30 / 77
第2章
第30話
しおりを挟む
門を潜り、我が家の敷地を踏みつけた。
玄関までの道の途中、派手な赤いバイクが置かれている。正直、邪魔だ。
中に入り、赤い靴の横に自分のを脱ぎ捨てる。
縁側の廊下を歩き、一番手前にある障子戸を開けた。
茶の間が視界に映る。
畳の上に寝転がり、赤いジャージに身を包んだ人間が一人。
私は軽く彼女のお尻を蹴った。
「……何よ、もう帰ってきたの?」
静姉はお尻をさすると、のそのそと起き上がる。瞼をこすり、欠伸をした。
「もうすぐ、7時なんだけど。もしかして、ずっと寝てた?」
「そんなことないわよー」
気だるげな声。彼女は部屋の真ん中にあるちゃぶ台の方へ倒れこみ、机に頬をこすりつける。
これでも一応、私の保護者だ。
「ご飯は?」
平日は私の担当だが、土日は静姉の番だ。
「何よー、食べてこなかったの?」
「夜はいるって言ったじゃん」
「覚えてないわねー」
私はため息を吐く。
まぁ、よくあることだ。
「で、どうするつもり?」
私は腰に手をやり、だらだらとした女を見下ろす。
「さー」
「つまり静姉は今日、何も食べないってことでいいの?」
「はい? 何いってんのー。食べるに決まってるんですけどー。何せ、今日は私、何も食べていないんだから。っていうかありえなくない? 簡単に食べられるものが何も置いてないし、お菓子もないんだから」
顔を上げ、文句を言ってきた。さらには唇を尖らせてくる。
本当、うざい顔だ。
私は思う。
ありえないのは、あんたの頭の方だと。
「いいから、さっさと何か作ってよ。お腹、減ってるんだよね?」
「嫌な奴ねー。私が何も作れないと知ってるくせにさー」
「そんなの、やる気の問題だから。今どき、ネットで調べれば直ぐに分かることじゃん。いい加減、加工食品ばかりでなく自分で作ったら? 無駄にお金がかかるんだし」
「うわー、これだから嫌なのよー。何でもそつなくこなせる奴は、できない人間の気持ちってものが分からない。そう、優しさってものがない。君はその、一番大切なものが欠けているのよ。私を敬う心遣いと言うものが」
「御託はいいから、さっさと何か作れよ」
「うわーこわー。何よその目は、私を犯す気?」
そう言って、静姉は自分の体を抱きしめた。
一体、どんな目だよ。
「自慢のバイクで買い出しに行く気は?」
「ないわねー。だって私、疲れてるんですけど? だから、優しくしてよー」
私も疲れているのだが?
静姉は全く動く気配がない。
この状態の彼女を動かすのは、かなりの手間だ。
再びため息を吐くと、隣の台所へ向かうことにした。
「流石、奈々。愛しているわー。私の分もお願いね」
「静姉の分は作る気ないから」
そう言って、私は部屋を出ていった。
ありあわせで作ったものを机の上に並べる。
「私の箸と食器は?」
「知らない」
私の言葉に文句を言いながらも、静姉は隣から箸と食器を持ってくる。
特に見たいものはないが、何となくテレビをつけた。
真面目くさったキャスターが、真面目な振りをして、遠い世界の話をしている。
正直、私には関係のない話だ。
静姉は私に断りもなく、大皿の料理を自分の食器に移し、それを口にする。
「静姉の分、作ったつもりないんだけど?」
「本当に、奈々は素直じゃないわねー。これだけの量、どう見たって一人分じゃなさそうだけど?」
「だからって、それが静姉の分と決まったわけじゃないんだけど」
「そんなことより私、ハンバーグが良かったんだけどなー」
本当に遠慮がない。
だけどそれが、静姉だ。
体力を回復させてやったので、後片付けを任せることにした。私は彼女の仕事ぶりを確認した後、自分の部屋へ帰ることにした。
長い縁側の廊下を歩く。
部屋に入る前、空を見上げる。
時刻は8時過ぎ。
ちび助が言ったように、星空が見える。
しかし、私には見つけられなかった。
私と違って――二人は、見つけられたのだろうか? 双子座の星を。
玄関までの道の途中、派手な赤いバイクが置かれている。正直、邪魔だ。
中に入り、赤い靴の横に自分のを脱ぎ捨てる。
縁側の廊下を歩き、一番手前にある障子戸を開けた。
茶の間が視界に映る。
畳の上に寝転がり、赤いジャージに身を包んだ人間が一人。
私は軽く彼女のお尻を蹴った。
「……何よ、もう帰ってきたの?」
静姉はお尻をさすると、のそのそと起き上がる。瞼をこすり、欠伸をした。
「もうすぐ、7時なんだけど。もしかして、ずっと寝てた?」
「そんなことないわよー」
気だるげな声。彼女は部屋の真ん中にあるちゃぶ台の方へ倒れこみ、机に頬をこすりつける。
これでも一応、私の保護者だ。
「ご飯は?」
平日は私の担当だが、土日は静姉の番だ。
「何よー、食べてこなかったの?」
「夜はいるって言ったじゃん」
「覚えてないわねー」
私はため息を吐く。
まぁ、よくあることだ。
「で、どうするつもり?」
私は腰に手をやり、だらだらとした女を見下ろす。
「さー」
「つまり静姉は今日、何も食べないってことでいいの?」
「はい? 何いってんのー。食べるに決まってるんですけどー。何せ、今日は私、何も食べていないんだから。っていうかありえなくない? 簡単に食べられるものが何も置いてないし、お菓子もないんだから」
顔を上げ、文句を言ってきた。さらには唇を尖らせてくる。
本当、うざい顔だ。
私は思う。
ありえないのは、あんたの頭の方だと。
「いいから、さっさと何か作ってよ。お腹、減ってるんだよね?」
「嫌な奴ねー。私が何も作れないと知ってるくせにさー」
「そんなの、やる気の問題だから。今どき、ネットで調べれば直ぐに分かることじゃん。いい加減、加工食品ばかりでなく自分で作ったら? 無駄にお金がかかるんだし」
