11 / 42
5-2
しおりを挟む神崎とランチを摂ったその日、湊は急いで家に向かっていた。講義の後、そのまま残って課題を片付けていたので、今日は六時を過ぎていた。もしかしたら聡祐はもう帰宅しているかもしれない。そう思うと湊は自然に歩調を速めた。しかしそれが、スーパーの前でぴたりと止まる。
湊の視界には聡祐が居た。その後ろ姿はスーパーの中へと吸い込まれていく。
買い物だろうか。声を掛けたい。けれどここで声を掛けたら、つけられてたとか思われてストーカーみたいになっちゃうだろうか。いやでも、聡祐は仲良くしたいと言ってくれた――湊はそこでしばらく逡巡してから、よし、と小さく呟いて歩き出した。聡祐の後を追うようにスーパーの中に入ると聡祐はすぐに見つかった。キャベツをなにやら真剣に見つめている。その姿が妙に可愛く見えた湊は、くすりと笑ってから、聡祐の傍まで歩み寄り、井波くん、と声を掛けた。こちらを向いて一瞬驚いた顔をした聡祐がすぐに笑顔を向ける。
「お、野島。いいトコに来たな。夕飯の買い物に来たんだ」
でも何買えばいいかわかんなくて、と聡祐が苦く笑う。
買い物を担当すると言ってくれた聡祐には、食べたいもののリクエストをくれたら必要なもののリストをメッセージで送っていた。何もなければ湊が勝手に買うか、聡祐が食べたいものを買ってくるようにしている。
「食べたい物の材料買ってくれればいいよ。初めて作るものでも頑張ってみるし」
湊が言うと、聡祐は驚いたように、すごいな、と湊を見やる。
「いつでも嫁に行けるな、野島」
「いつか、もらってくれる人がいればいいんだけどね」
軽口のつもりで言った湊だったが、その言葉に聡祐の表情が少し翳る。そういえばこの間自分はこの人にふられていたんだと思い出し湊は、えっと、と話題を変えようと口を開いた。
「今日、昼にパスタ食べたんだよね。学食なんだけどボンゴレがすごく美味しくてさ。アサリつながりで、酒蒸しとかどうかな?」
今日安いみたいだし、と湊は冷蔵ケースに並ぶアサリに手を伸ばした。すると聡祐が、昼? と聞き返す。湊は頷いた。
「それって、この間電話で話してた人と?」
「そう。同じ大学の先輩なんだ。……それが?」
まだ浮かない顔をしている聡祐に湊が首を傾げる。すると聡祐は、すき焼き、と突然口を開いた。
「野島、今日すき焼きにしよう。食えるよな?」
「食べれるけど、分けるの難しいよ?」
一度同じ鍋で作ってそれを分けるしかないかな、なんて考えていると聡祐が、そうじゃなくて、とその考えを遮った。
「鍋を別々に食うバカがいるかよ。一緒に食うの。俺の部屋に来いよ」
「一緒……? 部屋、入っていいの?」
聡祐の言葉に驚くばかりの湊が聞き返すと、当たり前だろ、とその笑顔が頷く。
「一緒の方が楽しいだろ」
な、と聡祐が湊の頭を軽く小突く。湊はそれに頷いてから、触れられたところからじわりと暖かくなっていくのを感じて、ドキドキしながら、買い物の続きを始める聡祐の後についた。
101
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
学校一のイケメンとひとつ屋根の下
おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった!
学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……?
キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子
立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。
全年齢
今日は少し、遠回りして帰ろう【完】
新羽梅衣
BL
「どうしようもない」
そんな言葉がお似合いの、この感情。
捨ててしまいたいと何度も思って、
結局それができずに、
大事にだいじにしまいこんでいる。
だからどうかせめて、バレないで。
君さえも、気づかないでいてほしい。
・
・
真面目で先生からも頼りにされている枢木一織は、学校一の問題児・三枝頼と同じクラスになる。正反対すぎて関わることなんてないと思っていた一織だったが、何かにつけて頼は一織のことを構ってきて……。
愛が重たい美形×少しひねくれ者のクラス委員長、青春ラブストーリー。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
君に二度、恋をした。
春夜夢
BL
十年前、初恋の幼なじみ・堂本遥は、何も告げずに春翔の前から突然姿を消した。
あれ以来、恋をすることもなく、淡々と生きてきた春翔。
――もう二度と会うこともないと思っていたのに。
大手広告代理店で働く春翔の前に、遥は今度は“役員”として現れる。
変わらぬ笑顔。けれど、彼の瞳は、かつてよりずっと強く、熱を帯びていた。
「逃がさないよ、春翔。今度こそ、お前の全部を手に入れるまで」
初恋、すれ違い、再会、そして執着。
“好き”だけでは乗り越えられなかった過去を乗り越えて、ふたりは本当の恋に辿り着けるのか――
すれ違い×再会×俺様攻め
十年越しに交錯する、切なくも甘い溺愛ラブストーリー、開幕。
僕の恋人は、超イケメン!!
八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる