幼馴染の少女に触れたくても触れられない私は代わりに彼女を求めた……キスをしたのもそんな目で私を見上げるあんたのせいなんだよ

tataku

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第3章

第57話

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 次の日、そろそろ到着すると言うから、家の門を出た。

 そして、連絡通りに藤宮が迎えに来る。

 リムジンとともに。

 私は驚いた。

 そして、美代さんのように凛々しく美しい運転手の女性がまず最初に降りてきて、完璧な礼を見せてくれる。

「ど、どうも」

 私はしどろもどろに挨拶した。

 そして、手に持ったスマホを慌ててポケットの中に入れる。

 この完璧な礼に対して、スマホを触りながらの挨拶はさすがに失礼過ぎるだろうと、自分で自分を突っ込んだ。

 それにしても――うん、格好いい。

 これはもう――認めざるを得ない。

 小倉に彼女を見せてあげたい。そうしたら、きっと敗北を味わってくれることだろう。

 運転手が後部座席のドアを開けると、藤宮は優雅に車から降りた。

 黒いワンピースドレスを着ていても、天使のように見えるから不思議なものだと思う。

 運転手は再び、私に頭を下げた。

「月城様、昨日は本当にありがとうございました」
「は?」

 私、何かしましたっけ?

 迷惑をかけた記憶しかございませんが?

 

 初めて乗るリムジンはとても広く、そしてとんでもない座り心地だ。
 私はここで暮らすことが出来るかもしれない。
 
 
 
 病院で降ろされて終わりかと思っていたけど、藤宮が中までちゃんとついてきたのには驚いた。普通、そこまでするか?
 受付するときも、待つときも、診察するときも藤宮はずっと私の横にいた。

「甲斐甲斐しい子ね。もしかして、奥さんなのかしら?」

 そんな冗談を看護婦さんから言われる。そのふざけた言葉を真に受けた藤宮は、顔を真っ赤にさせた。

「ち、違いますから!」

 藤宮の大きな声は、かなり響くことになった。そのため、周りの視線がこちらに集まってくる。

「病院内では、お静かにね」

 看護婦さんは人差し指を唇に置いたあと、軽くウィンクしてきた。

「ご、ごめんなさい」

 藤宮はしばらく、顔を上げられなくなった。



 診察結果は特に問題なしと医者から伝えられる。その結果は予想通りだったため、特に何とも思わなかった。そんな私と藤宮は対照的だった。

「よかった……」

 そう呟き、涙ぐむ彼女の顔を見てしまえば、不覚にも胸にくるものがあった。

「奥さんではないけど、彼女なの?」

 先ほどの看護婦さんが、私にこっそりと耳打ちしてくる。にやにやした顔で。

 違いますよ、と私は否定しておいた。

「えー、つまんなーい」

 と、静姉みたいなことを言われた。



 ***



 帰りのリムジンの中、私は少し悩んでいた。

 でも、答えが出て来る気配はない。

 だから私は早々に諦めた。

「ねぇ、藤宮。私に何かしてほしいこととかある?」
「……いきなり、何の話?」
「いや、お礼がしたくてさ」
「何の?」

 藤宮はすぐに何でと聞いてくる。それを少々、面倒くさいと感じてしまう。ちび助のように、感謝して当然ですよぉ、という態度はかなり苛つくけども、ほんの数%ぐらいは彼女を見習ってもいいのかもしれない。
 
「理由はなんでもいい。私が藤宮に感謝していて、お礼がしたいと思っている――それだけ、理解してくれればいいから」

 私の言葉を聞いても、納得した顔にはならなかったが、特に反論はしてこない。

「で、何かないの?」
「……逆に、あなたはあるの? 私にして欲しいこと」

 は? いきなり何だ?

「何でそんな話になるの?」
「理由はなんでもいいんじゃなかったのかしら?」
「うっ……」

 藤宮は、じっと私を見てくる。

「わ、悪かったよ」

 これはあれか、意趣返しというやつか。

「謝らなくてもいいわ。それよりも――答えは?」

 なんか、私が答えるパターンになってしまったようだ。

 私は悩む。

 確かに、いきなり言われても困るなー、これは。

「何よ、何もないと――そういうこと?」

 なんか、このままだと機嫌が悪くなりそうだ。

「いや、そういうわけじゃないんだけどさぁ」
「それなら、さっさと答えなさいよ」

 睨まれる。

 急かされている気がして――何だか、焦る。

「そ、それは――」
「それは?」

 私の頭の中がぐるぐると回転している。
 なぜかそのとき、ちび助の顔が思い浮かんだ。
 
「夏休み――」
「夏休み?」

 そう、あと数日で夏休み。
 
「花火大会、一緒に行かない?」

 それは、まだまだ先の話。

 藤宮は、何故か――驚いた顔で私を見る。
 
「そう、そこで浴衣を着てきてよ。藤宮の浴衣姿――めちゃくちゃ見たいからさ!」

 このちび助構文で、深雪が照れながらも喜んだ。本人は口元を隠し、それを悟られないようにしていたが、ばればれだった。ちび助のにまにま顔も相まって、私はしばらく不快な感情が消えなかった。

「わ、分かったわよ。そこまでいうのなら――着てあげる」

 藤宮は照れた感じで、私から顔を背けた。

 やはり、あの言葉で人は喜ぶものらしい。誰が言ったかなんてきっと関係ない。あの言葉に力があるのだ。だから、深雪が喜んだのも――ちび助だからじゃない。そう思うと――なんだか、気分が良くなった。

 それにしても、花火大会――3人ではなく、4人で行くこととなった。

 まぁ、3人よりは――4人のほうがいいだろう。多分だけど。
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