「うわー、これだから嫌なのよー。何でもそつなくこなせる奴は、できない人間の気持ちってものが分からない。そう、優しさってものがない。君はその、一番大切なものが欠けているのよ。私を敬う心遣いと言うものが」
「御託はいいから、さっさと何か作れよ」
「うわーこわー。何よその目は、私を犯す気?」
そう言って、静姉は自分の体を抱きしめた。
一体、どんな目だよ。
「自慢のバイクで買い出しに行く気は?」
「ないわねー。だって私、疲れてるんですけど? だから、優しくしてよー」
私も疲れているのだが?
静姉は全く動く気配がない。
この状態の彼女を動かすのは、かなりの手間だ。
再びため息を吐くと、隣の台所へ向かうことにした。
「流石、奈々。愛しているわー。私の分もお願いね」
「静姉の分は作る気ないから」
そう言って、私は部屋を出ていった。
ありあわせで作ったものを机の上に並べる。
「私の箸と食器は?」
「知らない」
私の言葉に文句を言いながらも、静姉は隣から箸と食器を持ってくる。
特に見たいものはないが、何となくテレビをつけた。
真面目くさったキャスターが、真面目な振りをして、遠い世界の話をしている。
正直、私には関係のない話だ。
静姉は私に断りもなく、大皿の料理を自分の食器に移し、それを口にする。
「静姉の分、作ったつもりないんだけど?」
「本当に、奈々は素直じゃないわねー。これだけの量、どう見たって一人分じゃなさそうだけど?」
「だからって、それが静姉の分と決まったわけじゃないんだけど」
「そんなことより私、ハンバーグが良かったんだけどなー」
本当に遠慮がない。
だけどそれが、静姉だ。
体力を回復させてやったので、後片付けを任せることにした。私は彼女の仕事ぶりを確認した後、自分の部屋へ帰ることにした。
長い縁側の廊下を歩く。
部屋に入る前、空を見上げる。
時刻は8時過ぎ。
ちび助が言ったように、星空が見える。
しかし、私には見つけられなかった。
私と違って――二人は、見つけられたのだろうか? 双子座の星を。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」
三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。
クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。
中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。
※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。
12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。
身体だけの関係です 原田巴について
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789
作者ツイッター: twitter/minori_sui
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
身体だけの関係です‐原田巴について‐
みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子)
彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。
ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。
その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。
毎日19時ごろ更新予定
「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。
良ければそちらもお読みください。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060
恋してしまった、それだけのこと
雄樹
恋愛
小学3年生の女の子が、母の妹に恋をした。
星野未来(ほしのみく)は、母の妹である水瀬沙織(みなせさおり)に恋をした。
出会ったとき、未来は8歳。
沙織は20歳の大学生だった。
優しくて、少し不器用で、どこか寂しそうなその人が好きな人は、私ではなく…私の「母」だった。
一生でたったひとつの初恋。
言葉にできない想いを抱えたまま、少女は季節を重ねていく。
あなたは私の叔母で。
あなたは私と同性で。
あなたは私と12歳も歳が離れていて。
あなたが好きな人は…私じゃなくて。
それでも、この初恋を諦めることは出来なかった。
これは、ひとりの少女の、恋のはじまりと記憶の物語。
【完結】【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて
千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、夫・拓馬と娘の結と共に平穏な暮らしを送っていた。
そんな彼女の前に現れた、カフェ店員の千春。
夫婦仲は良好。別れる理由なんてどこにもない。
それでも――千春との時間は、日常の中でそっと息を潜め、やがて大きな存在へと変わっていく。
ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。
ハッピーエンドになるのでご安心ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる