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第2章1節 魔法学園対抗戦/武術戦
第188話 ルシュドとハンスの訓練
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ちゅん、ちゅん
「二十二……二十三……」
ほけきょー、ほけきょーっ
「四十七……四十八……」
ぴよぴよ、ぴよぴよ!
「六十四……六十五……」
「……うるせえ……」
「うるせえんだよ……!!」
やつれた目をして布団から起き上がるハンス。布団が捲れ上がった衝撃で、時計が音を立てて落ちた。
その顔色を窺うようにルームメイトの一人が恐る恐る近付いていく。
「……お、おい」
「ああん? 何? 死にたいの?」
「いや……」
「けっ、くそがよ」
相手の顔に向かって思いっきり唾を吐いた後、ハンスは寝間着のまま窓から飛び降りる。
風魔法で着地をしたようで、階下からぶわっと風が吹き込んでくる。
「……いいじゃないか。あいつ自分から出て行ったんだし」
「でもよ……何かあったら責任押し付けられるの俺らなんだぜ」
「そうなったらまたヴィクトールに任せりゃいいだろ。ともかくあいつに関わると精神病むぞ、無視だ無視」
「全く……あんなのと真正面から関われる奴尊敬するわー」
「……」
「九十八……九十九……ふぁ……ふぁ……
ふぁっくしゅん!!!」
「あ゛あ゛っ!?」
地面にすとんと着地したハンスを、ルシュドのどでかいくしゃみが出迎える。
「ずぅ……百……終わりぃ」
「何か歯切れが悪くなっちまったなあ」
「でも、百回目。朝練、終わり」
「……」
「おお、ハンス。おはよう。元気?」
「朝からこいつらの声に起こされて気分が悪い」
「う……ごめん」
「らだぞら。お前は対象に入っていないぜ?」
「そっか」
薔薇の塔の入り口付近の中庭には、ルシュドの他にも大勢の生徒が出て身体を動かしていた。
「対抗戦、近い。訓練、必要。朝練、頑張る。おれ、頑張る」
「ふーん」
「ハンス、訓練、おれと。どう?」
「ぼく身体動かすの嫌いなんだよねー」
「……ずーん。ががーん。しょんぼりーん」
「……」
がっくりと肩を落として、わかりやすくうなだれるルシュド。その反応に眉間に皺を寄せるハンス。
「……ん? ハンス、魔法? 武術、違う?」
「ああ……まあそうだね。リーンのやつに言われて一応そっちに出しておいたよ」
「わかった。魔法、訓練、頑張れ」
「……」
ハンスの隣で、ルシュドは水筒とバンテージを片付け終える。
「おれ、ご飯。もりもり。一緒、どう?」
「……いいの?」
「ハンス、友達。だから、おれ、誘う」
「……」
「……じゃあ行こうかな」
「やったあ。ハンス、ご飯、もりもり。元気元気」
「……」
その日の授業は、朝食をしっかりと食べたことにより、脳にエネルギーが行き渡って眠る間もなくよく集中できた。
リーンやヴィクトールが今日はしっかりと起きていやがると、目を見張っていた程である。
そうしているうちに放課後の時間はあっという間にやってきたのだった。
「……」
雉撃ちに向かう振りをして、窓から屋外に逃げ出す。ハンスが現在向かっていたのは、
「ふんっ……どぅりゃっ!」
「まだだ! 踏み込みが甘い! もっと力を込めて!」
「はいっ! ……だあっ!」
「芯を捉えろ! 確実に狙い打つつもりで行くんだ!」
現在活動中の武術部であった。
「ムッハー!!! 吹き出る汗の臭い!!! 交わる筋肉!!! 迸るパトスで魂はヒートアップ!!! ここはサンブリカ神の加護を受け賜りし楽園なのかーっ!?!?」
「何してんだよてめえ」
「うひゃあああああい!?!?」
ハンスに声をかけられて、道のど真ん中でひくひくしていたサネットは裏返る。
「邪魔なんだけど。何でぼくが行く道塞いでんだよ、頭沸いてるの?」
