幼馴染の少女に触れたくても触れられない私は代わりに彼女を求めた……キスをしたのもそんな目で私を見上げるあんたのせいなんだよ

tataku

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第1章

第11話

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 それにしても――まさか、睨まれていたとは。

 藤宮が根に持つタイプだと言うことは、重々承知の話ではある。
 しかし今回、それほどの恨みを買うようなことはなかったと思うのだが?
 次にあった時には、普通に話せると思っていたのに。意外と根が深いのだろうか?

 ちび助は無言で私を眺めている。

「何?」
「あの美人さんって誰です? 実は芸能人ですと言われても納得するんですけど。だって、それぐらいオーラがありましたから」
「……藤宮にまで手を出すつもり?」
「失礼ですね、私は奈々先輩と違って深雪先輩一筋ですから。どれだけ美人だろうと――深雪先輩の美しさの前では、あまりにも儚いです。それにしても、あの人は藤宮さんって言うんですね。一応、覚えておきます」

 何故に、覚える必要が?

「はっ! もしや、あの方も深雪先輩を狙っているとかではないですよね!?」
「それはないって、本人は言ってたけど」
「本当ですかね? 深雪先輩を好きにならない人間などいないと思いますけど」

 いや、普通にいると思うんだけど。

「それにしても、藤宮より深雪のほうが美人だなんて――そんなことを言うのは多分、あんたぐらいだろうね」
「むっ。そんなこと――絶対にありえませんよ。少なくとも、奈々先輩は深雪先輩の方が美人だって思いますよね?」
「まさか。どー考えても藤宮のほうが美人だと思うし、私好みかもね」
 
 そんなの、ありえない! という顔をされた。

「なるほど、分かりました。奈々先輩の――深雪先輩への想いがその程度だということは、よーく分かりました。私はとっても残念です。そして、がっかりしました。どうやら、私の足元にも及ばないんですね。私のライバルになれると――そう、思ってたんですけどね。実に残念です」

 ちび助はわざとらしく、ため息を吐く。

 流石に――本気でいらっとした。

 私が足を止めると、数歩先で――ちび助も歩くのを止めた。

「顔でしか判断しないあんたと一緒にしないでよ。私は、深雪を人として――ちゃんと好きなのだから」

 ちび助は振り返り、私を見る。
 
「つまり、中身だけは愛しているってことですか? そんなの、弱すぎますよぉ。だって私は、深雪先輩の中身も、外見も――誰より、この世界の誰よりも愛しているんですから」

 ちび助は手を広げ、大げさに言葉を吐いた。

 正直、喧嘩を売られているとしか思えない。

「深雪先輩が好きだから求めるんです。深雪先輩を愛しているから、触れたくなるんです。綺麗な人なんてこの世界にいくらでも存在しますが、私が求める相手は――深雪先輩ただ一人だけです」

 ちび助は顎を少し上げ、ドヤ顔になる。

「ほんの一月で深雪の何が分かる? 私からしたら、あんたはただ――深雪の外見を愛しているようにしか見えない。内面なんて――あんたの勝手な妄想にしか過ぎないんじゃない? 私は十年以上も深雪と一緒にいて、それなりに理解している。理解した上で――ずっと好きだった」

 私がこいつに勝っているものなど、過去の年数しかない。でも、その中にある思い出は――私にとって、何よりも大切なものだ。

「むむっ。それを言われると辛いですねぇ。確かに、今はそれを証明するすべはありませんが、私は十年後――深雪先輩と結婚していると思います」

 その言葉で、私は吹き出しそうになる。

「女同士で結婚できるか!」

 つい、大声を上げてしまった。
 こんなに大きな声を出したのは、正直数年ぶりだ。
 
「十年後なんて、誰にも分かりませんよ?」

 チビ助は得意げに笑い、人差し指を揺らして見せた。

 そんな、タラレバで良いと言うのなら――私だって、そうなる可能性があると言うことだ。
 しかも――私は大企業の社長となり、藤宮を愛人にし、ちび助を下働きでこき使っている――かもしれない。

「とにかく、あんたより――私のほうが深雪を好きだと言える」

 そんな曖昧なもの――数値化できるものではないけれど。

「だけど、外見は藤宮先輩のほうが好きなんですよね?」
「だったら何? それでも、深雪のほうが好きだと私は言える。であるならば、外見でうつつを抜かすあんたよりはましだと思うけど?」

 ちび助は渋い顔をした後、ため息を吐く。

「止めましょう。いつまでたっても決着がつく気がしません」

 あんたが始めたんだろーがー、と今すぐにでも叫びたい。

「だけどようやく、深雪先輩のことを好きだと――認めましたね」

 ちび助はにやりと、笑みを浮かべた。

「……だったら、何?」
「別に――ただ、ようやくライバルだと認めていただけたのかなーと、思っただけですよぉ」

 なんとなく、肩の力――抜けた気がした。

「あ、一応、最後に一言だけいいですか?」
「何」
「本当に、これで最後ですよ」
「だから、何」
「私のほうが深雪先輩のことを好きです! これだけは絶対に譲れませんから」
「それは――」

 ちび助は再び、人さし指を立てて揺らした。
 
「これで最後だって言いましたよね?」

 勝ち誇った顔をされた。
 本当に、人を苛つかせる天才だ。

 ――でかかった言葉を、私は何とか飲み込んだ。
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