幼馴染の少女に触れたくても触れられない私は代わりに彼女を求めた……キスをしたのもそんな目で私を見上げるあんたのせいなんだよ

tataku

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第3章

第33話

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 期末試験が無事終わった。
 今日は金曜日。
 その1週間後の金曜日に球技大会が行われることになっている。
 しかもその1週間、部活は休みとなり、その競技の練習が推奨されている。
 この学園はどちらかと言えば文化系よりなのに、何故か球技大会には力を入れている。それは、今の学園長になってからの方針らしい。

 来週の月曜日のロングホームで何の競技をするか割り振りが行われる予定。
 
 競技は全部で4種目。
 室内で行うのはバスケットボール、卓球。
 外で行うのはバレーボール、フットサル。
 クラスごとに別れて、戦う勝ち抜き戦であり、学年関係なく争うバトルロイヤルとなっている。
 
 何より、1回戦で負けてしまえば、後は見学するだけでいい――という破格の対応が魅力的だ。
 
 卓球だけは団体戦でなく個人戦。そのため、運動神経が悪い人間は自然と卓球の方に流れるのは必然だ。
 
 3位以上とった場合、表彰されることとなる。特に何か景品があるわけではない。ただ、表彰されるだけ。
 ――それだけのために、チーム一丸となって頑張ろうとプレッシャーをかけてくる奴がいる。
 私からしたら、そんな奴は人を蝕む病原菌みたいなものだと思う。
 
 去年はそんな奴のせいで、団体戦が面倒くさいことになった。そのため、今年は絶対に卓球だ。それ以外の選択肢など私にはない。



 試験が終わった後の帰り道、自然と球技大会の話題になった。

「去年はお二人共、何の競技にしたんですか?」

 深雪は微妙な顔をする。
 嫌なことを思い出してしまったのだろう。

「私は……卓球、だよ」
「深雪先輩なら、余裕で優勝ですね!」

 ――んな訳ないだろ。頭のネジでも、緩んでんのか?

「……1回戦で負けたからね」

 深雪は恥ずかしそうに、小声でボソボソと口にした。

「大丈夫ですよ、深雪先輩! 深雪先輩なら、例え1回戦で負けようとも優勝ですから!」

 と、謎理論が飛び出す。

 そんな意味不明な言葉に、何故か深雪は照れた顔をした。

 馬鹿なのか?

 そうなのか?

 まぁ、分かってはいたことだけど。

「奈々先輩も同じ卓球ですか?」
「違うよ。奈々ちゃんはバスケ。凄く格好良かったんだよ。大活躍だったし」

 何故か興奮気味に言う深雪の姿を見て、私は不覚にもときめいてしまった。

 ちび助の悔しげな顔を見て、私はとってもいい気分になる。

「団体競技で協力的な奈々先輩なんて想像できないんですけど?」

 特に協力するつもりはないが、私のせいで負けた――とならないための努力はちゃんとする。
 早く負けたいがために、心の中で味方のミスを願い続ける程度で済ませている。
 
「一年で優勝したのは初めてのことだったらしいよ」

 深雪は自分のことのように、誇らしげに言った。

「へー、凄いですねー」

 ちび助は私を見て、棒読みで讃えた。

「言っとくけど、私が活躍した訳じゃないから。そのときのクラスには、一年でバスケ部のエースだった奴がいたからね」

 小身者なため、褒められ続けると居心地が悪くなる。

「エース? もしかして、小倉さんのことです?」
「へー、知ってるんだ」
「知ってるも何も、あの人を知らない人なんて多分、うちの高校にはいないですよね?」
「まぁ――分からなくもないか」

 試合中、小倉への声援は異常だったし、あいつの周りには常に人だかりができている。
 
「その反応が、私には訳が分かりませんよー。普通レベルだったうちのバスケ部を、全国トップレベルにしたのはあの人ですからね。それに、バスケ以外でも、常に話題になっているじゃないですか。ファンクラブがあって、学級新聞のトップページもいつもあの人ですからね」

 バスケのことは知っていたが、ファンクラブのことなんて初耳だし、学級新聞なんて――気にしたこともない。

「まぁ、いわゆる女子校の王子様って奴ですかね」

 その称号に、私は納得した。あいつにはお似合いだと思う。

「と言うことは、今年も奈々先輩はバスケということですね」

 何故そのような結論になるのかが分からない。

「今年は絶対に卓球だってもう決めてあるから」
「そんなに卓球好きなんですか?」
「まさか」

 そう言って、私は鼻で笑う。

「それなのに、もう絶対に卓球だって決めてるんですか? 訳が分かんないんですけどー」

 あんたのほうが訳わかんないから、大丈夫。

「とにかく、奈々先輩はバスケってことでお願いしますよ」
「は? 意味分かんないんだけど」
「何故分からないんですか! 私とバスケで勝負するってことですよ!」
「え? そんなに背が低いのに?」
「はい!? 別に低くないですけど!」
「小春。残念だけど、頭の上にあるお団子は身長に加算されないからね。それ、分かってる?」
「別に、そんなこと分かってますけど!」

 私はつい、鼻で笑ってしまった。

「何ですかそれ! 今、笑いましたよね! 笑っちゃいましたよね!」
「そんなことないから」
「ありますよね! そんなことありますよね!」

 熱くなるちび助を、深雪はなだめにかかった。

「と、とにかく、バスケで勝負ですからね!」

 ちび助は、私に向かって指を突きつけた。

「バスケって団体競技なんだけど? 個人で勝敗を決めるなら普通、卓球の方なんじゃないの?」
「そんなことはどうでもいいんです。奈々先輩のチームに勝って、深雪先輩の頭の中にいる奈々先輩の活躍を私で上塗りして見せますから!」
「あんたルール知ってる? 負けた時点で次の試合はないからね」

 私の言葉を聞き、ちび助は何故かドヤ顔を私に向け、腕を組んだ。

「大丈夫です。私と奈々先輩は必ず決勝であたります。これは、運命です」

 そのあまりにも自信たっぷりな声に、私はつい感心してしまった。
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