「はい!!! 私の頭は沸騰直前です!!! 今なら美味しい美味しい温泉卵ができますよ!!!」
「……」
そこに訓練の手を止め、近付いてくる人物が一人。よりにもよって彼であった。
「ハンス。よく来た」
「ああ……いい所に来てくれたよ、ルシュド」
「どうした?」
「この女がうざい。どうにかしろ」
「んー……ん? それ、土嚢?」
サネットが押してきたであろう台車をぐるりと眺めるルシュド。
そのような中、サネットはハンスとルシュドをぎらぎらした目で交互に見比べている。
「……はへええええええ……高貴な感じのエルフ様といい感じの武術男子ぃぃぃぃ……」
「質問に答えろクズが」
「あっぺええええええ!!! ……はっ!! そうでした!! これ武術部に頼まれていた物なんですけど、どこに置いて行けばいいですかね!?」
「おれ、武術部。案内、する」
「ぅありがとうございまーす!」
「ハンス、おまえも来る。水飲め」
「……わかったよ」
十分後。
「ぐびぐび」「ぷはー!」
「よぅーし! 水も飲んだことだし、練習再開するぞー!」
「はい! よろしくお願いです!」
木製の大盾を構えたシャゼムに呼びかけられ、ルシュドは小走りで向かう。
「さっきもやったが、もう一度ジャバウォックと一緒に戦ってみてくれ。それで戦い方の癖を見つけよう」
「はい! 行こう、ジャバウォック!」
「おうよ!」
ルシュドは手を身体に引き寄せ、ジャバウォックは大きく息を吸い、それぞれ構えの体勢に入る。
「制限時間はさっきと同じで三分だ。始めっ!」
「ガアアアアアアッ!!」
ルシュドが間合いを一気に詰めると、すかさずシャゼムが大盾を正面に回して防御に入る。
そのまま手堅い一撃を一発、続けざまにジャバウォックが火を吐いて攻めていく。
「おおっ……中々の手合いだな! ではこちらも……!」
ルシュドが一撃を加えるタイミングに合わせて、
シャゼムは大盾を力強く押し出す。
「ぐっ!!」
「んー……成程な。どうする? まだやるか?」
「さ、最後まで……!」
「了解。では来い!」
一分後。
「はぁ……はぁ……」
「お疲れルシュド。ほら水」
「あ、ありが、と……」
勢いよく水を飲むルシュド、水が口から零れるのも気にしない。そこにシャゼムが汗を拭いながらやってくる。
「俺にも水貰えるかな?」
「……あ?」
「どうぞ、先輩」
「あいよ。ぐびぐび」
「……」
ハンスの隣では、拳を握り締めるサネットが目をどぎつく輝かせている。
「……何でてめえまだいるんだよ」
「え? 一度帰りましたよ??? 帰ってまた土嚢を持ってきたんですけど???」
「……」
「先輩、おれ、どうだ? でした?」
「そうだな……お前、戦う時は目の前の相手しか見えていないだろう?」
「……」
「さっきそこのエルフがお前に声かけていたんだが、わからなかったか?」
「……!」
ルシュドはハンスの方に振り向くと、ハンスはさっと顔を背ける。
「そうそうそーなんですよー!!! さっきこちらの方が頑張れーって言っていたんですよぉぉぉ!!! トウトイ!!!! うぐはぁ!!!!」
「てめえら余計なこと言いやがって……!!」
「余計? いやいやぁ、お前のおかげでルシュドの弱点がわかったんだ。寧ろ感謝しかないじゃないか!」
「がっ……」
急接近してきたシャゼムに肩をバシバシ叩かれて、ハンスは惨めそうに顔を歪ませる。
「ともかくだ。ルシュド、お前の課題は周囲の状況を見ながら戦うことだ。冷静になって戦えるのは普通にアドバンテージだし、対抗戦では指揮官の命令も聞いて行動することが求められる。自分本位な戦い方ではいけないということだな」
「うーん……」
「一朝一夕で覚えられることではないんだけどな。地道にゆっくりと、できるようになっていこう。俺もできる限り協力するぞ」
「……はい!」
「よし、いい返事だ!」
「んじゃあ今日の所はお仕舞にしよう。俺自分の訓練に戻るわ。また明日な!」
「ありがとうです! 明日、よろしくです!」
ルシュドに見送られながら、シャゼムは訓練用の武具を担いで別の場所に向かう。
「……うーん。状況、見る……」
「今までの訓練をちょっと工夫する必要があるな。さてどうするよ、相棒?」
「……」
ルシュドはハンスの方を振り向く。肩の向こう側を見ると、サネットは既に退散していった所だった。
「……ぼく? ぼくなの?」
「うん。おれ、ハンスがいい」
「……他にもいるだろ、てめえの知り合い。連中じゃ駄目なの?」
「うーん……アーサー、イザーク、訓練。ヴィクトール、忙しい。女の子、大変。だからハンス」
「……」
「どうか、お願い、します」
そう言って頭を下げるルシュド。頭をぽりぽり掻くハンス。
「……わかったよ。やりゃあいいんだろ……」
「ありがとう、ございます」
「まあ訓練っつっても、俺らがやってる横から指示飛ばしてくれるだけでいいぜ。あとは何かアドバイスでもくれや」
「素人の意見が参考になるの?」
「素人だからこそだぜ」
「ふーん……あ、そうだ!」
ハンスは唐突に声を張り上げ、ルシュドの目が丸くなるのを待つ。
「そのー……さー……」
「何だ?」
「てめーってさ……りゅーぞく、じゃん……」
「う……」
「あぁーっと……気分を悪くするつもりで言ったんじゃなくてぇー……」
「え?」
「ほら……エルフってさー……風魔法を組み合わせて色々するからさー……剣に風纏わせてー……とかさー……」
「それは凄い。ハンス、できる?」
「できないこともな……って違えよ、ぼくが言いたいのは……そーじゃなくてー……」
「何だ?」
「……」
「――ああもう!! そういうことだよ!! じゃあね!!」
一方的に話を切り上げ、ハンスは大仰にその場を後にしていく。
「……ジャバウォック、どういうこと?」
「いや俺もわからん。要領を得ていないからな……でもよぉ、ヒントっぽいのは言ってたな」
「エルフ……剣に風……」
「うーん……そうだな。どういうことかじっくり考えてから、ハンスにぶつけてみようぜ」
「うん。おれ、考える」
「二十二……二十三……」
ほけきょー、ほけきょーっ
「四十七……四十八……」
ぴよぴよ、ぴよぴよ!
「六十四……六十五……」
「……うるせえ……」
「うるせえんだよ……!!」
やつれた目をして布団から起き上がるハンス。布団が捲れ上がった衝撃で、時計が音を立てて落ちた。
その顔色を窺うようにルームメイトの一人が恐る恐る近付いていく。
「……お、おい」
「ああん? 何? 死にたいの?」
「いや……」
「けっ、くそがよ」
相手の顔に向かって思いっきり唾を吐いた後、ハンスは寝間着のまま窓から飛び降りる。
風魔法で着地をしたようで、階下からぶわっと風が吹き込んでくる。
「……いいじゃないか。あいつ自分から出て行ったんだし」
「でもよ……何かあったら責任押し付けられるの俺らなんだぜ」
「そうなったらまたヴィクトールに任せりゃいいだろ。ともかくあいつに関わると精神病むぞ、無視だ無視」
「全く……あんなのと真正面から関われる奴尊敬するわー」
「……」
「九十八……九十九……ふぁ……ふぁ……
ふぁっくしゅん!!!」
「あ゛あ゛っ!?」
地面にすとんと着地したハンスを、ルシュドのどでかいくしゃみが出迎える。
「ずぅ……百……終わりぃ」
「何か歯切れが悪くなっちまったなあ」
「でも、百回目。朝練、終わり」
「……」
「おお、ハンス。おはよう。元気?」
「朝からこいつらの声に起こされて気分が悪い」
「う……ごめん」
「らだぞら。お前は対象に入っていないぜ?」
「そっか」
薔薇の塔の入り口付近の中庭には、ルシュドの他にも大勢の生徒が出て身体を動かしていた。
「対抗戦、近い。訓練、必要。朝練、頑張る。おれ、頑張る」
「ふーん」
「ハンス、訓練、おれと。どう?」
「ぼく身体動かすの嫌いなんだよねー」
「……ずーん。ががーん。しょんぼりーん」
