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第3章
第38話
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ロングホーム。
予定通り、競技の割り振りを決めることとなる。
クラス委員長である九条が黒板の前に立ち、軽く挨拶をした。そして、黒板にそれぞれの競技名を書いていく。
「まずは、バスケに参加したい人、挙手してください」
3 人だけ手が挙がる。おそらく、九条が言っていたバスケ部なのだろう。顔は知っているが、名前は覚えていない。
「3人ですね。それでは私も挙手しますので、これで4人です」
九条はバスケと書かれた下に4人分の名前を書く。
「あと1人です。他にはいませんか?」
私は九条と目が合った。直ぐに視線を下げる。
何故、誰も手を上げない!
「月城先生、このままではいつまでたっても決まらないと思います」
九条は静姉の方に体を向けた。
静姉は椅子に足を組んで座っていたが、何故か立ち上がり、白衣のポケットに手を突っ込んだ。
「つまり、私が誰にするか決めればいいわけね」
何故そうなる!?
「ええ、よろしくお願いします」
いや、良くないだろ!
「じゃあ、奈々、君がやりなさい。だって昔、結構バスケしてたじゃない」
静姉は笑顔でそう言った。
「それでは、月城さん、お願いしますね」
九条も笑顔で、黒板に私の名前を書いた。
――頭が真っ白になり、何か発言しようとしたときには、もう次の競技に話が移行していた。
他の競技も定員割れだったが、何故か静姉の独断による決定もなく、次に移行していく。
これ、どういうこと?
これなら、バスケだって全員決まってなくても取り敢えず次の競技に移行するだけでよかったのでは?
最後の卓球だけ、異常に多い数の手が挙がった。その中には、当然――深雪の姿がある。このクラスだけでなく、この学校は全体的に文化系よりである。そのため、団体競技よりは個人競技の方に人は流れやすい。
誰にするかで、じゃんけんが始まる。あんなに、真剣な深雪の姿はあまり見ることがない。
あ、かなり喜んでる。
どうやら、勝ったらしい。そして、大げさに喜んでしまった自分に気づき、かなり恥ずかしそうに顔を伏せた。
なんだろう。あのような深雪の姿を見てしまうと、にまにまが止まらなくなる。そのため、私は自分の口元を両手で隠した。やはり、深雪は最高だ。何故なら、彼女はいつだって私の心を安定させてくれる。先程のイライラも、いつのまにか落ち着いていた。
卓球であぶれた人間たちは、黒板の前に集まり、話し合いにより何の競技にするかを決めていく。
幸いなことに、このクラスは比較的大人しい人間が多い。そのため、特にトラブルやヤジが飛ぶことなくすんなりと決まった。本当に、去年とは大違いだ。
「それでは皆さん、良い球技大会にしましょう」
最後に、九条は笑顔でこの話し合いの場を締めた。
ロングホームが終わり、帰り支度を始める。その最中、ふと――アンニュイな気持ちとなり、窓に写る空を眺めた。
雨が降ったところで室内競技は中止とならない。
深雪がやって来たため、直ぐに帰り支度を済ませ、立ち上がろうとしたとき、声をかけられた。
「月城さん、頑張りましょうね」
私の机の前に、九条とその手下らしき3人組がやって来た。
「どうしたの、月城さん。そのような顔つきでは、優勝できるものも、出来なくなるわ」
九条は腰に手を置き、仕方ないわね――とでも言いたげな顔をする。
「水瀬さん、申し訳ないのだけれど、球技大会まで月城さんを貸して貰ってもいいかしら?」
九条の言葉に、深雪は無言で何度も首を縦に振った。
その時、私と深雪のスマホに着信音が鳴る。
九条は右手を前に出し、どうぞ、と口にした。
私と深雪はスマホを見る。
『私は今日から、チームでバスケの練習をしますので、球技大会までは残念ながら昼と放課後もご一緒できません! しかし、私の心の中には常に深雪先輩がいますから! そして奈々先輩、安心してください。深雪先輩の何万分の一ぐらいには奈々先輩のことも気にかけていますからね!』
3人のグループ内にちび助からのメッセージが来ている。そのあまりにもふざけた内容に私は返信することなく、直ぐにスマホを仕舞った。
「それでは月城さん、そろそろ行きましょうか。時間は凄く貴重なのよ」
九条は笑顔で催促してきた。
私は一度も、了承していないのだが?
「そ、それじゃー、私はもう行くね」
深雪は小声でぼそぼそと口にし、手を振りながら離れていく。
「水瀬さん、また明日」
九条たちは笑顔で手を振った。
それに対して、深雪は引きつった笑みを浮かべ、逃げるようにして教室を出て行った。
「水瀬さんは、本当に可愛らしいわね」
本当にそう思っていただけるのなら、実にいいことだ。
深雪みたいにおどおどとしたタイプは意外と女子に嫌われやすい。小学校でも、中学校でも――深雪を見てあざ笑い、嫌がらせをする奴らがいた。
私はなんとなく、窓の方に視線を向けた。
去年も、そのような奴らはいたが、小倉が深雪を庇ってくれたため、かなり平和だった。さすが、人気者は違うなぁーと感心したものだ。小倉のことは正直、うざいと感じているが、その点に関しては本当に感謝している。
「月城さん、何を悠長にしているのかしら。先程も言ったと思うけれど、時間は有限なのよ」
九条は笑顔で私の肩に手を置いた。
優雅な笑みを浮かべながら、ものすごい圧をかけてくる。
これはあれだ。逃げても無駄だと私は理解した。
予定通り、競技の割り振りを決めることとなる。
クラス委員長である九条が黒板の前に立ち、軽く挨拶をした。そして、黒板にそれぞれの競技名を書いていく。
「まずは、バスケに参加したい人、挙手してください」
3 人だけ手が挙がる。おそらく、九条が言っていたバスケ部なのだろう。顔は知っているが、名前は覚えていない。
「3人ですね。それでは私も挙手しますので、これで4人です」
九条はバスケと書かれた下に4人分の名前を書く。
「あと1人です。他にはいませんか?」
私は九条と目が合った。直ぐに視線を下げる。
何故、誰も手を上げない!
