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第3章
第39話
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5人で教室を出る。
「体育館、空いてないんじゃない?」
私は至極真っ当な意見を言った。九条みたいなやつがわんさか集まっているのだろう。正直、理解できない話だ。せっかく部活休みなのに、何故わざわざ体を酷使しようとする? 頭、おかしいのか?
「大丈夫よ。今日は本格的な練習などしないわ。どちらかと言えば、作戦会議ね。ボールだけ貰って、裏庭で軽くパスでもしながら話し合いましょう」
一番端にある2-Aの教室から、小倉が出てくる。手下らしき4人を引き連れて。
九条が足を止めたため、私たちもそうした。
小倉たちも私たちの前で立ち止まる。
「凛、あなた達もバスケの練習かしら?」
「当然だよ、楓」
睨みつける九条と違い、小倉は余裕の笑みを浮かべている。
「今回は、去年以上にやる気があるからね」
「あら、どうして?」
「それは、奈々に勝ちたいからだよ。それも圧倒的な勝利でだ」
「……どういうこと? 私ではなく――なぜ、月城さんなの? あなたに勝てる相手は私だけよ」
「楓が? おかしなことを言うね。楓は僕に一度も勝てたことがないじゃないか」
小倉は心底、不思議そうな顔をした。
嫌味でも何でもなく、素直な意見なのだろう。それだけに、残酷だと思う。
案の定、九条は今まで見たこともない顔をしていた。
「付き合いも長いから、君の実力はちゃんと把握しているよ」
そう言って、小倉は実に爽やかな笑みを浮かべた。
「とはいえ、ちゃんと勝ち上がってくれよ。そうしないと、不戦勝となってしまうからね」
「ふざけんな!」
いつも冷静な九条の怒鳴り声に、私はとうぜん驚いたが、小倉もかなり仰天したような顔をした。
「ど、どうしたんだ楓。いきなり怒鳴ったりして。君らしくないぞ。何かあったのか?」
「どうせ、それもこれも藤宮のためでしょ!」
「な……」
小倉は絶句する。
「何故、それを――」
「それはそうでしょ? だって、私はずっとあなたを――」
途中で言葉を止め、悔しそうに唇を噛んだ。
何か変な空気が流れ始める。
「小倉」
九条以外の目が私に集まった。
あぁ、本当にうざい。
「九条は私たちのリーダーだから。――だから、あんまふざけたこと言わないでよ。そんなことを言うあんたは、九条より遥か下だから」
私の言葉を聞いて、小倉は苦笑した。
「すまなかった。確かに、君たちのリーダーをコケにすることは――君たちへの無礼となろう」
そう言って、小倉は頭を下げる。
そして、顔を上げると――不敵な笑みを浮かべた。
「――とは言え、最後の言葉は宣戦布告だと思わせてもらうよ。奈々、もう一度だけ言う。君には悪いが、彼女を僕のものにする。この大会で優勝してね」
一体、この球技大会にはなんの権威があるんだ?
小倉は体を後ろに向け、傍に控える手下どもを促した。
「それでは、楽しみにしてるよ、奈々。そして――楓」
振り返ることなく、小倉は歩き出し、直ぐに姿が見えなくなった。
正直、余計なことを言ってしまったと――後悔した。そのため、自己嫌悪に陥ったのだが、手下3人組にもてはやされ、少しだけいい気になる。
九条はいきなり、両手で自分の両頬を叩く。それも思いっきり。かなりいい音が廊下に響いた。
はしゃぐ3人娘は、九条の奇行により大人しくなる。
「ごめんなさい。つい、自分を見失ったわ。でも、これで最後だから」
3人はお互いの顔を見て、目配せする。
「気にすんな、リーダー」
「そうです、そうです」
「がんばー」
手下A、B、C、がそれぞれ口にする。
「みんな、ありがとう」
九条は軽く、頭を下げた。
「そして、月城さんもね」
「別に、私はなんもしていないけど」
私の言葉に、九条は笑う。
「でも、これで負けられなくなったわね」
嫌なことを言う。
でも、私も――何となく、小倉には負けたくないと思ってしまっている。正直、勝てるわけもないのに、何故そのようなことを思ってしまったのだろうか?
一瞬、藤宮の顔が思い浮かぶ――が、直ぐに頭を振った。
私は苦笑してしまう。
だって、ありえないのだから。
ふと――周りの気配に気付く。
「九条、さっさと行こう」
彼女も、自分たちが注目されていることに気づいたのか、手下を促し、そそくさとこの場を後にした。
「体育館、空いてないんじゃない?」
私は至極真っ当な意見を言った。九条みたいなやつがわんさか集まっているのだろう。正直、理解できない話だ。せっかく部活休みなのに、何故わざわざ体を酷使しようとする? 頭、おかしいのか?
