幼馴染の少女に触れたくても触れられない私は代わりに彼女を求めた……キスをしたのもそんな目で私を見上げるあんたのせいなんだよ

tataku

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第3章

第51話

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 試合が、再び再開される。

 初めて3Pシュートを打ったときから感じていたけど、感覚が研ぎ澄まされている。自分だけど自分でないようで、自分が自分を見下ろしている――そんな、変な感覚。
 そもそも、こんなに積極的に動いている時点で、いつもの自分ではない。積極的に動くと云うことは、ある意味――自分で自分の行動に責任を持たなくてはならない、ということなのだから。

 再び、私にパスが回ってくる。前回と違い、マークされている。だけど、私は大丈夫だと思った。少ない所作でシュートを打った。私を止めようと手が伸びてきたけど、もう遅い。
 私の想定通りにボールが宙を舞い、ネットを揺らす。
 特に感動はない。だって、入って当たり前だと――私はそう思ってしまっているのだから。

 変な万能感に襲われ、変な自信に満ちていた。勝てるかも知れないと――そんな馬鹿な考えが思い浮かんだ。


 
 まぁ、結論を言ってしまえば――負けた。
 そりゃーそうだろ。だって前半で、あまりにも点差があった。
 私にマークがつくようになった分、九条や手下Bにパスが渡りやすくなったため、彼女たちがしっかりと点はとってくれた。
 しかし、流石は小倉と言うべきか――次第に、彼女を止めることができずに点を取られた。
 だから、点差が全く縮まらなくなり、私たちは負けた。

 試合が終わった瞬間、九条が泣いた。手下たちが慰めに入る。
 私は我に返ったのか、急激に体の熱が冷めたような感覚に襲われ、何故か今頃になって、頭の痛みが気になりだした。我慢できないほどではないけど、何か、気になる。
 だけどそんなことより、先程までの自分を思い出し、自己嫌悪に陥った。だって、何か熱血してたし――正直、恥ずかしい。

「月城」

 九条の声。

「ありがとう。いい試合だったわ」

 本当に――そうだろうか?

「負けたのに?」
「……そうね、負けたけど――最後まで諦めずに試合ができた。それは、あなたのおかげだから」

 手下共も、私に感謝の言葉をかけてくれた。

 その言葉に――嘘は、ないような気がした。

 それにしても、コートの外に視線を向けられない。特に、藤宮の方には向きたくない。私が怪我したときのことを思い出す。あの時は何だかハイになっていた。だから詳しくは覚えていないけど――なんだかか、凄く馬鹿なことを言った気がする。

 選手たちが集まり、最後の挨拶をした。

 これで、私の球技大会は終わる。

「奈々、君には驚かされたよ。とても熱くて、とてもいいプレイだった」

 小倉は笑顔でそう言うと、私の肩を叩く。

 嫌味で言っているわけではないのだろうけど、あまりもう思い出したくはない。あんな自分。

 小倉は先にコートを出た。
 黄色い声と共に、女子に囲われる。

 いいご身分だなぁーと私は思った。

 私がコートを出ると、深雪とちび助が走り寄ってきた。そして、笑顔で私を讃えてくれる。
 小倉ほどではないけど、私はこっちのほうが嬉しいと――そう思う。

「これからどうします?」

 ちび助が、そう尋ねてくる。

 私は悩む。正直、もうさっさと帰ってしまいたい。

「奈々ちゃん、保健室は?」
「そうでした、奈々先輩のプレイを観てすっかり忘れていましたが、かなり頭を打ってたじゃないですか!?」

 本当にこいつはイヌ頭だな。

「大丈夫。もう大したことないから」

 多少は痛みを感じる程度。だから、そんな心配そうな顔を向けられても正直困る。

「馬鹿なの? 今から保健室に決まってるでしょ」

 後ろから、声がした。

 振り向くと、藤宮と静姉がいる。

「いや、本当に大丈夫だから」

 正直、あまり大げさにしないでほしい。

「ふざけないでよ、この馬鹿」

 藤宮は私を睨むと、私の手を摑んだ。

 意外な行動に、私は不覚にも身体を硬くしてしまう。

 手を引っ張られ、私は情けなくもそのままついていくことになる。

「奈々先輩、ごゆっくり~」

 ちび助は笑顔で手を振り、深雪は状況を上手く理解できていないような顔。

 藤宮に手を引っ張られながら歩く姿を、周囲は興味ありげに見て来る。彼女を知っている人間なら、こんな姿は好奇心を刺激することだろう。

 静姉はにやにやした顔をしながら、一定の距離を保ちながら私たちの後ろをついてくる。

 あぁ、一発でもいいからぶん殴りたい。
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