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第1章
第13話
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深雪の体調は問題なさそうに見えたが、早々に切り上げることにした。
お見送りのため立ち上がろうとした深雪を、私は少しきつめに注意した。
予想通り、頬を膨らませて無言の抗議をしてきたが、無視することにした。
私は、お別れの言葉と、労いの言葉を口にする。
部屋の扉の前で、ちび助は名残おしそうに中々離れようとしないため、私は半ば引きずるようにして部屋をでた。
家を出て、ちび助は自転車にまたがる。
「結局、奈々先輩は深雪先輩にお見舞い品を渡しませんでしたね」
「……だから、別に買ってないって言わなかったけ?」
「本当に、奈々先輩って――強情ですよねー」
呆れたように、ため息を吐かれた。
「まぁ、別にいいですけどねー。今日は私が一歩リードできましたし、とーってもいい気分です」
「……私をここへ連れてきた理由は何? あんたにとっては、一人で来たほうが良かったんじゃないの?」
一人ではお見舞いなんてできない――そんな人間にはとても思えない。
「変なことを言いますねぇ。二人のほうが楽しいですし、何より、そのほうが深雪先輩も喜んでくれるじゃないですか」
「私はライバルなんじゃなかったの?」
「そうですよ。だから、正々堂々とです。奈々先輩には、嫌われたくないですしね」
本当――理解できない。
「何か、勘違いされているみたいですから言いますけど、私は奈々先輩のことも好きですよ?」
「は?」
「だから、私が深雪先輩と付き合った後もちゃんと友達のままでいたいんです」
何ともふてぶてしい考え方――そして何より、私とちび助はいつの間に友達になっていたのだ?
「ですから、抜け駆けなんて駄目ですよー」
そんなの、知ったことではない。
「それより、自転車の後ろ――乗っていきます? 送りますよ?」
「乗らない」
そう言って、私はお別れの言葉なく帰路の道を歩き出す。
何故か、ちび助は自転車を降りると、それを押して歩き出す、私の後を。
「……家、こっちの方向じゃなかったと思うんだけど?」
「え? 送っていきますけど? だって、寂しいですよね?」
「私は、うさぎか!」
「何でいきなりうさぎがでてくるんです? 奈々先輩、頭大丈夫ですか?」
なんでこんな奴に、頭の心配をされないといけないのか。
発言の意味を説明しようとして止めた。
「とにかく、はっきり言うけど、寂しくないからついてこないでいい。むしろ、ついてくるな」
案の定、ちび助はむくれた。
「本当に、奈々先輩は素直じゃないですねー」
そんなことはない。素直すぎて自分が怖いぐらいだ。
ちび助はぷりぷり怒りながら、再び自転車に跨る。ペダルを漕ぐが――直ぐに、ブレーキをかけた。
「それでは奈々先輩、また明日!」
そう言って、ちび助は笑顔で手を振った。
先程までの怒った顔が幻だったかのようだ。
私は呆れながらも、手を振ってやった。
* * *
帰り道、スマホが鳴る。
メッセージではなく、電話の着信音。
何となくだが、熱が出たと分かった時から――予感はしていた。
確認すると、深雪の名前。
――きっと、彼女ではない。
私は電話に出た。
『奈々に会って、直接話したいわ』
深雪とまったく同じ声で、まったく違う喋り方。
「部屋で待っててよ、今すぐに行くから」
足音がした。
『残念、もう、後ろにいるから』
電話が切られる。
振り返ると、深雪がいる。
深雪とまったく同じ顔、同じ髪型、同じ姿で、違う誰かが立っている。
私は彼女を知っている。
私だけが――
「雪乃……」
私が名前を呼ぶと、彼女は嬉しそうに笑った。
お見送りのため立ち上がろうとした深雪を、私は少しきつめに注意した。
予想通り、頬を膨らませて無言の抗議をしてきたが、無視することにした。
私は、お別れの言葉と、労いの言葉を口にする。
部屋の扉の前で、ちび助は名残おしそうに中々離れようとしないため、私は半ば引きずるようにして部屋をでた。
家を出て、ちび助は自転車にまたがる。
「結局、奈々先輩は深雪先輩にお見舞い品を渡しませんでしたね」
「……だから、別に買ってないって言わなかったけ?」
「本当に、奈々先輩って――強情ですよねー」
呆れたように、ため息を吐かれた。
「まぁ、別にいいですけどねー。今日は私が一歩リードできましたし、とーってもいい気分です」
「……私をここへ連れてきた理由は何? あんたにとっては、一人で来たほうが良かったんじゃないの?」
一人ではお見舞いなんてできない――そんな人間にはとても思えない。
「変なことを言いますねぇ。二人のほうが楽しいですし、何より、そのほうが深雪先輩も喜んでくれるじゃないですか」
「私はライバルなんじゃなかったの?」
「そうですよ。だから、正々堂々とです。奈々先輩には、嫌われたくないですしね」
本当――理解できない。
「何か、勘違いされているみたいですから言いますけど、私は奈々先輩のことも好きですよ?」
「は?」
「だから、私が深雪先輩と付き合った後もちゃんと友達のままでいたいんです」
何ともふてぶてしい考え方――そして何より、私とちび助はいつの間に友達になっていたのだ?
「ですから、抜け駆けなんて駄目ですよー」
そんなの、知ったことではない。
「それより、自転車の後ろ――乗っていきます? 送りますよ?」
「乗らない」
そう言って、私はお別れの言葉なく帰路の道を歩き出す。
何故か、ちび助は自転車を降りると、それを押して歩き出す、私の後を。
「……家、こっちの方向じゃなかったと思うんだけど?」
「え? 送っていきますけど? だって、寂しいですよね?」
「私は、うさぎか!」
「何でいきなりうさぎがでてくるんです? 奈々先輩、頭大丈夫ですか?」
なんでこんな奴に、頭の心配をされないといけないのか。
発言の意味を説明しようとして止めた。
「とにかく、はっきり言うけど、寂しくないからついてこないでいい。むしろ、ついてくるな」
案の定、ちび助はむくれた。
「本当に、奈々先輩は素直じゃないですねー」
そんなことはない。素直すぎて自分が怖いぐらいだ。
ちび助はぷりぷり怒りながら、再び自転車に跨る。ペダルを漕ぐが――直ぐに、ブレーキをかけた。
「それでは奈々先輩、また明日!」
そう言って、ちび助は笑顔で手を振った。
先程までの怒った顔が幻だったかのようだ。
私は呆れながらも、手を振ってやった。
* * *
帰り道、スマホが鳴る。
メッセージではなく、電話の着信音。
何となくだが、熱が出たと分かった時から――予感はしていた。
確認すると、深雪の名前。
――きっと、彼女ではない。
私は電話に出た。
『奈々に会って、直接話したいわ』
深雪とまったく同じ声で、まったく違う喋り方。
「部屋で待っててよ、今すぐに行くから」
足音がした。
『残念、もう、後ろにいるから』
電話が切られる。
振り返ると、深雪がいる。
深雪とまったく同じ顔、同じ髪型、同じ姿で、違う誰かが立っている。
私は彼女を知っている。
私だけが――
「雪乃……」
私が名前を呼ぶと、彼女は嬉しそうに笑った。
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