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第4章
第76話
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夜が明けるまで、深雪と一緒に雪乃の話をした。
そして分かったことは、悲しい記憶よりも、楽しい記憶の方が遥かに多かったこと。
私は一旦、家へ帰ることとした。
深雪と弘子さんに見送られながら、外へ出る。それほど雪が積もる気配はないが、風がかなりつめたく、身体が震えた。もう、冬休みが始まっている。しかも、明日はクリスマスイブ。そして、雪乃の命日だ。
行こうと思った。
明日、初めての墓参りに。
部屋に着いた。
私はすぐに部屋へ戻ると、スマホを手に取った。すぐに、千歳へ連絡しようと思ったから。
多分、心配していると思う。だって、別れるときになんの説明もしていない。だけど、電話の雰囲気で深雪に何かあったことぐらい、把握していると思う。
そしたら、きっと深雪のことを心配しているはずだ。あのふたり、昔と比べたら随分と仲良くなっているのだから。
スマホを、開いて――びっくりした。
電話の着信数、メッセージの数も、見たことないぐらい来ている。全部、千歳からだ。私は慌てて、電話をかけた。
何度か、呼び出し音がした後、切られた。
ん?
もしかして、着信でるのと、着信きるボタンを押し間違えたか?
しばらく、様子見する。
無音。
私は少し悩んだ後、もう一度、電話をかけた。
あ、電源切りやがったな。
私は、頭を掻く。
今、忙しいのか?
最後に来たメッセージを確認した。
『あなたとは、もう別れる』
私は、愕然とした。
私の中で、一番まともな服は学校の制服だったため、それに着替えてすぐに家を出る。
走った。
嫌だと思った。
千歳と、別れること。
そんなのもう、考えられない。
例え、雪乃が生きていて、彼女と付き合うことができたとしても――千歳を失うことなんて考えられない。本当、私は最低だと思う。でも、仕方ないじゃん。それが、私なんだから!
* * *
最近、走ってばかりな気がする。
息を整えたあと、私は顔を上げた。
相変わらず、とんだ豪邸だ。黒い鉄格子に囲まれた、西洋屋敷。庭も広く、大きな噴水が見える。
私は、初めてチャイムを鳴らした。
『月城様ですね』
インターホンから、声が聞こえた。
おそらく、高田さんだ。
知っている人のため、ほっとした。
『お嬢様へ会いに来てくれたのですね』
私は頷いた。
『それでは少々、お待ちください』
しばらく、待たされた。
始めは、走った後だったため、身体が熱くなっていたがすぐに冷えた。寒い。かなり、寒い。は、早くしてくれ!
鉄格子がひとりでに開いた。
『お入りください』
別の人の、声だった。
少し、躊躇しながらも中へ入った。
庭の途中で、高田さんと会い、頭を下げられる。
「遅れて申し訳ありません」
「い、いえ、お気になさらず」
「すみませんが、お嬢様の部屋へ行く前に、少し相談させてください」
は?
とある客室に案内され、温かく美味しい紅茶を口にした。
私は豪華なソファに座っているが、高田さんは隣で突っ立ったままなので――すごく、気になる。
「それで、話と言うのは?」
「――お嬢様が、昨日から部屋に閉じこもり――食事もとられません」
「……何か、あったんですか?」
「それが、お恥ずかしながら検討がつきません。今週の日曜日から――何処かご様子がおかしくありました。昨日は修業式です。早く学校が終わることは知っていましたが、1時間も立たずに帰ってこられたのは驚きました。そして、目が真っ赤でした。泣き腫らしたような――そんな、目をしておりました」
最後のメッセージが送られたのは、だいたいそのときぐらいだ。
「月城さんの名前を出せば――部屋から出てきてくれると、そう思っていたのですが」
その名前に、それほどの力があると信じていたことに、私は驚いた。
「部屋に、鍵かかってます?」
「え? それは――おそらく」
「合鍵、ありますよね?」
「それは――ありますが」
「千歳の部屋まで――案内して貰っていいですか? 声かけても出てこないようなら、鍵を勝手に開けてでも中へ入りますから」
もしかしたら、私はひどいことを言っているのかもしれない。
でも、高田さんは微笑んでくれた。
「お待ちください。ただいま――鍵をお持ちしますので」
そう言って、彼女は部屋から出て行った。
そして分かったことは、悲しい記憶よりも、楽しい記憶の方が遥かに多かったこと。
私は一旦、家へ帰ることとした。
深雪と弘子さんに見送られながら、外へ出る。それほど雪が積もる気配はないが、風がかなりつめたく、身体が震えた。もう、冬休みが始まっている。しかも、明日はクリスマスイブ。そして、雪乃の命日だ。
行こうと思った。
明日、初めての墓参りに。
部屋に着いた。
私はすぐに部屋へ戻ると、スマホを手に取った。すぐに、千歳へ連絡しようと思ったから。
多分、心配していると思う。だって、別れるときになんの説明もしていない。だけど、電話の雰囲気で深雪に何かあったことぐらい、把握していると思う。
そしたら、きっと深雪のことを心配しているはずだ。あのふたり、昔と比べたら随分と仲良くなっているのだから。
スマホを、開いて――びっくりした。
電話の着信数、メッセージの数も、見たことないぐらい来ている。全部、千歳からだ。私は慌てて、電話をかけた。
何度か、呼び出し音がした後、切られた。
ん?
