幼馴染の少女に触れたくても触れられない私は代わりに彼女を求めた……キスをしたのもそんな目で私を見上げるあんたのせいなんだよ

tataku

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第3章

第35話

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 昼休み、私と深雪は静姉に仕事を頼まれたため、ちび助だけ先にいつもの場所に向かって貰った。文句を言われたが、藤宮を待たせるわけにもいかない。

 まぁ、彼女は私達を待っているわけではないんだろうけど。

 それにしても、意外だと思う。藤宮がベンチに座り、私たちはその隣でレジャーシートを広げて喧しく食事をしていることが。

 それについて、不満そうな顔をしながらも、文句ひとつ言わない。まるで私達を受け入れてくれているように見える。本当、不思議な話だ。


 
 いつもより10分以上遅れて、私と深雪は待ち合わせ場所に向かう。

 そこに予想外の人物が一人紛れ込んでいた。

 その人物は――バスケ部エースの小倉。
 身長は180cm近くもあり、物凄く足が長くモデル体型。髪はショートにしており、顔はイケメン野郎で、本当に気に食わない人物だ。

 そんな小倉と藤宮がベンチ前で向かい合わせに立っていた。そして、ちび助が二人の前に立ち塞がり、まるで小倉から藤宮を守るよう――必死に両腕を広げている。

 私は嫌な予感がして、三人の所まで走った。

 ちび助と藤宮は小倉を睨みつけている。

「何があった?」

 そう言って、私は彼女たちの前で足を止めた。深雪も足を止め、私の背中に隠れる。

 小倉は私の方に振り向くと、困った表情。

 そんな顔は初めて見た。いつも自信に満ちた顔しかしないのに。

 小倉はすぐに笑みを浮かべると、キザったらしく髪をかき上げた。

「奈々、このあと少しだけ顔を貸して貰ってもいいだろうか」
「は?」

 何で関係のない私が?

「奈々先輩! そんな奴、コテンパンにしてやってくださいね!」

 だから、何で関係のない私が、そんなことをしなければならない?

「ふふふ、仔犬くんは本当に忠義が厚いようだね。気に入ったよ。君はいずれ立派な犬になれるだろう。あの、忠犬ハチ公のようにね」

 小倉は芝居がかった口調でふざけたことを口にする。しかし、本人は至って真面目だ。

「な、なんで私が仔犬なんですか!?」
「心配しなくてもいい、いずれ立派な犬になれると僕は言ったんだよ。あの、忠犬ハチ公のようにね」

 小倉はいつもの自信に満ちた顔へ戻っていた。いつもなら、彼女の周りに纏わりつく腰巾着共が黄色い声を上げていることだろう。

「だから、なんで私を犬扱いするんですか!」

 正直な話、犬扱いしたくなる気持ちは良く分かる。

「ふふふ、僕の詩的な表現さ。君には少し早すぎたかな? 気にしなくても構わないよ。いずれ分かるさ」
「気にするから言ってるんですけど!?」
「藤宮さん、僕の気持ちは本気だよ。球技大会で優勝し、君の気持ちを盗んで見せよう」
「ちょ、なんか私のこと、無視してませんかね?」

 小倉は優雅に回れ右を行うと、私の方に視線を向けた。

「それでは奈々、向こうで――僕と少しだけお話しようか」

 彼女は私の返事を聞くことなく歩き出す。
 私がついてこないことなど、少しも疑っていないようだ。何か意地でもついていきたくないが、そんなことをすれば確実に、後で面倒くさいことになる。

 私は少しだけ躊躇したものの、小倉の後を追った。

「奈々先輩、後は任せましたよ!」

 と、ちび助の無責任な言葉を背中に受けながら、私は足を動かした。
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