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第五章
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ジゼルの経験など、たかが知れている。
比較対象がドミニコとの経験しかない彼女にとって、ユリウスとのことは、何もかも新鮮で、そして刺激的だった。
考えてみれば、初めて彼を見たときから、彼から目が離せなかった。
上に立つ者の貫禄と、己の力を信じている強さ。そして自分の大切なものを守り抜こうとする意思の強さ。
魂の輝きとでも言おうか。人を惹きつける魅力を持っているのは間違いない。
元は貴族でも何でもないボルトレフ侯爵を、成り上がりだと軽視する者がいたしても、彼は痛くも痒くもないと鼻で笑うことだろう。
そんな揺るぎない強さが、彼から滲み出ていて、ジゼルは惹きつけられた。
「ん…んん」
喉をまるで猫のように鳴らし、ジゼルはユリウスから与えられる甘美な刺激に打ち震えた。
ジゼルが拒まないことを悟ったユリウスが、唇を割って舌を滑り込ませてきた。
それをジゼルは戸惑いながらも受け入れた。
口腔内に侵入してきたユリウスの舌は、歯列をなぞりジゼルの舌を捉え絡ませてきた。
「ん…はぁ」
うっすらと目を開けたジゼルの瞳に、赤く煮え滾った炎を宿したユリウスの瞳が映った。
後頭部に大きな手を添えて、更にジゼルを引き寄せる。
ユリウスの硬い胸板に置いた手が、ぎゅっと彼の衣服を握りしめた。
ジゼルが握りしめた手の下には、熱い血潮が流れているのを感じる。
触れ合う唇も、握り合う手も、服の下に感じる体も、すべてが熱くて、ジゼルの体もいつ発火してもおかしくないくらいに、体温が上がっていく。
時折そんな二人の熱を冷まそうとするかのように風が吹くが、二人の体温の上昇が早くてまるで追いついていない。
溢れる唾液を吸い込んでごくりと飲んだユリウスが、僅かに唇を離した。
「その顔…そんな顔をされたら、どんな男も我慢出来なくなる」
「顔…?」
顔がどうしたのだろうか。そう思ったジゼルの太腿に、何か硬いものが当たった。
「そんな風に刺激しないでくれ」
当たり具合を変えようと、足を少し動かそうとしたジゼルに、苦しそうにユリウスが言う。
「どこか、痛くしましたか?」
「そうではない。その…これは男の自然な反応だ」
「え?」
自分の太腿に一体何が当たっているのかと、ジゼルは下を見た。
「あ…」
経験が少なくても、そこに何があって、どういう事態になっているかはわかる。
生地を押し上げるように膨らんでいるのは、ユリウスの男の象徴である。
それがジゼルの太腿にぶつかっているのだ。
「あなたとの接触でこうなっているんだ」
「そ、それは…」
はっきり言われると、どう反応して言葉を切り返すのが正しいのか、ジゼルは頭が真っ白になった。
『お前では勃たない』
そうドミニコに罵られていた。
なのにユリウスは、勃っている。
「どうした?」
「あの…ほ、本当に…私と…」
「そうだ。あなたの匂いに、あなたの声に、あなたと触れ合いあなたと口づけを交わして、俺のここはこんなに張り詰めている」
「本当に…本当…ですか?」
信じられなくてジゼルは何度も尋ねた。
「そうだ。あなたを求めて痛いくらいになっている。俺を疑うのか?」
「いえ、いいえ。そうではなくて…私ではだめだと…萎えると…」
信じられないのはユリウスのことではなく、自分の女としての素質だった。
「もしかして、大公が言ったのか?」
殆ど単語だけだったが、ユリウスはそれですべてを察したらしく、かっと目を見開いた。
「あなたが大公との関係に反応出来なかったことを、彼はあなたのせいにして責めたのか?」
ピリピリとした殺気がユリウスから放たれる。
ジゼルはその視線の先にいるだろう、ドミニコの姿を思い出した。
きっとユリウスが目の前に立っただけで、ドミニコは腰を抜かしてしまうだろう。
「あなたが大公で満足できなかったのも、相性が悪かったか、こんなことは言いたくないが、彼が下手だったからだ。大方独りよがりに自分のしたいことだけ済ませて、後にも先にもあなたのことを気にかけもしなかったのだろう」
「な、なぜそれを?」
まるでその場で見てきたかのように言い当てられ、ジゼルは驚く。
「わかる。男女が体を重ね合わせ、交渉する意味もわからず、ただ己の欲をぶつけるだけの行為しか出来ない奴だ。しかも人のせいにしか出来ない浅はかな男だ。きっと母親に頭が上がらない男で、自分で大きな決断すら出来ないんだろう」
彼とドミニコは面識がないのは確かだ。しかし彼はドミニコの悪口をズケズケと口にする。
それが的確なだけに、ジゼルは七年も側にいたのに、離縁を言い渡されるまで気づかなかった。
(いいえ、違うわ)
気づかなかったのではなく、気づいていて気にしないように目を逸らしていたのだと悟った。
「あなたは十分に魅力的だ。それは間違いない。だから唯一人の人間に言われたことで、自分の魅力を疑う必要はない」
その言葉に、ジゼルは己を縛り付けていた呪縛が解かれる気がした。
比較対象がドミニコとの経験しかない彼女にとって、ユリウスとのことは、何もかも新鮮で、そして刺激的だった。
考えてみれば、初めて彼を見たときから、彼から目が離せなかった。
上に立つ者の貫禄と、己の力を信じている強さ。そして自分の大切なものを守り抜こうとする意思の強さ。
魂の輝きとでも言おうか。人を惹きつける魅力を持っているのは間違いない。
元は貴族でも何でもないボルトレフ侯爵を、成り上がりだと軽視する者がいたしても、彼は痛くも痒くもないと鼻で笑うことだろう。
そんな揺るぎない強さが、彼から滲み出ていて、ジゼルは惹きつけられた。
「ん…んん」
喉をまるで猫のように鳴らし、ジゼルはユリウスから与えられる甘美な刺激に打ち震えた。
ジゼルが拒まないことを悟ったユリウスが、唇を割って舌を滑り込ませてきた。
それをジゼルは戸惑いながらも受け入れた。
口腔内に侵入してきたユリウスの舌は、歯列をなぞりジゼルの舌を捉え絡ませてきた。
「ん…はぁ」
うっすらと目を開けたジゼルの瞳に、赤く煮え滾った炎を宿したユリウスの瞳が映った。
後頭部に大きな手を添えて、更にジゼルを引き寄せる。
ユリウスの硬い胸板に置いた手が、ぎゅっと彼の衣服を握りしめた。
ジゼルが握りしめた手の下には、熱い血潮が流れているのを感じる。
触れ合う唇も、握り合う手も、服の下に感じる体も、すべてが熱くて、ジゼルの体もいつ発火してもおかしくないくらいに、体温が上がっていく。
時折そんな二人の熱を冷まそうとするかのように風が吹くが、二人の体温の上昇が早くてまるで追いついていない。
溢れる唾液を吸い込んでごくりと飲んだユリウスが、僅かに唇を離した。
「その顔…そんな顔をされたら、どんな男も我慢出来なくなる」
「顔…?」
顔がどうしたのだろうか。そう思ったジゼルの太腿に、何か硬いものが当たった。
「そんな風に刺激しないでくれ」
当たり具合を変えようと、足を少し動かそうとしたジゼルに、苦しそうにユリウスが言う。
「どこか、痛くしましたか?」
「そうではない。その…これは男の自然な反応だ」
「え?」
自分の太腿に一体何が当たっているのかと、ジゼルは下を見た。
「あ…」
経験が少なくても、そこに何があって、どういう事態になっているかはわかる。
生地を押し上げるように膨らんでいるのは、ユリウスの男の象徴である。
それがジゼルの太腿にぶつかっているのだ。
「あなたとの接触でこうなっているんだ」
「そ、それは…」
はっきり言われると、どう反応して言葉を切り返すのが正しいのか、ジゼルは頭が真っ白になった。
『お前では勃たない』
そうドミニコに罵られていた。
なのにユリウスは、勃っている。
「どうした?」
「あの…ほ、本当に…私と…」
「そうだ。あなたの匂いに、あなたの声に、あなたと触れ合いあなたと口づけを交わして、俺のここはこんなに張り詰めている」
「本当に…本当…ですか?」
信じられなくてジゼルは何度も尋ねた。
「そうだ。あなたを求めて痛いくらいになっている。俺を疑うのか?」
「いえ、いいえ。そうではなくて…私ではだめだと…萎えると…」
信じられないのはユリウスのことではなく、自分の女としての素質だった。
「もしかして、大公が言ったのか?」
殆ど単語だけだったが、ユリウスはそれですべてを察したらしく、かっと目を見開いた。
「あなたが大公との関係に反応出来なかったことを、彼はあなたのせいにして責めたのか?」
ピリピリとした殺気がユリウスから放たれる。
ジゼルはその視線の先にいるだろう、ドミニコの姿を思い出した。
きっとユリウスが目の前に立っただけで、ドミニコは腰を抜かしてしまうだろう。
「あなたが大公で満足できなかったのも、相性が悪かったか、こんなことは言いたくないが、彼が下手だったからだ。大方独りよがりに自分のしたいことだけ済ませて、後にも先にもあなたのことを気にかけもしなかったのだろう」
「な、なぜそれを?」
まるでその場で見てきたかのように言い当てられ、ジゼルは驚く。
「わかる。男女が体を重ね合わせ、交渉する意味もわからず、ただ己の欲をぶつけるだけの行為しか出来ない奴だ。しかも人のせいにしか出来ない浅はかな男だ。きっと母親に頭が上がらない男で、自分で大きな決断すら出来ないんだろう」
彼とドミニコは面識がないのは確かだ。しかし彼はドミニコの悪口をズケズケと口にする。
それが的確なだけに、ジゼルは七年も側にいたのに、離縁を言い渡されるまで気づかなかった。
(いいえ、違うわ)
気づかなかったのではなく、気づいていて気にしないように目を逸らしていたのだと悟った。
「あなたは十分に魅力的だ。それは間違いない。だから唯一人の人間に言われたことで、自分の魅力を疑う必要はない」
その言葉に、ジゼルは己を縛り付けていた呪縛が解かれる気がした。
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