幼馴染の少女に触れたくても触れられない私は代わりに彼女を求めた……キスをしたのもそんな目で私を見上げるあんたのせいなんだよ

tataku

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第4章

第65話

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 空はもう、暗くなった。

 そろそろ、花火が打ち上がる時間だ。

 私たちは、移動を開始した。

 先程よりも人が増え、人壁ができている。

 私たちはその後ろに並んだ。

 それほど時間が立たないうちから人が増え、私たちの後ろにまで人が並び出す。

 左にいる藤宮へ視線を向けると、不安そうな顔をしていた。

「大丈夫?」
「……あまり、人混みにはなれてないから」

 何となく、右側に視線を向けた。ちび助と深雪が何かを話している。

 私は少し悩んでから、藤宮の耳元に顔を近づけた。

「手でも繋ぐ?」

 それは、私なりの優しさだったのだが、何故か藤宮から――はぁ? という顔をされた。

「ば、馬鹿じゃないの」

 と、罵倒までされた。

「まぁ、確かにね」

 私はひとり納得すると、空を眺めた。

 多分、花火はもうすぐだ。

 左の小指が、掴まれた。

 私は、藤宮の方に視線を向ける。彼女は私の方を見ずに、空を眺めていた。暗くてよく見えないが、顔が赤いように見える。

 私は何も言わず、再び空を眺めることにした。

 アナウンスが流れる。

 周りがにわかに騒がしくなった。

 アナウンサーらしき人間の、どうでもいいお話が始まる。

 私はそれを話半分で聞いていた。

「そろそろ始まるわ」

 藤宮が私の小指を引っ張る。

 どこか――興奮した声。

 なんだか、おかしくなった。

 何気なく、右側に視線を向ける。

 ちび助も、深雪も――空を眺めていた。

 私はほっとして、同じように花火を待った。

 夜空に花が舞い、大きな音がした。

「綺麗ね」

 と、藤宮は言った。

 確かにそうだと思う。

 すごく、綺麗だ。

 こんなに近くで見たのは初めてだから、意識が吸い込まれそうだ。

 物音で、私の意識は地上へと戻った。

 ちび助と深雪の背中が見えたかと思うと、人混みに消えて行く。

「……あ」

 私の口から、小さな声が漏れる。

 一瞬、目の前の出来事が上手く理解できなかった。

 離れていく。

 深雪が――私から。

 私は消えたほうへ、身体を動かした。

 小指の繋がりなどすぐに解けたが、すぐに服を掴まれる。

 足を止め、後ろへ振り返った。

「どこへ行くつもりなの?」

 藤宮の顔は――私を責めている気がした。

「いや、その――深雪を追いかけようと、思ってさ」
「桜井から聞いていたのではないの?」
「……何を?」
「花火の途中で抜け出し、告白すること」
「……」

 私は何故か、すぐに答えることができなかった。

「……聞いてた」
「では、なぜ追いかけようとするの?」
「……」
「聞いてたんでしょ? でも、止めなかった。なのに、なぜ今さらなの?」

 確かに、その通りだ。

 私はいつだって、遅すぎる――なにもかもが。

 でも――

「仕方ないじゃん。それが私なんだから」

 あぁ、本当に情けない話だ。

「……行くの?」
「行く」
「どこに行ったかも分からないのに?」
「だからって、それが行かない理由にはならない」

 藤宮は顔を俯かせた。

 沈黙。

 私が彼女の名前を呼ぼうとしたとき、服を掴んだ手が離された。

「私も行くわ」

 そう言って、藤宮は顔を上げた。

 なぜ――と言いかけて、止めた。

 確かに、こんなところでお嬢様をひとりになんて出来やしない。

「じゃあ、行こう」

 そう言って、私は藤宮の手を掴むと――走り出した。
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