神の愛し子と呼ばれていますが、婚約者は聖女がお好きなようです

天宮花音

文字の大きさ
8 / 14

8

しおりを挟む
ナナリーは放課後、ひとり生徒会室に向かっていた。
―リュシー様もフランツもヴィルもキースも私にメロメロよね。やっぱり私がヒロインなのよ♪

階段を下りて曲がれば生徒会室はそこというところに差し掛かった瞬間、
ナナリーは突然、背中を押され階段から転がり落ちた。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!」

叫び声を聞き、生徒会室からリュシアール、フランツ、ヴィルム、キースが駆け付けるとナナリーが階段下で倒れてるのを見つけ、驚き駆け寄った。
「「「「ナナリー!!!」」」」
リュシアールがナナリーを抱きかかえた。
「リュ、リュシー様…」
ナナリーは顔色は悪いものの、意識はあった。
「ナナリー、大丈夫か?何があったんだ?」
「わ、わたし、階段を下りてて…それで………」
ナナリーは混乱して言葉が出ない。
「リュシアール様、とりあえずナナリーを生徒会室に運ぼう。怪我をしてるかもしれない、僕なら治療が出来る。」
ヴィルムが言った。ヴィルムは医師の家系で、ヴィルム自身、医療を学んでいる。卒業後は父が代表を務める医療院に勤める予定である。
「そうだな」とリュシアールは頷くと、ナナリーを腕に抱え生徒会室に運んだ。


―確かに誰かに背中を押されたわ…でもリュシー様たちが来た時には周りにはもう誰もいなかった。いったい誰が…もしかしてイベントかなにかなのかしら?まさかローゼリカ?イベントとは言ってもさすがに痛いのはいやよ!?でもこのゲームをプレイしてない私じゃ回避できないわ!

ナナリーはヴィルから治療を受けながら、そんなことを考えていた。
階段があまり高さがなかったこともあり、少しの打ち身だけで済んだようだった。

〈ナナリー、大丈夫?〉

『神様!?ねぇ、私、階段から突き落とされたのよ!?聞いてないわ!どうしたらいいの!?』

〈ナナリー、助けてあげられなくてごめんね。ナナリー、あなたを突き落としたのはローゼリカよ〉

『やっぱり!!!ローゼリカが私のことに気付いたってことなの?まさか、これから命を狙われるなんてこと…』

〈ナナリー、いまの私の力では満足に守ってあげられない。ここの4人とは十分に仲良くなった、すべてを話して守ってもらおう。そして協力してローゼリカと悪魔を追い詰めるんだ。でも、断罪すべきは今じゃない。水面下で証拠を集めるんだ。ローゼリカ達に気付かれないよう慎重に。そうしないと本気でナナリーの命を狙うかもしれない。あぁ、私の愛し子ナナリー、私の力が足りないばかりに…。証拠集めは私も手伝うから。〉

『わかったわ、神様』


そうして、神との話が終わったころちょうど治療も終わった。
「ナナリー、終わったよ。」
「ヴィル、ありがとう。さすがね、ヴィルがいてくれてよかったわ」
そう言って、ナナリーが微笑むとヴィルは頬を赤らめる。
「ナナリー、大丈夫かい?混乱してるかもしれないけど何があったか話せる?」
「えぇ、大丈夫です、リュシー様。階段を降りてたら突然背中を押されたんです。」
「なんだって!?だがしかし、あそこには俺たち以外には誰もいなかったようだ。犯人は見たかい?」
「いえ、突然のことでしたし、後ろから押されたので、私も見てないんです、ただ…」
「ただ、なんだい、ナナリー?」
「もしかしたら、ローゼリカ様が…」
そこまで言って、ナナリーは俯いた。
「ローゼリカ?ローゼリカがどうしたんだい?」
リュシアールがそう聞くと、ナナリーはいっとき悩んだ様子を見せたが、覚悟を決めたように話し始めた。

「リュシー様、フランツ、ヴィル、キースも。聞いてほしいことがあるの。」

そうして、ナナリーはすべてを話し出した。
神様と話ができること、ナナリーが本当の愛し子だということ、ローゼリカのこと。
「神様はローゼリカ様が押したって…。私、怖くて…。でも、でも…このままじゃいけないと思うんです!このままじゃ、ローゼリカ様と悪魔にこの国は壊されてしまう。私、そんなの嫌です!」
ナナリーが話し終えると、4人は突然の話に戸惑っているようだった。
少しの沈黙の後、リュシアールが口を開いた。
「ナナリー。君を信じるよ。僕は君を守りたい。ローゼリカを一緒に止めよう。」
「リュシー様…!!!」
ナナリーが嬉しそうにリュシアールに抱き着いた。
それを見て、フランツ・ヴィルム・キースもナナリーを信じて守ると口にした。

「アモルナ様が言った通り、内密に証拠を集めよう。ナナリーも一人になるべくならないようにしてくれ。ローゼリカに気付かれてはいけないとはいえ、あまり近づかないようにしよう。マリオンは…」
「マリオン様は常にローゼリカ様の隣にいるから気付かれる可能性がある。だから手を出すなって神様が言ってたわ…。マリオン様は知らないのよ、守ってるローゼリカ様が恐ろしいことを考えているなんて…。きっとローゼリカ様の悪事が暴かれればマリオン様も悲しんでしまうわね…」
「ナナリーは本当に優しいな、マリオンは大丈夫だ、きっとわかってくれるさ、すべてが終わったら慰めよう」

そうして、ナナリーとリュシアール、フランツ・ヴィルム、キースはローゼリカの悪事を暴くため水面下で動き始めた。



-----------------------------------------------------------------



≪私の愛しいローゼ≫

『どうしたの?アモルナ』

≪ナナリーとリュシアールのことだけれど、やはりなにかおかしいわ。悪いことが起きなければいいのだけれど…≫

『確かに、お話をしたとき様子はおかしかったわ、でも少し様子をみようと思ってたのだけれど…悪いことって?』

≪詳しいことはわからないわ、けど気を付けてローゼ。私はあなたが自分で解決したいという気持ちを尊重するわ。だから介入はしない。あなたの望みだもの。でもね、ローゼ。なにかあなたでは解決出来ない、どうしようもない状況になってしまったその時は、私に委ねてちょうだい。≫

『アモルナがそう言うなら、わかったわ。でもわたくしは自分の力で進んでいきたい。だからギリギリまではわたくしにやらせてちょうだい。』

≪えぇ、愛しいローゼ。あなたがそうやって成長していくのは嬉しくも寂しいものもあるのね。≫

『あら、アモルナはいつだって私のもう一人のお母さまよ!だから成長を喜んでほしいわ!』

≪ふふ、そうだね。私の愛しいローゼ。あなたが幸せであることが私の望みだよ。≫
―なにか人間ではない別の気配を感じる。もしそれが原因なのだとしたらローゼには手に負えなくなるかもしれない。そのときは…。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

婚約破棄?とっくにしてますけど笑

蘧饗礪
ファンタジー
ウクリナ王国の公爵令嬢アリア・ラミーリアの婚約者は、見た目完璧、中身最悪の第2王子エディヤ・ウクリナである。彼の10人目の愛人は最近男爵になったマリハス家の令嬢ディアナだ。  さて、そろそろ婚約破棄をしましょうか。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

絞首刑まっしぐらの『醜い悪役令嬢』が『美しい聖女』と呼ばれるようになるまでの24時間

夕景あき
ファンタジー
ガリガリに痩せて肌も髪もボロボロの『醜い悪役令嬢』と呼ばれたオリビアは、ある日婚約者であるトムス王子と義妹のアイラの会話を聞いてしまう。義妹はオリビアが放火犯だとトムス王子に訴え、トムス王子はそれを信じオリビアを明日の卒業パーティーで断罪して婚約破棄するという。 卒業パーティーまで、残り時間は24時間!! 果たしてオリビアは放火犯の冤罪で断罪され絞首刑となる運命から、逃れることが出来るのか!?

侯爵令嬢が婚約破棄されて、祖父の傭兵団長が激怒した。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 侯爵令嬢が無双をする話です。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

皇太子殿下の御心のままに~悪役は誰なのか~

桜木弥生
恋愛
「この場にいる皆に証人となって欲しい。私、ウルグスタ皇太子、アーサー・ウルグスタは、レスガンティ公爵令嬢、ロベリア・レスガンティに婚約者の座を降りて貰おうと思う」 ウルグスタ皇国の立太子式典の最中、皇太子になったアーサーは婚約者のロベリアへの急な婚約破棄宣言? ◆本編◆ 婚約破棄を回避しようとしたけれど物語の強制力に巻き込まれた公爵令嬢ロベリア。 物語の通りに進めようとして画策したヒロインエリー。 そして攻略者達の後日談の三部作です。 ◆番外編◆ 番外編を随時更新しています。 全てタイトルの人物が主役となっています。 ありがちな設定なので、もしかしたら同じようなお話があるかもしれません。もし似たような作品があったら大変申し訳ありません。 なろう様にも掲載中です。

【改稿版】婚約破棄は私から

どくりんご
恋愛
 ある日、婚約者である殿下が妹へ愛を語っている所を目撃したニナ。ここが乙女ゲームの世界であり、自分が悪役令嬢、妹がヒロインだということを知っていたけれど、好きな人が妹に愛を語る所を見ていると流石にショックを受けた。  乙女ゲームである死亡エンドは絶対に嫌だし、殿下から婚約破棄を告げられるのも嫌だ。そんな辛いことは耐えられない!  婚約破棄は私から! ※大幅な修正が入っています。登場人物の立ち位置変更など。 ◆3/20 恋愛ランキング、人気ランキング7位 ◆3/20 HOT6位  短編&拙い私の作品でここまでいけるなんて…!読んでくれた皆さん、感謝感激雨あられです〜!!(´;ω;`)

未来の記憶を手に入れて~婚約破棄された瞬間に未来を知った私は、受け入れて逃げ出したのだが~

キョウキョウ
恋愛
リムピンゼル公爵家の令嬢であるコルネリアはある日突然、ヘルベルト王子から婚約を破棄すると告げられた。 その瞬間にコルネリアは、処刑されてしまった数々の未来を見る。 絶対に死にたくないと思った彼女は、婚約破棄を快く受け入れた。 今後は彼らに目をつけられないよう、田舎に引きこもって地味に暮らすことを決意する。 それなのに、王子の周りに居た人達が次々と私に求婚してきた!? ※カクヨムにも掲載中の作品です。

処理中です...