「……」
がっくりと肩を落として、わかりやすくうなだれるルシュド。その反応に眉間に皺を寄せるハンス。
「……ん? ハンス、魔法? 武術、違う?」
「ああ……まあそうだね。リーンのやつに言われて一応そっちに出しておいたよ」
「わかった。魔法、訓練、頑張れ」
「……」
ハンスの隣で、ルシュドは水筒とバンテージを片付け終える。
「おれ、ご飯。もりもり。一緒、どう?」
「……いいの?」
「ハンス、友達。だから、おれ、誘う」
「……」
「……じゃあ行こうかな」
「やったあ。ハンス、ご飯、もりもり。元気元気」
「……」
その日の授業は、朝食をしっかりと食べたことにより、脳にエネルギーが行き渡って眠る間もなくよく集中できた。
リーンやヴィクトールが今日はしっかりと起きていやがると、目を見張っていた程である。
そうしているうちに放課後の時間はあっという間にやってきたのだった。
「……」
雉撃ちに向かう振りをして、窓から屋外に逃げ出す。ハンスが現在向かっていたのは、
「ふんっ……どぅりゃっ!」
「まだだ! 踏み込みが甘い! もっと力を込めて!」
「はいっ! ……だあっ!」
「芯を捉えろ! 確実に狙い打つつもりで行くんだ!」
現在活動中の武術部であった。
「ムッハー!!! 吹き出る汗の臭い!!! 交わる筋肉!!! 迸るパトスで魂はヒートアップ!!! ここはサンブリカ神の加護を受け賜りし楽園なのかーっ!?!?」
「何してんだよてめえ」
「うひゃあああああい!?!?」
ハンスに声をかけられて、道のど真ん中でひくひくしていたサネットは裏返る。
「邪魔なんだけど。何でぼくが行く道塞いでんだよ、頭沸いてるの?」
「はい!!! 私の頭は沸騰直前です!!! 今なら美味しい美味しい温泉卵ができますよ!!!」
「……」
そこに訓練の手を止め、近付いてくる人物が一人。よりにもよって彼であった。
「ハンス。よく来た」
「ああ……いい所に来てくれたよ、ルシュド」
「どうした?」
「この女がうざい。どうにかしろ」
「んー……ん? それ、土嚢?」
サネットが押してきたであろう台車をぐるりと眺めるルシュド。
そのような中、サネットはハンスとルシュドをぎらぎらした目で交互に見比べている。
「……はへええええええ……高貴な感じのエルフ様といい感じの武術男子ぃぃぃぃ……」
「質問に答えろクズが」
「あっぺええええええ!!! ……はっ!! そうでした!! これ武術部に頼まれていた物なんですけど、どこに置いて行けばいいですかね!?」
「おれ、武術部。案内、する」
「ぅありがとうございまーす!」
「ハンス、おまえも来る。水飲め」
「……わかったよ」
十分後。
「ぐびぐび」「ぷはー!」
「よぅーし! 水も飲んだことだし、練習再開するぞー!」
「はい! よろしくお願いです!」
木製の大盾を構えたシャゼムに呼びかけられ、ルシュドは小走りで向かう。
「さっきもやったが、もう一度ジャバウォックと一緒に戦ってみてくれ。それで戦い方の癖を見つけよう」
「はい! 行こう、ジャバウォック!」
「おうよ!」
ルシュドは手を身体に引き寄せ、ジャバウォックは大きく息を吸い、それぞれ構えの体勢に入る。
「制限時間はさっきと同じで三分だ。始めっ!」
「ガアアアアアアッ!!」
ルシュドが間合いを一気に詰めると、すかさずシャゼムが大盾を正面に回して防御に入る。
そのまま手堅い一撃を一発、続けざまにジャバウォックが火を吐いて攻めていく。
「おおっ……中々の手合いだな! ではこちらも……!」
ルシュドが一撃を加えるタイミングに合わせて、
シャゼムは大盾を力強く押し出す。
「ぐっ!!」
「んー……成程な。どうする? まだやるか?」
「さ、最後まで……!」
「了解。では来い!」
一分後。
「はぁ……はぁ……」
「お疲れルシュド。ほら水」
「あ、ありが、と……」
勢いよく水を飲むルシュド、水が口から零れるのも気にしない。そこにシャゼムが汗を拭いながらやってくる。
