幼馴染の少女に触れたくても触れられない私は代わりに彼女を求めた……キスをしたのもそんな目で私を見上げるあんたのせいなんだよ

tataku

文字の大きさ
13 / 77
第1章

第13話

しおりを挟む
 深雪の体調は問題なさそうに見えたが、早々に切り上げることにした。

 お見送りのため立ち上がろうとした深雪を、私は少しきつめに注意した。
 予想通り、頬を膨らませて無言の抗議をしてきたが、無視することにした。

 私は、お別れの言葉と、労いの言葉を口にする。
 
 部屋の扉の前で、ちび助は名残おしそうに中々離れようとしないため、私は半ば引きずるようにして部屋をでた。



 家を出て、ちび助は自転車にまたがる。

「結局、奈々先輩は深雪先輩にお見舞い品を渡しませんでしたね」
「……だから、別に買ってないって言わなかったけ?」
「本当に、奈々先輩って――強情ですよねー」

 呆れたように、ため息を吐かれた。

「まぁ、別にいいですけどねー。今日は私が一歩リードできましたし、とーってもいい気分です」
「……私をここへ連れてきた理由は何? あんたにとっては、一人で来たほうが良かったんじゃないの?」

 一人ではお見舞いなんてできない――そんな人間にはとても思えない。

「変なことを言いますねぇ。二人のほうが楽しいですし、何より、そのほうが深雪先輩も喜んでくれるじゃないですか」
「私はライバルなんじゃなかったの?」
「そうですよ。だから、正々堂々とです。奈々先輩には、嫌われたくないですしね」

 本当――理解できない。

「何か、勘違いされているみたいですから言いますけど、私は奈々先輩のことも好きですよ?」
「は?」
「だから、私が深雪先輩と付き合った後もちゃんと友達のままでいたいんです」

 何ともふてぶてしい考え方――そして何より、私とちび助はいつの間に友達になっていたのだ?

「ですから、抜け駆けなんて駄目ですよー」

 そんなの、知ったことではない。

「それより、自転車の後ろ――乗っていきます? 送りますよ?」
「乗らない」

 そう言って、私はお別れの言葉なく帰路の道を歩き出す。

 何故か、ちび助は自転車を降りると、それを押して歩き出す、私の後を。

「……家、こっちの方向じゃなかったと思うんだけど?」
「え? 送っていきますけど? だって、寂しいですよね?」
「私は、うさぎか!」
「何でいきなりうさぎがでてくるんです? 奈々先輩、頭大丈夫ですか?」

 なんでこんな奴に、頭の心配をされないといけないのか。
 発言の意味を説明しようとして止めた。

「とにかく、はっきり言うけど、寂しくないからついてこないでいい。むしろ、ついてくるな」

 案の定、ちび助はむくれた。

「本当に、奈々先輩は素直じゃないですねー」

 そんなことはない。素直すぎて自分が怖いぐらいだ。

 ちび助はぷりぷり怒りながら、再び自転車に跨る。ペダルを漕ぐが――直ぐに、ブレーキをかけた。

「それでは奈々先輩、また明日!」

 そう言って、ちび助は笑顔で手を振った。

 先程までの怒った顔が幻だったかのようだ。

 私は呆れながらも、手を振ってやった。



 * * *

 

 帰り道、スマホが鳴る。
 
 メッセージではなく、電話の着信音。

 何となくだが、熱が出たと分かった時から――予感はしていた。

 確認すると、深雪の名前。

 ――きっと、彼女ではない。

 私は電話に出た。

『奈々に会って、直接話したいわ』

 深雪とまったく同じ声で、まったく違う喋り方。

「部屋で待っててよ、今すぐに行くから」

 足音がした。

『残念、もう、後ろにいるから』

 電話が切られる。

 振り返ると、深雪がいる。

 深雪とまったく同じ顔、同じ髪型、同じ姿で、違う誰かが立っている。

 私は彼女を知っている。

 私だけが――

「雪乃……」

 私が名前を呼ぶと、彼女は嬉しそうに笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

身体だけの関係です‐三崎早月について‐

みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」 三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。 クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。 中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。 ※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。 12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。 身体だけの関係です 原田巴について https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789 作者ツイッター: twitter/minori_sui

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

私がガチなのは内緒である

ありきた
青春
愛の強さなら誰にも負けない桜野真菜と、明るく陽気な此木萌恵。寝食を共にする幼なじみの2人による、日常系百合ラブコメです。

身体だけの関係です‐原田巴について‐

みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子) 彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。 ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。 その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。 毎日19時ごろ更新予定 「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。 良ければそちらもお読みください。 身体だけの関係です‐三崎早月について‐ https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060

【完結】【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて

千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、夫・拓馬と娘の結と共に平穏な暮らしを送っていた。 そんな彼女の前に現れた、カフェ店員の千春。 夫婦仲は良好。別れる理由なんてどこにもない。 それでも――千春との時間は、日常の中でそっと息を潜め、やがて大きな存在へと変わっていく。 ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。 ハッピーエンドになるのでご安心ください。

恋してしまった、それだけのこと

雄樹
恋愛
小学3年生の女の子が、母の妹に恋をした。 星野未来(ほしのみく)は、母の妹である水瀬沙織(みなせさおり)に恋をした。 出会ったとき、未来は8歳。 沙織は20歳の大学生だった。 優しくて、少し不器用で、どこか寂しそうなその人が好きな人は、私ではなく…私の「母」だった。 一生でたったひとつの初恋。 言葉にできない想いを抱えたまま、少女は季節を重ねていく。 あなたは私の叔母で。 あなたは私と同性で。 あなたは私と12歳も歳が離れていて。 あなたが好きな人は…私じゃなくて。 それでも、この初恋を諦めることは出来なかった。 これは、ひとりの少女の、恋のはじまりと記憶の物語。

処理中です...