幼馴染の少女に触れたくても触れられない私は代わりに彼女を求めた……キスをしたのもそんな目で私を見上げるあんたのせいなんだよ

tataku

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第1章

第10話

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 いつもの待ち合わせ場所。
 私はスクールバッグを肩にかけ、ちび助は大きなリュックサックを背負い、一緒に帰宅する。

「私、スーパーに寄るけど?」
「え? 当然、私も寄りますよ。先輩だって、深雪先輩へのお見舞い品買うんですよね?」

 そもそも、お見舞いをする必要などないと――私は何度も言っている。
 だから、私は特に返答することなくスーパーの中へ入った。そして、かごを手に取る。ちび助も後に続いた。

 私は今日の特売を見て回る。献立が決まると必要なものをかごの中に入れた。

「いつも思いますけど、凄いですよね。特に悩む様子がないんですから。何を作るかはお店に入ってから考えるんですよね?」
「だって、何が安いか分かんないからね。まあ、こんなのはただの慣れだから」
「何事も、慣れるまでが大変かと思いますけど?」

 まあ、確かにその通りだ。

「奈々先輩は、何を買っていったほうがいいと思います?」
「私なんかに聞くより、スマホで本人に聞いたら?」
「深雪先輩が素直に何が欲しいかなんて、言ってくれる訳ないじゃないですかぁ」

 まぁ、確かにその通りだ。

「それに、サプライズの方がきっと喜びますよ。そして何より、ちょうど欲しかったものを私が買っていけば――運命を感じて頂けるかもしれません」

 ちび助は顎に手をやり、ニヒルな笑みを浮かべた。

「それで、奈々先輩は何にするつもりですか?」
「だから、何も買わないって」
「本当ですか? 抜け駆けをするつもりじゃないですよね?」

 ちび助はジト目を向けてくる。

「本当だって何度も言ってるじゃん。あんまりしつこいと、いい加減怒るんだけど」
「すみません。以後、気をつけますのでどうかご容赦を。――とは言え、すでにもう怒ってますよね?」

 手をすり合わせ、直ぐに謝ってくる。しかし、あまり真剣味は感じない。最後の余計な台詞に私はイラッとしたため、ちび助の頭を軽く小突いた。

「な、何で殴るんです?」

 ちび助は頭を押さえ、抗議の目を向けてくる。

「だって、腹が立ったから」
「なんと理不尽な!」

 大げさに反応された。
 絶対にわざとだ。
 馬鹿にされているとしか思えない。
 私からしたら、こいつの存在そのものが理不尽だと思う。

「私の可愛い頭に触れたんですから、奈々先輩も一緒に考えてくださいよぉ」
「絶対に、嫌」
「本当、冷たいですよねぇ、奈々先輩は」

 なんだかんだでわざわざ相手している私に対して――とんだ言い草である。

「あ、ちょっと待ってください」

 ちび助が止まる。

 デザートコーナーだ。

 私は一瞬、悩んだものの足を止めてやった。

「やっぱり、ゼリーとかですかね? でもなぁー、あまりにもド定番すぎるので、普通に先輩のお母さんが買ってきてそうなんですよねぇ」

 うむむ――と、ちび助は悩みだす。

 そして、ひとつの商品を手に取った。

「あ――」

 私はつい、声をだしてしまう。

「どうかしましたか?」
「……何で、それを選んだの?」

 ちび助が手に取ったのは、少しマイナーなカップヨーグルト。
 
「私が熱を出したときには、いつもこれなので。もしかして、何かまずいですかね?」
「……別に、いいんじゃないの」

 まさか、深雪の好きな物を選ぶとは思わなかった。

「そうですか? では、これにします」

 ちび助は手に取った物をかごの中に入れた。

「で――本当に、それにするつもり?」
「だって、奈々先輩がそれでいいんじゃない? と、言ってくれたじゃないですか」
「少しは疑ったら? もしかしたら、深雪の嫌いなものかもしれないじゃん」
「奈々先輩は意地悪な人ですけど、深雪先輩のことに関しては――私、信用してますから」

 そう言って、ちび助は笑った。

 何となく、腹が立ったので、デコピンをかました。

 口喧しく文句を言われたが、無視することにした。



 その後も、ちび助は色々とかごの中に入れた。
 風邪のときにはこれがおすすめだとか、色々と自慢気に語ってくれた。
 うざい――と感じたものの、大人しく話を聞いてやることにした。



 私はエコバッグを片手に、ちび助はビニール袋を片手にスーパーから出た。

 少しだけ重くなった荷物を持ち、家まで歩を進める。

「そう言えば、奈々先輩が待ち合わせ場所で私を待っていてくれたときですけど、何かずっと睨んでいた人がいましたよ。――心当たりとかありますかね?」

 そんな心当たりなど――――あるっちゃ、ある。

「もしかして、髪の後ろに少し大きめな黒いリボンをして、細身で――黒いストッキングを履いてた?」
「あ、そうです。そんな感じです。そして、めちゃくちゃ美人でした! けど、凄く怖かったんですよねぇ」

 間違いない。

 藤宮だ。
 
「――それで、奈々先輩は何をやらかしたんです? なんなら、謝るの手伝いますけど」

 私は、小学生か。
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