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目覚めても悪夢は続く (ゲオハルト視点)
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頭の中に靄がかかっているように思考がはっきりしない。
熱くて喉が渇く。
「み……みず」
「こちらを向け」
声のする方を向くと口元に柑橘系の香りのする水が当てられた。
ろくに確認もせず一気に煽る。
「無理をさせて済まなかった」
「リヒト殿下……」
一瞬なぜリヒト殿下が裸で隣りにいるのか理解できずにほうけてしまう。
「身体はどうだ?腰が辛いのではないか?」
金の瞳は優しく俺を見つめている。
美しく優美な我が国の第三王子、文武両道に優れ国を負って立つべきだと評判の青年。
そっと俺に伸ばされた指先を俺は叩き落とした。
「なんなんだ、あなたは」
「そんなにおこるな。今日からお前は名実ともに私の愛人だ。ともに辺境伯領をおさめよう」
(意味がわからない!!)
「何がしたいのですか?」
月夜の君と呼ばれる社交界きっての美丈夫であるリヒト殿下は少なくとも俺のことを慕ってくれていたはずだ。こんな辱めをうけるほど嫌われていたとはまだ思いきれないでいた。
「お前をまもりたいのだ。そのためには多少の無理もする」
(多少の無理?無理やり人を性的におそっておいて。多少の無理、だと?)
昨夜の出来事が不意に鮮明に脳裏に浮かぶ。それと同時に体の奥が熱を持ってうずく。
(くっ……)
組み敷かれ喘がされた記憶が蘇る。屈辱が電気のように全身を走った。
「意味がわかりません」
視線だけで人が殺せるならこの瞬間にリヒト殿下は絶命していただろう。だが金の瞳は無粋な俺にもわかるくらい甘やかな恋情をたたえて俺の事を見つめている。まるで本当に恋をしているように。
俺を見つめる春の光を受けた蜂蜜色の目。
あの人と同じ瞳。
そっと頬を撫でられる。わずかに細められた金の瞳が欲をともした。
ぞくり
指先から伝わる雄の気配。
令嬢たちならその場で卒倒するほどの色気だ。
(殴り飛ばしてしまいたい)
握りしめた拳を彼の手で上からそっと包まれた。
触れているところから毒がしみてくるようにしびれが来る。体の奥が支配されたがっているのだと気づいて愕然とする。
(俺はなんで)
「一人にしてください。貴方を殺すまえに」
声がふるえたのは恐怖からか怒りからか自分でもわからなかった。
視線を外して告げる。
そうでないと金の瞳に俺の欲を見透かされてしまう気がして恐ろしかった。
「分かった。ではまた後で様子を見に来る」
「来なくて結構です」
「つれないな。お前を幸せにするまで私は諦めないぞ」
笑いを含んだ声が耳元でささやかれた。
「そう怖い顔をするな。私はお前の笑顔が好きだよ」
俺についばむようなキスをして殿下は寝台から降り隣室へとむかった。
手足の長いバランスよく筋肉のついた身体。
背中半ばまである長い髪。
髪を乱し切なげに俺を見下ろし熱を穿つ昨夜の姿がかさなる。
殿下の姿が消えた部屋で俺は膝を抱えた。
閨の痕跡が色濃く残る寝台からは二匹の獣の匂いがする。
(気が狂いそうだ……もう貴方に触れられたいと思っている)
悪夢はどうやら続くらしい。
熱くて喉が渇く。
「み……みず」
「こちらを向け」
声のする方を向くと口元に柑橘系の香りのする水が当てられた。
ろくに確認もせず一気に煽る。
「無理をさせて済まなかった」
「リヒト殿下……」
一瞬なぜリヒト殿下が裸で隣りにいるのか理解できずにほうけてしまう。
「身体はどうだ?腰が辛いのではないか?」
金の瞳は優しく俺を見つめている。
美しく優美な我が国の第三王子、文武両道に優れ国を負って立つべきだと評判の青年。
そっと俺に伸ばされた指先を俺は叩き落とした。
「なんなんだ、あなたは」
「そんなにおこるな。今日からお前は名実ともに私の愛人だ。ともに辺境伯領をおさめよう」
(意味がわからない!!)
「何がしたいのですか?」
月夜の君と呼ばれる社交界きっての美丈夫であるリヒト殿下は少なくとも俺のことを慕ってくれていたはずだ。こんな辱めをうけるほど嫌われていたとはまだ思いきれないでいた。
「お前をまもりたいのだ。そのためには多少の無理もする」
(多少の無理?無理やり人を性的におそっておいて。多少の無理、だと?)
昨夜の出来事が不意に鮮明に脳裏に浮かぶ。それと同時に体の奥が熱を持ってうずく。
(くっ……)
組み敷かれ喘がされた記憶が蘇る。屈辱が電気のように全身を走った。
「意味がわかりません」
視線だけで人が殺せるならこの瞬間にリヒト殿下は絶命していただろう。だが金の瞳は無粋な俺にもわかるくらい甘やかな恋情をたたえて俺の事を見つめている。まるで本当に恋をしているように。
俺を見つめる春の光を受けた蜂蜜色の目。
あの人と同じ瞳。
そっと頬を撫でられる。わずかに細められた金の瞳が欲をともした。
ぞくり
指先から伝わる雄の気配。
令嬢たちならその場で卒倒するほどの色気だ。
(殴り飛ばしてしまいたい)
握りしめた拳を彼の手で上からそっと包まれた。
触れているところから毒がしみてくるようにしびれが来る。体の奥が支配されたがっているのだと気づいて愕然とする。
(俺はなんで)
「一人にしてください。貴方を殺すまえに」
声がふるえたのは恐怖からか怒りからか自分でもわからなかった。
視線を外して告げる。
そうでないと金の瞳に俺の欲を見透かされてしまう気がして恐ろしかった。
「分かった。ではまた後で様子を見に来る」
「来なくて結構です」
「つれないな。お前を幸せにするまで私は諦めないぞ」
笑いを含んだ声が耳元でささやかれた。
「そう怖い顔をするな。私はお前の笑顔が好きだよ」
俺についばむようなキスをして殿下は寝台から降り隣室へとむかった。
手足の長いバランスよく筋肉のついた身体。
背中半ばまである長い髪。
髪を乱し切なげに俺を見下ろし熱を穿つ昨夜の姿がかさなる。
殿下の姿が消えた部屋で俺は膝を抱えた。
閨の痕跡が色濃く残る寝台からは二匹の獣の匂いがする。
(気が狂いそうだ……もう貴方に触れられたいと思っている)
悪夢はどうやら続くらしい。
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