もしかして、着信でるのと、着信きるボタンを押し間違えたか?
しばらく、様子見する。
無音。
私は少し悩んだ後、もう一度、電話をかけた。
あ、電源切りやがったな。
私は、頭を掻く。
今、忙しいのか?
最後に来たメッセージを確認した。
『あなたとは、もう別れる』
私は、愕然とした。
私の中で、一番まともな服は学校の制服だったため、それに着替えてすぐに家を出る。
走った。
嫌だと思った。
千歳と、別れること。
そんなのもう、考えられない。
例え、雪乃が生きていて、彼女と付き合うことができたとしても――千歳を失うことなんて考えられない。本当、私は最低だと思う。でも、仕方ないじゃん。それが、私なんだから!
* * *
最近、走ってばかりな気がする。
息を整えたあと、私は顔を上げた。
相変わらず、とんだ豪邸だ。黒い鉄格子に囲まれた、西洋屋敷。庭も広く、大きな噴水が見える。
私は、初めてチャイムを鳴らした。
『月城様ですね』
インターホンから、声が聞こえた。
おそらく、高田さんだ。
知っている人のため、ほっとした。
『お嬢様へ会いに来てくれたのですね』
私は頷いた。
『それでは少々、お待ちください』
しばらく、待たされた。
始めは、走った後だったため、身体が熱くなっていたがすぐに冷えた。寒い。かなり、寒い。は、早くしてくれ!
鉄格子がひとりでに開いた。
『お入りください』
別の人の、声だった。
少し、躊躇しながらも中へ入った。
庭の途中で、高田さんと会い、頭を下げられる。
「遅れて申し訳ありません」
「い、いえ、お気になさらず」
「すみませんが、お嬢様の部屋へ行く前に、少し相談させてください」
は?
とある客室に案内され、温かく美味しい紅茶を口にした。
私は豪華なソファに座っているが、高田さんは隣で突っ立ったままなので――すごく、気になる。
「それで、話と言うのは?」
「――お嬢様が、昨日から部屋に閉じこもり――食事もとられません」
「……何か、あったんですか?」
「それが、お恥ずかしながら検討がつきません。今週の日曜日から――何処かご様子がおかしくありました。昨日は修業式です。早く学校が終わることは知っていましたが、1時間も立たずに帰ってこられたのは驚きました。そして、目が真っ赤でした。泣き腫らしたような――そんな、目をしておりました」
最後のメッセージが送られたのは、だいたいそのときぐらいだ。
「月城さんの名前を出せば――部屋から出てきてくれると、そう思っていたのですが」
その名前に、それほどの力があると信じていたことに、私は驚いた。
「部屋に、鍵かかってます?」
「え? それは――おそらく」
「合鍵、ありますよね?」
「それは――ありますが」
「千歳の部屋まで――案内して貰っていいですか? 声かけても出てこないようなら、鍵を勝手に開けてでも中へ入りますから」
もしかしたら、私はひどいことを言っているのかもしれない。
でも、高田さんは微笑んでくれた。
「お待ちください。ただいま――鍵をお持ちしますので」
そう言って、彼女は部屋から出て行った。
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