「月城先生、このままではいつまでたっても決まらないと思います」
九条は静姉の方に体を向けた。
静姉は椅子に足を組んで座っていたが、何故か立ち上がり、白衣のポケットに手を突っ込んだ。
「つまり、私が誰にするか決めればいいわけね」
何故そうなる!?
「ええ、よろしくお願いします」
いや、良くないだろ!
「じゃあ、奈々、君がやりなさい。だって昔、結構バスケしてたじゃない」
静姉は笑顔でそう言った。
「それでは、月城さん、お願いしますね」
九条も笑顔で、黒板に私の名前を書いた。
――頭が真っ白になり、何か発言しようとしたときには、もう次の競技に話が移行していた。
他の競技も定員割れだったが、何故か静姉の独断による決定もなく、次に移行していく。
これ、どういうこと?
これなら、バスケだって全員決まってなくても取り敢えず次の競技に移行するだけでよかったのでは?
最後の卓球だけ、異常に多い数の手が挙がった。その中には、当然――深雪の姿がある。このクラスだけでなく、この学校は全体的に文化系よりである。そのため、団体競技よりは個人競技の方に人は流れやすい。
誰にするかで、じゃんけんが始まる。あんなに、真剣な深雪の姿はあまり見ることがない。
あ、かなり喜んでる。
どうやら、勝ったらしい。そして、大げさに喜んでしまった自分に気づき、かなり恥ずかしそうに顔を伏せた。
なんだろう。あのような深雪の姿を見てしまうと、にまにまが止まらなくなる。そのため、私は自分の口元を両手で隠した。やはり、深雪は最高だ。何故なら、彼女はいつだって私の心を安定させてくれる。先程のイライラも、いつのまにか落ち着いていた。
卓球であぶれた人間たちは、黒板の前に集まり、話し合いにより何の競技にするかを決めていく。
幸いなことに、このクラスは比較的大人しい人間が多い。そのため、特にトラブルやヤジが飛ぶことなくすんなりと決まった。本当に、去年とは大違いだ。
「それでは皆さん、良い球技大会にしましょう」
最後に、九条は笑顔でこの話し合いの場を締めた。
ロングホームが終わり、帰り支度を始める。その最中、ふと――アンニュイな気持ちとなり、窓に写る空を眺めた。
雨が降ったところで室内競技は中止とならない。
深雪がやって来たため、直ぐに帰り支度を済ませ、立ち上がろうとしたとき、声をかけられた。
「月城さん、頑張りましょうね」
私の机の前に、九条とその手下らしき3人組がやって来た。
「どうしたの、月城さん。そのような顔つきでは、優勝できるものも、出来なくなるわ」
九条は腰に手を置き、仕方ないわね――とでも言いたげな顔をする。
「水瀬さん、申し訳ないのだけれど、球技大会まで月城さんを貸して貰ってもいいかしら?」
九条の言葉に、深雪は無言で何度も首を縦に振った。
その時、私と深雪のスマホに着信音が鳴る。
九条は右手を前に出し、どうぞ、と口にした。
私と深雪はスマホを見る。
『私は今日から、チームでバスケの練習をしますので、球技大会までは残念ながら昼と放課後もご一緒できません! しかし、私の心の中には常に深雪先輩がいますから! そして奈々先輩、安心してください。深雪先輩の何万分の一ぐらいには奈々先輩のことも気にかけていますからね!』
3人のグループ内にちび助からのメッセージが来ている。そのあまりにもふざけた内容に私は返信することなく、直ぐにスマホを仕舞った。
「それでは月城さん、そろそろ行きましょうか。時間は凄く貴重なのよ」
九条は笑顔で催促してきた。
私は一度も、了承していないのだが?
「そ、それじゃー、私はもう行くね」
深雪は小声でぼそぼそと口にし、手を振りながら離れていく。
「水瀬さん、また明日」
九条たちは笑顔で手を振った。
それに対して、深雪は引きつった笑みを浮かべ、逃げるようにして教室を出て行った。
「水瀬さんは、本当に可愛らしいわね」
本当にそう思っていただけるのなら、実にいいことだ。
深雪みたいにおどおどとしたタイプは意外と女子に嫌われやすい。小学校でも、中学校でも――深雪を見てあざ笑い、嫌がらせをする奴らがいた。
私はなんとなく、窓の方に視線を向けた。
去年も、そのような奴らはいたが、小倉が深雪を庇ってくれたため、かなり平和だった。さすが、人気者は違うなぁーと感心したものだ。小倉のことは正直、うざいと感じているが、その点に関しては本当に感謝している。
「月城さん、何を悠長にしているのかしら。先程も言ったと思うけれど、時間は有限なのよ」
九条は笑顔で私の肩に手を置いた。
優雅な笑みを浮かべながら、ものすごい圧をかけてくる。
これはあれだ。逃げても無駄だと私は理解した。
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