出戻り王女の恋愛事情 人質ライフは意外と楽しい

七夜かなた

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第四章

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 子供たちに本を読み聞かせ、いつの間にか眠っていたジゼルは、目が覚めると目の前にはユリウスの顔があって、自分と視線が絡み合って驚いた。

 ここがどこなのかと周りを見渡すと、子供部屋から出てすぐの廊下だった。

 彼女が驚いたのはそれだけではない。

 自分がボルトレフ卿に抱き抱えられていた。

「え、あ、あの…ど、どうして」
「暴れるな、落ちるぞ」

 動揺して彼の腕の中で身動ぎしたジゼルに、ユリウスが注意した。

「あ、あの…なぜ」
「リロイの部屋に行くと、子供たちに本を読んでくれているうちに、あなたが寝てしまったと、メアリーが言うので、病み上がりで風邪をひいてはいけないから、部屋に運ぶところだ」
「そ、そうではなく。それなら、起こしていただければ」

 抱き抱えられていることもそうだが、彼に寝顔を見られたことも恥ずかしくて、ジゼルは自分の顔が真っ赤になっているのがわかった。
 それを隠そうと、両手で顔を覆う。
 他に人がいないのが唯一の救いだ。

「とても気持ちよさそうに寝ていたので、起こすには忍びなくてな」
「お、おろして…は、恥ずかしい」
「何を今更、熱を出したあなたをここに運んだときも、こうして運んできた」
「そ、それは…熱が…」
「そうだ。回復したとは言え、まだ病み上がりで本調子ではない。それなのに、子供達が迷惑をかけたな。頼みを聞いてくれとは言ったが悪かった」
「い、いえ、それは、ただ本を読んだだけで、迷惑では…あの、子供たちは?」
「先にリロイのベッドに二人共運んだ。そのまま一緒にと思ったが流石に子供とは言え、三人一緒では狭いからな」
「そ、そうですか。では、もう起きたので、おろして…」

 もう一度ジゼルは体を動かして、彼の胸に手を置いて距離を取ろうとした。

「そんな遠慮せずとも、あなた一人抱えて運ぶくらい造作もない」
「え、遠慮などでは…」

 何とか彼に下ろしてもらおうともがき、そんな彼女を離すまいと、ユリウスは更に抱える腕に力を込める。

「大将…あ!」

 そんな攻防を繰り広げていると、グローチャーが現れ、この場の状況にしまったという顔をした。

「ランディフ、どうした」

 ストンとジゼルを下に降ろす。

「す、すみません、後にします」
「あ、あの、私はこれで…」

 小声で呟き、ジゼルは顔をそらしてランディフの横を通り過ぎた。
 ランディフは、耳を赤くして慌てて自分の横を擦り抜けていくジゼルを、微笑ましげに見た。

「どうした?」
「実はカルエテーレから書状が届きました」
「またか」

 立ち去るジゼルの背後で、ランディフとユリウスの会話が聞こえてきた。

(カルエテーレ。ここと国境を接する国だわ)

 表立ってエレトリカと対抗はしていないが、トリカディールから独立した国である。

「すみません」

 立ち去るジゼルを視線で追っているユリウスに、ランディフが再度謝った。

「謝る必要はない。リロイの部屋のソファで寝ていたから、また熱を出してはいけないと思って運ぶところだっただけだ」
「お二人、なかなかいい雰囲気でしたよ」
「いい雰囲気? 馬鹿なことを言うな。それよりその書状を見せてみろ」
「はい」

 ランディフが彼に見せるために持ってきた手紙を差し出す。
 それを受け取るために手を出したユリウスは、ふわりと自分の体から放たれた香りに気がついた。

 清涼感がありながら、ふわりと甘さが混じるその香りは、抱き上げていたジゼルの髪から漂ってきたものだと気づいた。

「大将?」

 一瞬、目を閉じた彼の様子にランディフが怪訝そうに問いかけた。

『いい雰囲気でしたよ』

 先程ランディフが放った言葉が蘇る。

「何でもない。手紙の中身はどうせこれまでと変わりないだろうな」
「そう思われます」

 ユリウスは厳しい顔つきで、中の手紙に目を通した。
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