幼馴染の少女に触れたくても触れられない私は代わりに彼女を求めた……キスをしたのもそんな目で私を見上げるあんたのせいなんだよ

tataku

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第1章

第8話

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「私がクラスで孤立していることぐらい知ってるでしょ? それに、クラスの連中になんて興味もない。だから、正直なんの話か分かんないんだけど」

 藤宮はしばらく私を睨みつけていたが、納得したのか――身を乗り出していた体を元に戻した。

「で、何があったの?」

 しばらく沈黙していたが、ため息を吐く。

「あとで噂話を聞いて、変に勘違いされても困るから、言うのだけれど――」

 一拍、間が空く。

「――たまたま、本当にたまたまなんだけれど、私が気まぐれで読んでいたガールズラブの小説を見て、それで――勝手に勘違いされたのよ」
「勘違い?」
「私がレズだって」
「あー、なるほどね」

 思った以上に、くだらない話だった。
 
「着替えの時とか――いちいち、言わなくても分かるでしょ?」

 うわーあいつレズだからこっち見るなよー的な、嫌がらせがあるということだろう。藤宮も意外ときにしぃなのかもしれない。当然、私だった場合は学校を休む程度にはへこむ。

「しかも、数人ほど私に告白してきたわ。当然、直ぐに断ったけれどね。本当、皆暇人ね。私をからかう暇があるなら、本でも読んだほうがよっぽど有意義かと思うのだけれど」

 ――その流れで、チビ助は深雪に告白してきたんじゃないだろうな?

「でもまぁ、分からなくもないけど」

 私は独り言のように呟いた。

「どういうこと?」

 藤宮は不機嫌そうに尋ねてくる。

「だって、藤宮は凄い美人だし、仕方がないんじゃない?」
「……何よ、それ」

 藤宮は、そっぽ向く。

 もしかして、デレた?
 
 彼女の仕草に――ちょっとだけ、ムラっとした。

 私は深雪のことが好きだ。大切にしたいと思うあまりなのかは分からないが、彼女に対してあまり欲情はしない。
 しかし、藤宮に関してはそういう欲望が時々だがうずくことがある。
 
 抱いてくれと言われたら――正直、理性が飛んでしまう気がする。
 そのため、藤宮は私にとって魔性の女である。
 そう思うのは私だけではないはずだから、告白されたと言うのは凄く納得できる話だ。

 昔は――藤宮の顔が好みだと思ったことはない。もしかしたら最近、外見のタイプが変わってきたのかもしれない。

「ところでさ、小説のタイトルって何なの?」

 無視された。

 しかし、彼女との付き合いは根気よくだ。急かさず、待ち続けることが大切である。

「……言ったって、どーせ分からないわよ」

 森の静寂が、その言葉をほんの一瞬だけ包み込んだ。
 風が枝葉をそよがせる。

「大丈夫。私は結構そこらへん詳しいから」

 藤宮はこちらに振り向く。
 疑いの目を向けてきたが、素直に教えてくれた。

「……わたおと」

 意外とマイナー作品の名前が出たため、少し驚いた。しかも、略称で言われた。
 わたおと――正式名称は、わたしがクールなお嬢様を落とすまで。
 てっきり、実写化、又はアニメ化したような有名作品だと思ったのだが。
 
 しかも、結構きわどい作品だ。ちょっとエッチだったりする。
 
 簡単に説明すると、クラスで孤立したクールなお嬢様が、ちょっと意地悪な同級生女子に落とされるお話。
 内容はないに等しいが、キャラの掛け合いなどがよく、私のお気に入りのひとつでもある。
 しかし、私もかなりネット検索してようやく見つけたような作品だ。正直、たまたまで見つかるような作品だとは思えないのだが?

「やっぱり、知らないんじゃない」

 眉を顰められる。

「違うって。予想外のタイトルが出たから、驚いただけ」
「嘘」
「本当だって。私も好きだから、その作品」
「好きだとは一言も言ってないのだけれど」
「へー、そうなんだ」

 とても、そうは思えないが。

「私は――結構、好きなんだけどね」

 藤宮は、相変わらず疑いの目を私に向けて来る。
 
「……因みに、どの辺が好きなのよ」
「ヒロインのお嬢様が可愛いところ。何となく、藤宮を思いだすしね」

 そのためか、主人公には感情移入してしまう節があり、ついつい読んでしまう。
 コミカルだし、凄く読みやすい作品だ。本当に内容はすっかすかだが、個人的にはそこがまたいいと思う。

「ば、馬鹿なんじゃないの――」

 そう言って、藤宮は本で顔を隠した。

 なんだこの可愛い生き物は。

 私に押し倒されても文句は言えないと思う。

 まぁ、そんなことをするつもりはないけども。
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