幼馴染の少女に触れたくても触れられない私は代わりに彼女を求めた……キスをしたのもそんな目で私を見上げるあんたのせいなんだよ

tataku

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第2章

第15話

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 朝――そして、登校。

 待ち合わせ場所に、深雪とちび助の姿。
 その光景が――日常になりつつあるのが、正直、あまり面白くはない。



 校門を潜る。
 学校の入口まで、ざっと50m以上はある。

「そう言えば、お二人のスカートは最近、新調とかしました?」

 質問の意味が分からない。

「えっと、どうしてかな?」

 深雪は律儀に質問をする。
 
「あ、その反応ってことは、やっぱり知らないんですね。最近、一年生の間で騒がれてるんですけど、スカートのポケットを縫っている糸が急にほつれて中身が知らない内に落ちてしまうらしいんですよ」
「落ちたら、普通気づくでしょ」
「そりゃー私だってそう思いましたけど、気づかない人は本当に気づきませんからね」
「ああ、確かにそうかもね。鈍臭い人は本当に気づかないから」
「ええ、いますからね、そう言う人」
「例えば、深雪とか」
「……」

 ちび助は押し黙る。

「奈々ちゃん、本当に酷いよー。私だってそれぐらい気付くから」
「でもそう思っていたのは、どうやら私だけじゃないみたいだけど」

 そう言って、私はちび助のほうに指を向けた。

「小春ちゃん?」

 ちび助は深雪の視線から逃れる。

「……私、小春ちゃんの前では格好良い先輩のつもりだったのにぃ」

 深雪は分かりやすく落ち込んだ。

 昔から、格好良い女性への憧れがあることは知っていた。

 それにしても――まさか、ちび助の前では格好良い先輩のつもりだったとは。

 そんなの、衝撃の事実である。

 深雪は可愛いものが好きな割には、自分は格好よくありたいらしい。

「み、深雪先輩の魅力は可愛いところですから!」
「可愛い……やっぱり、格好良い先輩にはなれてなかったんだね」
「そ、それは……」

 ちび助は口元を、もごもごと動かす。
 どうやら、嘘がつけないタイプのようだ。

「嘘でも、格好いいって言ってあげればいいのに」
「奈々先輩にならどーでもいいですけど、深雪先輩には嘘なんてつきたくありませんから!」

 ちび助の言葉に、深雪はますます落ち込んだ。
 遠回しに、格好良くないって言われたのと同じこと。
 その事実に気づいた後輩は、あわあわとし始めた。

「通路の邪魔なのだけれど。退いてくれないかしら?」

 後ろから声がした。

 振り向くと、藤宮が私達――というより、私? を睨んでいる。

 慌てて横に退いた。

 藤宮は鼻を鳴らすような勢いで私達の横を早足で通り過ぎていった。

 確かに横一列で並んでいたが、校門から玄関までの道幅はかなり広い。
 そのため三人ぐらい並ぼうがなんの問題もない――筈だ。
 校則的に問題があるかの確認はしていないが、六人ぐらいで横一列で並んでいる生徒もよく見かける。
 まあ、今のところは確かに、二人以上並んでいる人間は見かけない。
 
 立ち止まっていた訳ではないが、元々、深雪は歩くのがかなり遅い。
 落ち込んだことでさらに速度が低下したことは間違いないだろう。
 たから、道の真ん中を歩くべきでなかったと言われれば確かにその通りだ。

「ご、ごめんね、私のせいで」

 原因が、よーく分かっていらっしゃるようだ。
 しかし、何故私が睨まれた?

「深雪先輩は何も悪くありませんよ。あんなの、ちょっと横に行ってくれればいいだけじゃないですかぁ」

 ちび助はぷりぷりと怒っている。

「私のために怒ってくれてありがとうね」

 そう言って、深雪はちび助の頭を撫でた。すると、デレッデレの顔に早変わりする。

 あぁ、一体なんて顔をしているのだ。

 写真にでも撮って見せてやるべきかもしれない。


 
 入口に近づくと、ちび助は声を上げ急に走り出した。
 そして、地面に落ちていた物を拾うとそれをめくった。
 どうやら生徒手帳のようだ。
 
 ちび助はこちらに振り返る。
 何故か、ちょっと悪い顔をしている。

「すみません、今日のお昼はお二人で食べてください」
「うん 分かったよ。でも、何かあったの?」
「早ければ、お昼休みのうちにでもご報告ができるかもしれません」
「その手帳、ちゃんと返してあげなよ」
「そんなの、当たり前ですから!」
 
 何を企んでいるかは知らないが、何事もないことを祈ろう。
 正直、あまり関わりたくはない。
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