幼馴染の少女に触れたくても触れられない私は代わりに彼女を求めた……キスをしたのもそんな目で私を見上げるあんたのせいなんだよ

tataku

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第2章

第18話

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 深雪と二人だけの昼休みは、約一月ぶり。
 
 なんだかんだでずっとちび助が居座っていた。だから、あいつがいないとこんなにも静かで、落ち着いた時間を過ごせるとは。

 私としては、凄く満足だ。しかし、深雪はどう思っているのだろうか? 何故か、私は不安になっている。

「こう言う落ち着いた昼休みも、たまにはいいもんだね」

 そう言って、深雪はのほほーんと笑う。

 彼女の言葉で喜び、直ぐに落ち込んだ。

 深い意味などないのだろう。でも、たまに――という言葉は、私を奈落の底へ突き落とす。


 昼休みの終わり頃にちび助は顔を出し、テンション高めに現れた。

「放課後は帰り道にあるカフェへ寄りましょう!」

 チャイムが鳴り、私達の返事も聞かずに教室を出て行った。



 ***



 放課後、ちび助の提案通りにカフェへ寄った。

 チェーン店で中は広々としている。人が埋まることはまずないので、長い事滞在していても特に問題はない筈だ。
 ここのカフェは安く、それなりに美味しい――が売りだと思っている。

 店員さんに、テーブル席へ案内された。
 ちび助は当たり前のように――深雪の隣に座り、私は一人向かい側のソファに座る。
 二人は飲み物を頼んだが、私は食事を頼んだ。このあとスーパーに寄って云々はあまりにも面倒くさい。静姉には後でメール一本ぐらいは送信してやろう。家に帰っても飯は何もないと。

「それで、こんなところに呼びつけていったい何をするつもり?」

 何故か、奴は目的を話そうとしなかった。

 ふふふ――と笑いながら、チビ助はカバンの中から数冊の雑誌を取り出した。

「今日はお二人の好みを丸裸にしちゃいますよー」
「え? 何それ、帰っていい?」
「ふざけないでください。特大ハンバーグセットなんて、奈々先輩しか食べられませんから」

 別にふざけたつもりなどない。そっちのほうが余程ふざけていると思うのだが?

「因みにこれは、奈々先輩にとってはメリットしかないんですから、私に感謝してくださいよね」

 と、訳の分からないことを言った。

 テーブルの上に一冊の雑誌を置かれる。
 
『美少女大図鑑~きっとあなたも彼女に恋をする~』

 そのタイトルを見て、ギョッとした。

「何でそんなものを学校に持ってきてんの?」
「ああ、それは昼休みが終わった後、速攻で自分の部屋から持ってきたんですよ」
「え? 授業サボったの? これのために?」
「そうですよぉ、私の熱意に感心してください」

 何故か誇らしげな顔をされた。

「馬鹿じゃないの?」
「な、なんですと!」
「小春ちゃん、駄目だよ。授業をさぼったら」

 深雪は人差し指を立てて、注意した。ちょっと、ドヤ顔になっている。
 
「す、すみません」

 思った以上に、チビ助は落ち込んだ。

「お、怒っていないからね!」

 深雪は慌てて、手を何度も横に振った。

 
 
 チビ助は気を取り直して、キリッとした顔をする。
 
「深雪先輩も、奈々先輩も――テレ屋なので、どの有名人が好きだとか、どの人がタイプだとか、決して口にしないので、この美少女たちを見て頂き、性欲を刺激するタイプを指さしてください。ここ、凄く重要ですからね。もう一度言いますよ。お二人の性欲を刺激する相手を私に教えてください」

 露骨なことを平然と口にする。突っ込みたいが、下手に口にできない。
 初心な深雪は、もう既に照れたご様子である。
 それにしても、何故そのような相手をちび助に教えねばならないのかが私には理解ができない。
 
「それ――普通、男子の図鑑を持ってくるべきなんじゃないの?」
「え? 奈々先輩、それ、本気で言ってます? 私達は女の子が好きなんです。女の子に恋する女の子なんです。いい加減、認めてくださいね」

 チビ助は何の迷いもなく発言する。

 私は肯定も――否定もせず、口を閉じた。

 深雪は曖昧に笑う。――その表情になる、心の動きが分からない。

 本当に――彼女も、そうなのだろうか? 付き合いは長いが、恋について――話したことなどない。だから、彼女について知りながら――知らないこともある。

 私が口にできなかったことを、チビ助は隠すことなく発言する。それが憎らしく――どこか、羨んでしまう。

 チビ助は鼻歌を鳴らしながら、ページを捲っていく。チビ助が反応するタイプは一貫している。

「でも、やっぱり深雪先輩の方が美人ですし、魅力的ですよねー」

 そんなふざけた事を毎度口にするたび、深雪は顔を赤くし、私は苛立った。



 一冊の雑誌が閉じられる。

 チビ助の前にはメロンソーダ、深雪の前にはオレンジジュース。彼女達は一口も飲んでいないが、私は水を何度か口にしている。
 そして、私はハンバーグを頬張り、味を堪能中。外食など滅多にしないため、この時間は凄く貴重である。

「いやいやいやいや、ちょっと待ってくださいよ! 何か私しか指さしてませんでしたよ? このままじゃ私ひとりが性癖を暴露しただけで終わるじゃないですか!」
「それが快感なんでしょ?」
「私を変態にしないでくれます!?」

 チビ助はテーブルを両手で何度も叩いた。

 深雪はあわあわとしながらも、何とか目の前の後輩を落ち着かせようとしている。

「私の頭をなでていただければ、今すぐにでも落ち着きましょう」

 深雪に頭を撫でられ、チビ助はデレデレとした顔を何故か私の方に向けてきた。

 あぁ、本当に苛立たしい。
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