「大丈夫よ。今日は本格的な練習などしないわ。どちらかと言えば、作戦会議ね。ボールだけ貰って、裏庭で軽くパスでもしながら話し合いましょう」
一番端にある2-Aの教室から、小倉が出てくる。手下らしき4人を引き連れて。
九条が足を止めたため、私たちもそうした。
小倉たちも私たちの前で立ち止まる。
「凛、あなた達もバスケの練習かしら?」
「当然だよ、楓」
睨みつける九条と違い、小倉は余裕の笑みを浮かべている。
「今回は、去年以上にやる気があるからね」
「あら、どうして?」
「それは、奈々に勝ちたいからだよ。それも圧倒的な勝利でだ」
「……どういうこと? 私ではなく――なぜ、月城さんなの? あなたに勝てる相手は私だけよ」
「楓が? おかしなことを言うね。楓は僕に一度も勝てたことがないじゃないか」
小倉は心底、不思議そうな顔をした。
嫌味でも何でもなく、素直な意見なのだろう。それだけに、残酷だと思う。
案の定、九条は今まで見たこともない顔をしていた。
「付き合いも長いから、君の実力はちゃんと把握しているよ」
そう言って、小倉は実に爽やかな笑みを浮かべた。
「とはいえ、ちゃんと勝ち上がってくれよ。そうしないと、不戦勝となってしまうからね」
「ふざけんな!」
いつも冷静な九条の怒鳴り声に、私はとうぜん驚いたが、小倉もかなり仰天したような顔をした。
「ど、どうしたんだ楓。いきなり怒鳴ったりして。君らしくないぞ。何かあったのか?」
「どうせ、それもこれも藤宮のためでしょ!」
「な……」
小倉は絶句する。
「何故、それを――」
「それはそうでしょ? だって、私はずっとあなたを――」
途中で言葉を止め、悔しそうに唇を噛んだ。
何か変な空気が流れ始める。
「小倉」
九条以外の目が私に集まった。
あぁ、本当にうざい。
「九条は私たちのリーダーだから。――だから、あんまふざけたこと言わないでよ。そんなことを言うあんたは、九条より遥か下だから」
私の言葉を聞いて、小倉は苦笑した。
「すまなかった。確かに、君たちのリーダーをコケにすることは――君たちへの無礼となろう」
そう言って、小倉は頭を下げる。
そして、顔を上げると――不敵な笑みを浮かべた。
「――とは言え、最後の言葉は宣戦布告だと思わせてもらうよ。奈々、もう一度だけ言う。君には悪いが、彼女を僕のものにする。この大会で優勝してね」
一体、この球技大会にはなんの権威があるんだ?
小倉は体を後ろに向け、傍に控える手下どもを促した。
「それでは、楽しみにしてるよ、奈々。そして――楓」
振り返ることなく、小倉は歩き出し、直ぐに姿が見えなくなった。
正直、余計なことを言ってしまったと――後悔した。そのため、自己嫌悪に陥ったのだが、手下3人組にもてはやされ、少しだけいい気になる。
九条はいきなり、両手で自分の両頬を叩く。それも思いっきり。かなりいい音が廊下に響いた。
はしゃぐ3人娘は、九条の奇行により大人しくなる。
「ごめんなさい。つい、自分を見失ったわ。でも、これで最後だから」
3人はお互いの顔を見て、目配せする。
「気にすんな、リーダー」
「そうです、そうです」
「がんばー」
手下A、B、C、がそれぞれ口にする。
「みんな、ありがとう」
九条は軽く、頭を下げた。
「そして、月城さんもね」
「別に、私はなんもしていないけど」
私の言葉に、九条は笑う。
「でも、これで負けられなくなったわね」
嫌なことを言う。
でも、私も――何となく、小倉には負けたくないと思ってしまっている。正直、勝てるわけもないのに、何故そのようなことを思ってしまったのだろうか?
一瞬、藤宮の顔が思い浮かぶ――が、直ぐに頭を振った。
私は苦笑してしまう。
だって、ありえないのだから。
ふと――周りの気配に気付く。
「九条、さっさと行こう」
彼女も、自分たちが注目されていることに気づいたのか、手下を促し、そそくさとこの場を後にした。
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