幼馴染の少女に触れたくても触れられない私は代わりに彼女を求めた……キスをしたのもそんな目で私を見上げるあんたのせいなんだよ

tataku

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第3章

第52話

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 私は、保健室のベットで寝かされる。

 藤宮はベットの横にあるパイプ椅子へ座り、不機嫌そうな顔で私を見る。その隣で、静姉はあい変わらずにやけた面で私を見下ろしていた。

「奈々、明日は病院へ行きなさいよ」

 と、静姉は偉そうに言ってきた。
 
「明日は土曜日だし、やってないんじゃないの?」
「心配しなくても、午前中はやってるわよ」
「もう、本当に大丈夫なんだけど?」

 明日は学校が休みだ。なのに、わざわざ病院なんて行きたくない。時間の無駄だし、お金の無駄だ。

「駄目よ」

 と、何故か藤宮に言われた。

「いや、でも――」
「駄目よ」

 有無を言わさない感じ。

「……分かったから」

 私はさっさと降参することにした。そうしないと、面倒くさいことになりそうだ。

「明日、ちゃんと病院に行くってこと?」
「そう、ちゃんと行くから」

 ――気が向いたらだけど。

「……本当に?」

 疑いの目を向けてくる。

「本当だって」

 口では何とでも言える。
 
「なんか、軽いわね。あなたの本当は信用ならないのだけれど?」

 さすが、無駄に付き合いだけは長い。

 よく分かってるねー、とか言ったら切れられそうだ。

「そこはまぁ――信用して貰うしかないんじゃない?」

 っていうか、それ以外に方法がない。

 藤宮はジト目を向けてくる。

 私にどうしろと言うのだ?

「それならもう、明日、藤宮が一緒についてくるしかないじゃん」

 そんなありえないことを、私は言った。

「……そうね、確かにそれしか方法はないのかもしれない」

 いや、他にもあるとは思うけど。

「分かったわ。明日、私もついていくから」
「それ……本気で言ってる?」
「何よ、不満なのかしら?」

 睨まれる。目茶苦茶、睨まれた。

「いや、別にそう言うわけじゃないけど……」
「そう、なら明日はあなたの家まで迎えに行くわ」
「何でそこまで」
「……母も、大丈夫だって言っていたわ。倒れるまで、病院に行かなかったから、助かるはずの命も助からなかった」

 ――その話は、卑怯だろ。

 私は、ため息を吐きたくなる。

 昔、彼女が泣く姿を――私は見ている。

「分かった。好きにすればいい」
「最初から、素直にそう言えばいいのよ」

 私はぐっと、言いたいことを堪えた。

 静姉が急に笑い出す。

「何?」

 私は馬鹿みたいに笑う阿呆を睨みつける。

「いや、昔のあんたらを見てる私としては、感慨深いものがあるだけよ」
「静姉、藤宮のこと覚えてんの?」

 正直、静姉がいるときにあまり藤宮と関わったことはなかったと思うのだが。
 
「まぁ、あれだけ派手に喧嘩していたら、忘れられるものも忘れられないわよ。それに、この土地で藤宮家は有名だからね」

 藤宮は、何とも言えない――微妙そうな顔になる。

「どうでもいいけど、静姉はさっさと戻ったら? 他に怪我人でてるんじゃない?」
「何よ、私を追い出そうとしてる?」
「別に、そう言うわけじゃないけど」
「分かってるわよ、邪魔ものは退散しますからー」
「だから、そういうわけじゃないって言ってるじゃん」

 私の言葉に、静姉は又、笑い出す。

「それじゃー藤宮さん、後は任せたわよ。本当に馬鹿な子だから、しっかりと見張っていてね」

 は?

「分かりました」

 藤宮が、頷く。

 おいおい、まじかよー。

 静姉が、仕切りのカーテンを掴む。

「奈々、良いことを教えて上げる」
「……何?」

 面倒くさいと思いつつも、反応してやった。

「女同士のエッチはね、男とするより――全然、気持ちいいんだから」

 は!?

「鍵は閉めておいてあげる。ごゆっくり――とね」

 静姉はいたずらっぽく笑うと、カーテンを閉めた。

 靴音が遠ざかって行き、扉が閉まる音。

 微かに、グラウンドから声が聞こえる。

 カーテンで仕切られた狭い空間に、藤宮と二人っきり。

 な、なんか気不味い。

 だけど、それを感づかれたくはない。

「ね、寝るから」
「え、ええ」

 私は目を瞑る。
 
 何も見えないのに、藤宮の気配を感じる。そして、見られている気がした。そんなの、気のせいだ。

「約束……いいの?」

 ポツリと、呟く声がした。

「……負けたからね」
「そう……」

 沈黙。

 してくれと言ったら、本当にしてくれるのだろうか?

 それは一体、どこに?

 考えたって――分かる訳が無い。

 だから、考えるのを止めた。
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