「俺にも水貰えるかな?」
「……あ?」
「どうぞ、先輩」
「あいよ。ぐびぐび」
「……」
ハンスの隣では、拳を握り締めるサネットが目をどぎつく輝かせている。
「……何でてめえまだいるんだよ」
「え? 一度帰りましたよ??? 帰ってまた土嚢を持ってきたんですけど???」
「……」
「先輩、おれ、どうだ? でした?」
「そうだな……お前、戦う時は目の前の相手しか見えていないだろう?」
「……」
「さっきそこのエルフがお前に声かけていたんだが、わからなかったか?」
「……!」
ルシュドはハンスの方に振り向くと、ハンスはさっと顔を背ける。
「そうそうそーなんですよー!!! さっきこちらの方が頑張れーって言っていたんですよぉぉぉ!!! トウトイ!!!! うぐはぁ!!!!」
「てめえら余計なこと言いやがって……!!」
「余計? いやいやぁ、お前のおかげでルシュドの弱点がわかったんだ。寧ろ感謝しかないじゃないか!」
「がっ……」
急接近してきたシャゼムに肩をバシバシ叩かれて、ハンスは惨めそうに顔を歪ませる。
「ともかくだ。ルシュド、お前の課題は周囲の状況を見ながら戦うことだ。冷静になって戦えるのは普通にアドバンテージだし、対抗戦では指揮官の命令も聞いて行動することが求められる。自分本位な戦い方ではいけないということだな」
「うーん……」
「一朝一夕で覚えられることではないんだけどな。地道にゆっくりと、できるようになっていこう。俺もできる限り協力するぞ」
「……はい!」
「よし、いい返事だ!」
「んじゃあ今日の所はお仕舞にしよう。俺自分の訓練に戻るわ。また明日な!」
「ありがとうです! 明日、よろしくです!」
ルシュドに見送られながら、シャゼムは訓練用の武具を担いで別の場所に向かう。
「……うーん。状況、見る……」
「今までの訓練をちょっと工夫する必要があるな。さてどうするよ、相棒?」
「……」
ルシュドはハンスの方を振り向く。肩の向こう側を見ると、サネットは既に退散していった所だった。
「……ぼく? ぼくなの?」
「うん。おれ、ハンスがいい」
「……他にもいるだろ、てめえの知り合い。連中じゃ駄目なの?」
「うーん……アーサー、イザーク、訓練。ヴィクトール、忙しい。女の子、大変。だからハンス」
「……」
「どうか、お願い、します」
そう言って頭を下げるルシュド。頭をぽりぽり掻くハンス。
「……わかったよ。やりゃあいいんだろ……」
「ありがとう、ございます」
「まあ訓練っつっても、俺らがやってる横から指示飛ばしてくれるだけでいいぜ。あとは何かアドバイスでもくれや」
「素人の意見が参考になるの?」
「素人だからこそだぜ」
「ふーん……あ、そうだ!」
ハンスは唐突に声を張り上げ、ルシュドの目が丸くなるのを待つ。
「そのー……さー……」
「何だ?」
「てめーってさ……りゅーぞく、じゃん……」
「う……」
「あぁーっと……気分を悪くするつもりで言ったんじゃなくてぇー……」
「え?」
「ほら……エルフってさー……風魔法を組み合わせて色々するからさー……剣に風纏わせてー……とかさー……」
「それは凄い。ハンス、できる?」
「できないこともな……って違えよ、ぼくが言いたいのは……そーじゃなくてー……」
「何だ?」
「……」
「――ああもう!! そういうことだよ!! じゃあね!!」
一方的に話を切り上げ、ハンスは大仰にその場を後にしていく。
「……ジャバウォック、どういうこと?」
「いや俺もわからん。要領を得ていないからな……でもよぉ、ヒントっぽいのは言ってたな」
「エルフ……剣に風……」
「うーん……そうだな。どういうことかじっくり考えてから、ハンスにぶつけてみようぜ」
「うん。おれ、考える」
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