と言う単語を聞いてしまうと、内心――動揺した。

「……恋ではなかったと、さっさと気づけて良かったんじゃないの?」

 そして、さっさと深雪と会わないようにして欲しい。

「でも、私はやっぱり深雪先輩が好きです。だから、この思いをちゃんと育てて――そして、今度は私が先輩を助けます」

 本当に苛立たしい。

 ――私は彼女の存在を無視することにした。
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